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終始終作~その二~

終作さん、コラボありがとうございました。

軽快なキャラがかけていたら幸いです。


コラボの受付はまだまだしております。興味あったらメッセージお願いします。

では、次回は狼天狗さんとのコラボです。

 火華が連れてきたその男の人は、軽快な雰囲気の男だった。

 彼女が作った液化した地面に落ちたらしい。気の毒に。


「はじめまして、僕は淡雪。妖怪です」


「そっか、俺は終始終作だ。よろしくな」


 そう自己紹介しあってお互いの手を握る。

 そして、彼の目を見たときに気づいた。


「やめてくれないかな? あんまり内側を見られるのはすきじゃないんだ」


見透かされるようなそんな感覚、覚と会ったときのようなそれを感じて、僕は終作さんに言った。


「おおっと、悪い悪い。わかるんだな」


終作は両手をあげてヒラヒラさせながら言った。


「似た感覚を知っているから言ってみただけだよ」


覚のと違って、君のは制御が効きそうだしねと、僕は付け加える。


「恐れいったぜ。じゃあ、覗かないことにしておくよ」


 終作は肩をすくめながらそういった。


「そうしてくれると嬉しいよ」


 お茶くらいしか出せないけどね。そう言って僕は厨房へ行く。

 その後を火華が入ってきて、手伝ってくれた。


「あいつ、半分神様だ」


 火華は厨房で僕にそう言った。

 まぁ、それは何となく分かる。少しだけ漏れ出た神力がそれを示してくれている。

 そして、その量が少ないことから、そのことを気づかれないようにしているのもわかる。

 言いたくないのか、知られたくないのか、それは分からないが、まぁ何かあるのだろう。


「もう半分は悪魔のようだしね」


 僕は魔力を感じ取りながら言う。引き込まれるようなその魔力はどこかで見たあの色欲とよく似ている。

 なんとも珍しい半神半魔の青年に、今日は特別なお茶を淹れることにしよう。


「……って、あの茶っ葉はどこにやったっけ?」


「淡雪、戸棚の一番上」


 ああ、そうだったと僕は思い出す。此の物忘れは厄介なものだ。

 戸棚のお茶っ葉は、以前にスカーレットの前当主に頂いたものだ。

 僕の能力で劣化しないように凍結させたそれを、火華の能力で溶かし、元に戻して使う。

 赤い色ではなく、青色の綺麗なお茶が出た。ミントのような香りが立つ。

 深呼吸しながら最後の工程を施す。




「終作さん、お持たせ。出来たよ」


「おっ、お待ちしてたぜー」


 テーブルについていた終作さんは手をひらひらさせて僕を呼んだ。

 何が出てくるのかと目が輝いている終作さんの前に用意したお茶を出す。


「どうぞ。世にも珍しい『青茶のあったかシャーベット』です」


 目の前に出したのは僕の能力と火華の能力を上手く使って作った温かいシャーベット。

 それを前に、終作さんは歓声を上げた。


「いいじゃんいいじゃん、美味そうだ!」


 終作さんはそのままシャーベットを口に入れた。

 そして、そのまま、目を見開いたかと思うと、とろけるような顔になった。


「んまーい。なんだこれ、何だ此のお茶。スッキリした香りなのに、しっかり余韻を残していきやがる!」


 しかもあったかいシャーベットなんて初めてだぜ。なんて言って、美味しそうに終作さんはそれを食べた。


「そう喜んでもらえると嬉しいね」


「戦闘以外に使い道の少ない能力だもんな俺達」


「極端だからね」


 そう言って僕たちは笑う。

 でも、そんな僕達に終作さんはそんなことはないと首を振った。


「そう言っときながら、家具やら此の家やらこの食器やら、全部オマエの氷だろ?」


 そう言って褒めてくれた終作さんに、僕は首を振り返した。


「そうでもない。これは水を使ったからだよ。地面で作ると真っ暗。

 空間で作るなら……透明で入り口の見えなくて中身が丸見えの家」


「俺なら、三百六十度液化した地面とか。そういうのが欲しいならやるけど?」


