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 なんだかんだで町に戻ってきた。

 因みにレミはスライムを入れるための袋に入っている。

 俺の住む町『ラムド』までの馬車で四時間、揺れに揺られたレミは気持ち悪そうにしていた。


「馬車ってこんなに揺れるのね⋯⋯」


 レミはめちゃくちゃナチュラルに溶け込んでいた。


「はあ、メロを追いかけて一緒に行くんじゃ無かったかしら⋯⋯」

(え?それって⋯⋯まさかレミはボクのことを⋯⋯?)

「メロをほっといたらきっと他のスライムにデレデレしちゃうに決まってるんだから」


 ふむ。レミはメロが他のスライムに取られないか心配してるようだ。


(あはは、そんなことしないよ)

「もしそんなことしたら体の端から千切ってこねて擂り潰してやるんだから」

(あはは、絶対にそんなことしないように致します)


 まるで本当にそんなことをするかのようなメロの怯えっぷりはなんなのだろうか。あと、若干口調が丁寧になってる気がする。


「取り合えず町に着いたわね。水浴びがしたいわ」

(レミは綺麗好きだもんね)


 ほう、スライムでも水浴びをしたりするのか。人間と共存が可能ということは知っていたが、もはやほとんど人間に近い。


(それにしてもさっきからツルギはなんで喋らないの?何かあった?)

「確かにそうね」


 俺がさっきから喋らない理由。それはもちろん、


「お前らと喋ってたら俺は独り言を言いまくる頭のおかしいやつに見られちまうからに決まってるだろうが」

(あ、そっか。なるほどね)

「でもちょっと意外かも。ツルギでも世間体とか気にするんだ」

「どう意味だそりゃ。……まあ、俺にも色々あるんだよ」

(色々って?)

「それをお前らに教える義理は無い」

「(えー、ケチ)」

「ハモって言われるとイラッとくるな」


 そんなこんなで歩くこと数分。


「着いたぞ。ここが俺の家だ」

(こ、これは……)

「わぁ……!」


「(普通)」

「ぶち殺すぞ」


 俺の家は、小さな一人暮らし用の小屋だ。まあ、しがない冒険者なんてこんなもんだろ。


「ただいま」

「お帰りなさいでやんす!」


 すると、トテテテッ、とタヌが駆け寄ってきた。


「おう、タヌ。いい子にしてたか?」

「はいでやんす!」

「偉いぞ」


 タヌの頭をワシャワシャと撫でてやる。するとタヌは気持ち良さそうに目を細めた。


「………………(ジーッ)」

「ん?どうしたお前ら?」

「ツルギってロリコンだったのね」


 なにかあらぬ誤解を受けている気がする。


「おいちょっと待て、何か凄い誤解をしてないか?」

(誘拐はよくないよツルギ!早く親のところに返すべきだ!)

「……このロリコン犯罪者が」

「いや、違うからな!?こいつは化けダヌキのタヌ。今は変身の練習中で人間に化けているだけだ」


 タヌは今、人間の女の子に変身していた。本人いわく、自分とサイズが近いものほど化けやすいらしい。

 今は金髪の幼女に変身していた。


「というかメロは俺の記憶を見たんだから知っているだろうが」

(え?ちょっとだけは分かったけど全部は分からないよ?ツルギもそうなんでしょ?)

「ほう?」


 俺はあのときメロの記憶は全て見えたはずだ。なのにメロは俺の記憶は断片的にしか見えなかったということか?

 ふむ……。やはりまだまだ謎が多いな。


「というわけでツルギはロリコン確定ね」

「だから違うって言ってるだろ!?」


 ツンツン


「タヌは化けダヌキで、人間に化けているだけだって何回も……」


 ツンツン


「タヌ、後にしてくれ。まずはコイツらを……」

「あの、ご主人様」

「あん?」

「誰と話してるんでやんすか?」

「おおう……」


 タヌから見て俺は完全にイタいやつのようだった。


「なんかデジャヴね」

(だねー)

「お前らのせいだからな?」



 ★



 タヌに事情を話した。


「おお……それは災難でやんすね」

「それで、一応紹介すると、こっちのスライムがレミで、俺の中にいるスライムがメロだ」

「よろしくねー」

(よろしく!)

