終始終作~その一~
今回は終作さん家の終始終作です。よろしくお願いいたします。
コラボしたい方はいつでも言ってくださいねー。
「さすが鬼の後輩ちゃんだ」
気まぐれな彼はそう呟いた。
そして、別に戦闘しろと言ってないんだがなあと笑う。
「バトルジャンキーは怖いねえ」
じゃあ次はそうでもない奴にしよう。
「そうしよう」
そうして彼は穴を開ける。
「半神半魔のごあんなーい」
笑う彼の見る世界に、また一人誰かが落ちた。
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「本日は晴天、いい洗濯日和だ」
全てを凍らせる凍結の少年は大きく深呼吸をしてそう言った。
朝日を浴びて、外から帰った少年は寝室へと向かう。
未だにお眠の雪の妖精と、融解の妖怪を起こすためだ。
「ネージュ、火華、起きて。朝だよ」
少年は寝室で寝ている二人の少女に声をかけた。
目をこすりながら二人は体を起こし目を瞬かせる。そして、少年の顔を見て微笑んだ。
「「おはよー。淡雪」」
「おはよう」
微笑む少女達の頭を少年は撫でた。
彼等がいるのは幻想郷の端の方。あんまり冷たくないのに溶けない不思議な氷で出来た家。
あたいは最強だからと可愛らしい理由で独り暮らしを始めた氷精の実家。
皆で朝御飯を食べながら、三人は今日の予定を確認していた。
「あたいはチルノの所かな」
「俺は魔法の森」
「僕はなかったと思う」
そうして三人はお互いにお昼は心配しなくていいことを確認してから、 それぞれの用事にでかけた。
鼻歌をしながら地面を泳ぐ少女がいた。
彼女は火華、融解の妖怪、全てを溶かす力を持った少女。
その力で、彼女は地面を溶かし、水のようにしてそこを泳いでいた。
向かう先は魔法の森。いつかのあのぶっ壊れ野郎の娘がいるところ。
そう思って泳ぐ彼女が、気持ちよさ気に背泳ぎに切り替えた時、それが見えた。
「何だあの穴?」
見えたのは黒い穴。そして、それと同じようなものを彼女は記憶していた。
「なにか出てくる!?」
彼女は慌ててそこから逃げた。地面を地面に戻すことすら忘れて、穴の真下から逃げ、途中の木の影に隠れて様子をうかがう。
そして、彼が落ちてきた。
「ぁぁああああ!!」
大きな水飛沫ならぬ地飛沫を上げながら男が落ちてきた。
落ちてきた彼は突然のことにであったことと、地面が液体になっていることに慌てながら、ちゃんとした陸を探して地面を掻いた。
が、残念ながら彼がつかむのは液体ばかり。
「助けてー!」
少年は叫ぶ。
そして、そこでやっと火華は助けなければと気がついた。
地面を泳ぎながら男へと近づき、自分より大きいその体を掴んで、自分の力を使っていない地面へと運んでいく。
そして、陸に上がり、咳き込む男の背中を軽く叩く。
「吐け。地面吐け。やばいぞ」
男はわかってるとでも言うように頷きながら自分の胸を叩く。
すぐに彼は飲んでしまっていた地面を吐いた。
「うえっふ。げほっ、ありがどー」
男は自分を助けた少女を見て咳き込みながらもそう言った。
それに火華は首をふる。
「地面が液体になってたのは俺のせいだ。ごめん、立てるか?」
「うん、いぢおう」
口の中の土の味に嫌な顔になりながら男は立ち上がる。
そんな男を支えながら、火華は今日の予定はキャンセルだとため息を付いた。
男を支えながら俺は魔法の森を出た。地面を戻し忘れたが……まぁ行く奴は大抵飛ぶのだからいいだろう。
俺のこの小さな体では引きずったようになってしまうがそれは許して欲してもらおう。
俺は先程の気持ち悪さからまだ唸っている男に声をかけた。
「お前、名前教えろ」
「えー。あー。終作だよー」
「苗字は?」
「終始ー」
妙に間延びした声で、男は応える。
その妙な間延びに、俺は此の男のその青い顔が演技だと分かった。
「お前、実はもう大丈夫だろ」
「え? いやいや、う~えふんえふん」
終作は俺に不意をつかれたようで一瞬固まった後、妙に胡散臭い咳をする。
残念ながら、その咳の仕方はどこぞの物理法則無視のやつで慣れている。
「その咳は嘘の咳だ。しっかり立て」
私は男を放る。
男は放られたことで少しふらつきながら体勢を立て直した。
そして、どこか人を喰ったような笑みで俺を見た。
「よく気づいたなぁ。結構わかんないと思ったんだけど」
「同じような演技するやつを見てるからな。演技までして女に触れたいかよ」
「いや、正直幼女は対象外かな」
その言葉に私は少しイラッときて。地面を液化して終作の足にかけた。
「ああ!」
「俺は幼女じゃないぞ、一応氷河期位から生きてるんだ!」
「まじかよ。妖精じゃない合法ロリか」
ちちぇえーと終作は俺の頭をなでた。
子供をあやしているみたいで少し腹が立つ。
俺は目の前に会った終作の腹に拳を打ち込んだ。
「せいっ」
「あぶっ」
悶絶しながら終作は下がった。が、手応えがない、効いてないなんてことはすぐ分かった。
そのなんかヘラヘラした態度が気に食わない。
「もっかい地面に沈めてやろうか」
「あー、それは遠慮しときたいなぁ一応アレは気持ち悪かったし」
俺は軽い舌打ちで返事してやった。
まぁ、なんにせよ。落ちてきたやつを返すには私では無理だ。
一度家にはこさせないといけない。
「しかたない。普通に歩け。家には招待する」
「おっ、それはどもでーす」
此のヘラヘラ顔が気に入らない。強い奴って皆こうなんだろうか?
あいつもこいつもそいつもどいつも、淡雪以外皆そんなところがある。
そんなに不敵にしなきゃいけないんだろうか、強い奴って言うのは。
「変なの」
俺は終作の前を歩きながらそう呟いた。
前を歩く合法ロリを『見る』随分と特異な性質の妖怪だと思った。
名前は火華。融解の妖怪。全てを溶かすただそれだけの力を持つもの。
随分としんどい思いをしてきたらしい、自分も半神半魔なんて珍しい体質だが、とある一つに特化しすぎているというのも珍しい。
俺は呑気にそんな感想を思い。ながら少女を見た。
長い赤髪に褐色の肌。真っ黒のワンピースがそれによく似合っている。
「ん? さっきから俺を見てどうした?」
と、振り向いた火華が俺に言った。視線探知とか、君もバトル得意な人種かね。
大したことじゃないと俺は首をふる。
「君が知りたかったから見てただけー」
「そう」
火華は気にすることもなく前を向く。同様しない彼女の態度は、そういう輩に慣れているのだと、俺には『見えた』。
相手の経歴や何やら、未来も過去も見えるこの力。そういうものを調べるにはうってつけだ。
そういう輩、俺はそれを興味本位で覗いてみる。と、すればどこかで見たあの不敵な顔が浮かんできた。
「神谷……」
あいつか、と俺は納得する。あいつなら同じような芸当もできるだろう。
あの、人のくせして色々できる奴ならば。
そうか、此処はあいつの世界か。なら、あいつのところに行けばいいわけだと、俺は帰る方法を見つけた。
でもまぁ、どうせ来たんだし、観光でもして帰ろう、せめて、この少女の家くらいは。