「あー、なるほど。これは水だからこんなちょうどいい空間なわけだ」


「そういうこと、理解してくれた?」


「はいはい、理解しましたー」


 終作さんはわざとらしく手を振った。

 この自由ぶりは本当に誰かさんに似ている。

 そんな彼の奔放さと軽快さは、先ほど感じた能力から来るのか。ちょっとわからないが、でも、能力でそうなっているなら、ますます誰かに似ている。


「本当、似てるなぁ」


「神谷に?」


 そう言って彼は首を傾げた。


「見たの?」


「いや、あいつのことは知り合いから聞いた。別のとこでな」


 また、あの人はどこかで面倒を起こしたのかと僕呆れながらも、いつもどおりのようで嬉しかった。

 その話しに食いつこうと思って口を開こうとして、火華に取られた。


「で、その知り合いって何があったんだよ」


「いやいや、ちょっと娘さんと戦ったり何だりしたらしくて」


 ああ、なるほど。その繋がりかと僕は納得した。

 魔法の森に住んでいる彼女は彼の娘だ。零のことはよく聞くだろう。


「へー、そいつ勝ったの? 負けたの?」


「え? いや、直接戦ったわけじゃないらしいんだけどね。その後の宴会で話したらしくって」


「なんだ、戦ったんじゃないのか。勝つヒントもらえると思ったのに」


 火華は残念そうに口をとがらせた。彼女は定期的にあの娘に勝負を挑んでいて、今日もそのつもりだったらしい。


「まぁまた零にでも聞こう」


 僕がそう言うと火華は小さく頷いて納得してくれた。

 そして、飲み物だけじゃ物足りないだろうし、少し待ってろと言って厨房にもう一度入っていった。


「何が来るかな?」


「当てっこしてみるか?」


 そう言い出したのは終作さんだった。


「負けたら?」


「好きな人を暴露するとか」


「いいね」


 僕は男の修学旅行の馬鹿話みたいな勝負に乗った。





 呼白のことを聞けなかったのは残念だったが、まぁ直接会ってないのだから仕方がない。

 飲み物(アレはデザートにも見えるが)ついでだと棚からお茶菓子を出す。これは神姫の作ったやつだったか。

 あの人の料理は美味しい。お菓子も美味しい、これならいいだろう。


「待たせたな」


「ほら、言ったろ? 棚の神谷家のお菓子だって」


「あー、自分の好きな廻さんのとこのを持ってくると思ったのに」


 何を言ってるのか意味がわからない。と、俺は首を傾げた。

 それを傍目に男どもは話を進めた。なんでも、好きな人を暴露するとか。

 うーん、好きな人って暴露するものなのか? 隠すものでもないだろうに。


「淡雪はネージュが好きなんだろ?」

「僕は妖精の子が好きなんだ」


「おお、息ぴったり」


 前から事あるごとに淡雪はそう言っていたから知っている。

 少し残念ではあるが、彼がそう言うなら仕方がない。二人共大事な俺は、幸せになってほしいと思う。


「おうおう、健気な女は辛いねぇ」


 そう言って終作は見透かしたように俺に言った。

 それをうるさいと少し睨みつけながら、俺は淡雪に話しかけた。


「そろそろネージュも用事済んだだろうし、迎えに行ったらどうだ?」


「え? でも、終作さんがいるし……」


 お客がいるからということなんだろう。


「気にするな。零と似てる性格なら、これくらいで怒らない」


「そうそう、気にすんなよ少年」


 終作は手を振りながら笑った。

 それに頷いて、淡雪は出て行く。


「じゃあ、少し遅くなるかもだから、後は火華に任せるね」


「おう、行って来い」


 出て行く空色の髪の毛を細めで見ながら俺は少し名残惜しく手を振った。


「乙女だねぇ」


 と、そんなロマンチックな雰囲気をぶち壊す軽快な声。


「チャラチャラしすぎだ。そこは黙って見てろよ」


「いやいや、こんなに少女漫画みたいなあれなら言いたくなるでしょ」


 だから、それを我慢しろと言うんだ。その目は覚と違うものなら、色々見えるんだろう。


「で、これの最後で、二人は笑ってるか?」