「うう、レミさんはぷるぷる震えてるようにしか見えないし、メロさんに至っては本当にいるのかどうかも分からないでやんす……」

「あー、まあなぁ」


 タヌはメロとレミとコミュニケーションを取りにくいことを気にしているようだ。

 まあ、メロと俺の人格が入れ替わったらメロとも話せるんだがな。今はそれはできない。


「まあ、ということでこのスライムが一応タヌの為に取ってきたエサだ。食っていいぞ」

「(ダメに決まってるだろ(でしょ)!?)」

「さ、流石に事情を聞いたあとで合成するのは厳しいでやんすよご主人様……」


 折角取りに行ったのに嫌がるタヌ。我が儘なやつめ。


「というか、ツルギは冒険者なのよね?自分で戦うことはしないの?」

「ああ、俺の最大レベルは1だからな」


 この世には冒険者という職業があり、更に冒険者の中には自分で戦う『ファイター』と、モンスターを使役して戦わせる『テイマー』に別れている。基本的に、人間とモンスターは似たような存在で、どちらにもレベルが存在し、レベル上限も設けられている。レベルを上げる方法としては、『自分が戦って倒したときに貰える経験値を稼ぐ』か、『強化合成用モンスターと合成して経験値を稼ぐ』の二つだ。


 俺はレベルの上限が1で打ち止めのため、使役者としてタヌを相棒とし、今回はタヌのために強化合成用モンスターを取りに行く予定だったのだ。


(最大レベルが1って、まるで僕達みたいだね)

「まあ、そうだな」


 強化合成用モンスターの最大レベルは1で固定されている。これに個人差などは無く、強化合成用モンスター全ての種類が最大レベルは1なのだ。

 まあ、レベル1でもとんでもなく強い強化合成用モンスターもいるが。


「でもそんなことってあり得るの?人間の平均レベル最大値は30って聞いたことがあるわ」

「まあ、珍しいだろうな。俺も今まで会った人間で最大レベル1ってのは見たことがない」


 そう。何故か俺だけレベルが1で打ち止めなのだ。


(ツルギ……。ウェルカム。弱者の世界へ)

「黙れゴミクズ」

(ちょっと僕の扱い酷くない!?)


「でも、ご主人様は戦いは優れない代わりに、知識だけは世界一なんでやんすよ!」

(へえー、そうなんだ)

「ふっ、よせよタヌ。俺が天才だってバレちまうだろうが」

「そう!なんとご主人様は自分が戦闘で勝てないから知能を鍛えて勝つ方法を模索しているのでやんす!」

(健気だ……)

「健気ね……」

「ふっ、よせよタヌ。まるで俺がただの負けず嫌いの雑魚みたいじゃないか」


 タヌはもう少し言い方を変えるべきだと思う。


「でも、レベルが1とかってどうやって確認するの?そういうレベルを見るための魔法でもあるのかしら?」

「あぁ、それにはこの紙を使う」


 そう言って俺が取り出したのはレベルなどの色々なステータスを見ることができる『アビリティアンダー』だ。


「この紙に魔力を通すと、通した人間のステータスが表示されるんだ」

「魔力って?」

「魔力というのは生物なら誰もが持っている、魔法などを使う大元になる力だ。この力が強ければ強いほど使える魔法も強力になる。まあ戦闘に使ったり家事に利用したりこういったアイテムを使うのに使用したりと、とにかく便利な力だ」

(はえー。知らなかった)

「私たちはずっとあの里で暮らしてたもんね」


 二人は魔力のことを知らなかったようだ。まあ人間と関わりがなかったなら当たり前と言えば当たり前なのかもしれないが。


「ま、取り合えずものは試しだ。見せてやる」


 そう言って俺は魔力を流した。

 アビリティアンダーに文字が浮かび上がってくる。


「……ん?」


 おかしい。そこに表示されているのはいつもの俺のステータスではなかった。


☆……………………………………………………☆

 ツルギ……Lv1/???  種族……人間/スライム


  HP 105

  MP 36

  筋力  31 

  防御力 23

  素早さ 20

  知恵  500

  運   25


  スキル 『人格入れ替え』(消費MP3)

☆……………………………………………………☆

 

「……なんだこれは」

「ねぇ、これどうやって見るの?」

「……あぁ、これは上から名前、種族、体力、魔力、筋力、防御力、素早さ、知能、運だ。そして最後のは能力。だが……」


 そしてタヌが言う。


「あれ?ご主人様、種族のところが……それに能力も。そして、レベルの上限が???っていうのは……?」


 そう。明らかに以前の俺のステータスから変化していたのだった。

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