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第7話 送り火とさようなら【前編】

【2を5】●◎○

あの後、空は少し間をおいて、


「なんちゃって」


と言って、いつも通り笑った。


そして俺はゆっくりと掴んでいた腕を離したのだった――。


○◎●◎○


「なんかさぁ…変だったんだよなぁ…昨日の空」


「どう変だったんだよ?…妙にエロかったとか?」


「いや、なんでだよ!」


翌日、昼過ぎまでじいちゃんの庭いじりを手伝ったあと、俺は溜まり場に来ていた。空が来ていないが、たまにあることなので、あまり気にはしないつもりだったのだが…昨日の事もあり、気になって仕方ない。


「なあ、空今日来ねぇのかな?」


「はぁ…なあ、颯護…」


ため息の後、晴斗に呼ばれる。


「ん?なんだよ?」


「おまえさ、ここに来て空の話しかしてないの気づいてるか?」


「え?そうだっけ?」


「ちなみに、"来ないのかな?"って聞いてきたの、これで3回目な! 知るかよっ! 俺は空じゃない! 気になるんならバス停にでも行って、待っときゃいいだろっ! 一昨日、一応会う話しはしてたんだからっ! どんだけ好きなんだよ、マジで!」


「バッ!!す、好きとかじゃ…ねぇし……」


俺は晴斗から目をそらし、否定しようとするが、発言の後半で声が小さくなってしまう。俺の中で、空は…好きじゃないと否定するのには、あまりにも大きくなりすぎていた。


「好き…かもだけど…」


「あああっ! もう! めんどくせぇっ!」


そう言うと、晴斗はやっていたゲームを放り投げ、出掛ける支度をする。そして、



「ほら、さっさと立て! いくぞっ!」


「…は? どこに?」


「バス停ってお城に、おまえの意中のお姫様を迎えにだよっ!! はやくしろっ! 」


そう言って、さっさと晴斗は出ていってしまった。


「はっ! 晴斗! ま、待てよっ!」



○◎●◎○


潮の香りと、波の音。西日に照らされキラキラと光る海は、穏やかに浜に上がったり、下がったりを繰り返す。


「…あっちぃ…てか、次のバス20分後じゃん…なんでここに来たの? なんでアイツはスマホ持ってないの?」


「いや、おまえが空を迎えにいくって言い出したんだろっ! スマホは…家庭の事情とかじゃねぇの…?」


最近の女子高生ではめずらしく、空はスマホを持たない。一度、連絡先を交換しようと話をしたら、やんわりと断られてしまった事がある。あの時は、嘘かと思ったが、良く遊ぶにつれて、俺と晴斗もさすがにガチで持たないんだろうと思っている。



「…マジで連絡手段ないのめんどくね? つか俺は、意中のお姫様を迎えに行こうつっただけなんですけどね…やっぱ自覚あるじゃん、おまえ」


「う…うるせぇ…」


俺は少し顔を紅くする。またしても、晴斗に一本とられてしまった。ガキの頃からいつも、こいつは俺の事を見透かすような事を言ったりする。だが、それをどうのこうのと言うつもりはない。こいつは、それ以上に俺を思ってくれているのを、俺は知っているからだ。



「なぁ、おまえ空のどこがいいの?」


「はぁ?なんだよ急に」


「いや、マジでなんとなく。まあ、顔は可愛いよな、明るいし、良く笑う」


「実は、おまえも空の事…す、好きなんじゃねえの?」


俺は探るつもりで聞いてみる。すると、晴斗は



「好きだよ」



即答する。



「え…あ、マジで…」



「っぷ!だっはっはっは! なんて顔してんだよ颯護っ!だっはっはっは! はっは! ウケるっ!」



「うけすぎだろ…」


「ひーっ!はっはっはっは! すまんすまん、まさかそこまで露骨に凹むとは思わなくてな」


(いや、思うだろ。正直晴斗には、容姿じゃ絶対に勝てない。しかも身長も俺より少し高く、こう見えて頭も良い…)


そんな事を思っていると、晴斗は目にたまった涙を指でとりながら、


「はー、笑った笑った、いやな、俺の好きはおまえや、友達に対するそれだよ、まあloveじゃなくて、like的な?…いや、まあでもloveでもあるのか? なんにせよ、付き合いたいとかそういったヤツじゃねぇよ」