「ああ、ちゃんと笑ってるぜ。お前がどうなったか……知りたい?」


 二人が笑顔であるならそれでいい。


「いらないよ。二人が笑ってるなら俺も笑える」


 生きている間に欲しかったものはもう手にしている。それを以上を望むのは、いささか強欲が過ぎるというものだろう。


「無欲だね。たまには欲張るのも必要だと思うんだが」


「欲張っているから俺は此処で暮らしてるんだ。分不相応にもう報われている」


 そうは思わないか、七罪の悪魔よ。

 そう言って私は笑う。


「バレてたのか」


「色欲を司ってる奴には会ったからな。お前から漏れる力がよく似てる」


「察しのよろしいことで。俺は強欲の悪魔だよー」


 なるほどねぇ。


「欲しがらない奴は気に入らないかな?」


 そう聞いてみると、終作は首を振った。


「そんなことはない、俺はその思いはそれはそれで綺麗だと思うよ」


「なら、少々ロマンチストになることだな」


「遠慮しとくよ、俺はこれくらいテキトーなのが性に合ってる」


 終作はまたヘラヘラと笑う。

 ああ、やっぱりあの男に似ている。すごく自由で軽快だ。

 だが、そのテキトーなのはこれからの時間には合わない。


「そろそろ夕方だぞ、俺は無粋は許せない質だ」


 俺はできるだけ軽く言ってみる。


「それは、帰れって言ってる?」


 わざわざ聞き返してくる当たりやっぱり此奴はここからは合わないだろう。

 それに、そうまで聞きたいなら率直に言ってやるさ。


「そう、この後の二人の時間には邪魔だから、帰れ。送ってやるから」


「おおう、ひどいね~君」


「それでいいから、ほら、行け」


 俺は終作を押す。終作は押されるまま外に出た。

 夕焼けは今日は綺麗で、その下で、俺は終作の背中を押すのをやめた。


「今度はもう少し空気に乗る性格になってから、来い」


「えー、じゃあ永遠に無いってことか」


「それでも構わんぞ」


 つれないねー。と、終作はまた笑う。

 連れなくて結構、俺が大事なのはあの二人だけだ。


「まぁ、神谷のとこのやつが宴会の時には合うかもな」


「おお、それならその時に」


「はいはい。で、どうやって帰るんだ? 神谷ん家にでも送るか?」


 あの家は今日は夫婦の日じゃなかったはずだしな。


「いや、自力で大丈夫だぜ。一応これでもそれなりに強い自信があるからな」


「そうか。じゃあ心配しなくていいな。さっさと行け、始祖神」


 そこまで言って初めて、終作は驚いた顔をした。


「よく分かったな。ここからそこには通じないはずなんだが」


 驚き顔にすこししてやった気持ちになりながら俺は微笑した。


「未来は不確定で出来ている。だろう?」


「それもそうだ。で、誰の入れ知恵かな?」


 さてね、と俺ははぐらかした。


「知りたければ見ればいいだろ。そのほうが楽だ」


「それこそ、君の言う無粋じゃないかな?」


「此処で空気を読むなよ。はいはい、神谷の娘だよ」


「ああ、その子ね、確かに、あの子なら可能だ」


 参ったよ。と額に手を当てながら終作は笑った。


「今日は終わりだ。また会おうぜ」


「はいはい、今度は地面に突っ込まないようにしっかり見てから落とされることにするよ」


 そう言いながら終作は次元の穴を開ける。

 そして、そこに足をかけると同時に、俺は終作の足元を液化した。


「あっ」


「入る時も見なきゃいけないよな?」


 そう言って俺はもう一度笑った。

 お昼ごろの不運を思い出し、眉をしかめながら、終作は地面に沈んだ。



 終作は浮かんでこなかった。代わりに、次元の穴から紙飛行機が飛んできて、そこには一文。


『じゃあな、融解少女』


 その紙を液体に変えて、地面と混ぜながら、俺は穴に向かって呟く。


「今度は油断しないようにしろよ?」


 その言葉を笑うように、穴は少しだけ震えて、消えた。



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