「し、知ってたし! 晴斗のタイプじゃないからな、空は」


「ホントかよ、ははは、まあいっか。にしても、あちいなぁ…」


そう言いながら、Tシャツをパタパタとして、晴斗は


「なあ、颯護。浜行こうぜ」


「え?」


「まだ時間あんだろ」


と、誘ってくる。


「それもそうだな」


と俺は返して、晴斗とバス停の裏にある階段から浜へと降りる。


「やっぱこの間砂に書いた名前はねぇなぁ」


「海にさらわれちまったんだろうな…」


ふと、昨日の空の顔が頭に浮かぶ。


「なあ、颯護」


呼ばれて、すぐに我にかえる


「ん?なんだよ」


「おまえ、コクったりしないの?」


「え?…は、ハァッ!?… ま、まだ早くないスかね?…」


「気持ち伝えんのに早いも遅いもあるかよ、タイミングは確かに重要だけど、いつ、その人が離れてくかとかわかんねぇじゃん? それに、一昨日から"()(がみ)神社"で、祭りあってんだろ? 今日は花火上がるだろうし」


「ああ、そうか…そういや姉ちゃんが売り子やるとかって言ってたな…」


"無し神神社"ってのは、とうもろこし畑を奥にいくとある、神社の事だ。不思議な作りをしており、その神社には俗に言う"お(やしろ)"が存在しない。一説には、遠い昔に忽然と姿を消したと言われたり、自然災害で壊れた等と言う噂もあるが、実のところ、はっきりとはわかっていない。あると言えば、石造りの鳥居が、やたらと広い原っぱにポツンと佇むくらいである。


そして、毎年夏の御盆に行われるのが、"無し神祭り"と言う地元の小さなお祭りだ。小中学生頃なんかは、よく行ったが、大きくなるにつれて、最近はあまり行かなくなっていた。ちゃんと花火もあがるし、地元じゃちょっとしたデートなんかに使われることも多いので、それなりに賑わったりはしているのだが…きっと、"何時でも行ける"ってのが、無意識にそうさせていたのかもしれない。



「そういや、アイツは無し神祭り、行ったことないのか…」


俺がそう言うと晴斗は


「そうそう、あいつ今年こっちきたからな、あのやたらデカい送り火見たら、テンションあげそうじゃね?」


「ああ、あの社があったってされてるところに炊くヤツな…確かに、ありゃちょっとした火事だもんな。ははは」


「だろ」


無し神神社の送り火は、かつてお社があったとされるところに、簡単な(やぐら)をたて、それ燃やし、その煙を神様に届ける。と言ったものなのだが、それが中々に豪快なのである。


そして、そんな話をしていると、晴斗のスマホが鳴る。


「すまん、ちと電話」


俺にそう言って、晴斗は電話に出る


「え?…今からっすか?…えー…めんどくさ…あ! うそうそ! 行きます、行きますって!…はい、じゃあそのくらいで入りますんで」


会話から察するにバイト先だろう。電話を終えると、晴斗は案の定


「すまん、バイト入った! ちと、支度していってくるは、空にはごめんって言っといてくんね?」


「マジかー…まぁ、仕方ないな…わかった。おまえも大変だな」


「まぁな! 何せバイトリーダー様だからなっ!」


そして、二人で浜からバス停へ戻ると…いつ来たのか、そこには空がたっていた。



「え?あれ?空じゃん、バス来たっけ?」


晴斗がおどろいてそう言う。


「あ! 晴斗、颯護!」


「よっす」


晴斗が軽く挨拶する、その横で俺は軽く


「よっ」


と言って軽く手をあげる。そして、晴斗が空にさっきの話をする。


「いや、マジわりいんだけど、俺バイト入ってさ、行かなきゃなんだよ、ホント、ごめんな? また遊ぼうぜ」


空はそう言う晴斗に、


「そうなんだ…なら仕方ないね、もう! 今度はないかもしれないからねっ!…へへへ、いってらっしゃい。頑張ってね」


と冗談ぽく言って、最後に


「バイバイ」


と晴斗に言った。


「なんだよ空、つめてぇなぁ! 明日は休みいれとくからっ! じゃあな!」


そう言って、晴斗は去っていった。



俺と空は二人残されて…



続く。


またみてね❗(o・ω・o)きゅぴーん✨

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