大丈優一~その1~
コラボのラスト編です。
まぁ番外の番外も有りますがね。
今回は八雲さんの優一くんとコラボです。
よろしくお願いいたします。
私は楽しく世界を覗く。先程までの少年も実に面白かった。
成長するって素晴らしいねぇ、昔の神谷くんを見てるみたいだ。
「さあて次は誰を~」
私は世界に手を伸ばす。
その時、私は有ることに気づいた。
後ろに誰かいる。誰かが立っている。影になっているからよくわかった。
「誰かな?」
私は半ば確信しながら問うた。
そして、それは的中する。
「言わなくても、解るのでは?」
その声は、いつかに聞いた我が代替者の声。
振り向くのはすごく恐ろしい。
「いつ帰ってきたのかな、優姫ちゃん」
「先ほどです。兄さんとの二人きりを削って来たのですからさっさと動いてくださいね」
その声の圧力は怒りが滲んでいた。
静かに燃え盛る。その圧力はいかに私であろうと逆らう気をなくさせる。
私は覗いていた世界から目を放し、ゆっくりと振り向く。
そして、もう少しばかりサボりたいとなんとか言いくるめようと口を開く。
「あの、もうちょっとでいいか……」
だが、言おうとする前に、目の前の彼女の微笑に口が縫い付けられた。
「五月蝿い黙れ」
その微笑みとともに発せられたいつもからは想像できない口調は、私の全てを押さえつけて、頷かせた。
「はい。ごめんなさい」
「仕事に戻りなさい」
「はい。戻ります。ごめんなさい」
私は渋々と世界から離れ、自分の持ち場(といってもやることはつまらない新しい管理者の生成とかだが)に戻ろうと足をすすめる。
その私を見守る少女に、私は気まぐれに問いかけた。
「最近、客人が多かったり、よく遊びに行ったりしてるけど、気まぐれ?」
「気まぐれですよ。少々面白い人達を見つけたもので」
そう。私は頷いて足をすすめる。
彼女の面白い人と言うのはいつかの滅んだ種族のことか。
ん? 少し違うな生き残ってたら滅んでいるとはいえないな。じゃあほぼ滅んだかな。
彼等に生き残りがいるというのは彼等が絶滅する三日前に知ったことだ。
「さあて、じゃあ本当に仕事に戻るね」
「さっさとしなさい」
気迫に私は冷や汗とともに適当に返事をしながら、持ち場に戻る扉を開く。
本当に、神谷零が絡むと怖い娘だ。そんな風に色付けした記憶はないんだが。
まぁ、世界はわからない。かの少年がそうであったように。
だから世界は面白い。
私は少しずつ変容していく世界を未来視して、微笑んだ。
上司さんを見送った私は大きくため息を付いた。
あの人の後始末で私がどれほど奔走したか。それのせいで兄さんとの時間が一時間三十九分二十七秒も削られたと言うのに。
「零くんが待ってますね」
私はそう呟いて上司さんの開けた世界を閉じようと目を向ける。
そして、気づいた。
「あの人は……」
どこぞの幻想郷の住人。恐らくその行き先は……。
だが、これ以上は嫌だ。兄さんとの時間を削るなんてもう耐えられない。
申し訳ないけれど、今回は別のところに送っちゃいましょう。
「優一さん。私達とはまた今度ということで」
そう言って私は指を滑らせる。
飛んでくる人物の行き先はその指に沿うように、捻じ曲げられた。
****
世界とともに空間をジャンプする。その行為の途中でわけの分からない力に引き寄せられた。
「え? ちょ、まっ」
こんなこと出来る人物で、感知できる人物は数えるほどしか知らない俺は、絶対の確信とともにその人物へと恨めしく叫んだ。
「零ー! こらー!」
損さ叫び虚しく。俺の体は引き寄せられていく。
真新しく出来た俺が作ったものではない出口の光が見える。
飛び出た先は、広い、広い庭の池ノ上だった。
庭の手入れをしていたら人が落ちてきた。
まぁこんなことをする人物には一人しか思いあたりがない。
「大丈夫ですか?」
私は落ちてきた人物に手を差し伸べる。
池から顔をのぞかせた青年は私の手を取って大きく咳き込みながらうなづいた。
「大丈夫……うえっ、ここ、どこですか?」
苦しそうな青年の背中を擦りながら私は答えた。
「神谷流体術教室よ」
「は?」
青年は信じられない単語を聞いたとでも言いたそうに、口から水を垂らしながら素っ頓狂な声を上げた。
私はその少し抜けた顔に吹き出しそうになりながら、もう一度答える。
「神谷流体術教室」
「待って、待って下さい、神谷ってことは、俺の知り合いの神谷零の関係者ってことですか?」
ああ、やっぱり知り合いだったのか。なら話は速い。
私は手にタオルを取り出しながら少年に自己紹介した。
「私は優奈。貴方の言ってるその人の知り合いよ」
私は取り出したタオルを青年の頭に乗せる。
「ようこそ、異界の英雄さん。歓迎するわ」
私はそう言って、青年に笑いかけた。
もらったタオルはフワフワしていて気持ちがいい。頭を拭きながら思わずタオルをいじってしまっていた。
そしてなんとなく直感する。ここはこれと同じようにフワフワで温かいところなんだろうと。
そして、俺を連れて歩く女性に目を向ける。
赤い髪に童顔寄りの顔。その割には主張するプロポーション。御柱の神様を若干幼くしたような姿をした彼女に、俺は零の関係者でこのような人を連れにしそうな人を頭のなかで考えていた。
「あれえ? いたかなぁ?」
俺は首を傾げた。思いつかない。
零の弟子に顔を合わせはしたが、あの三人は恋愛に興味がある用には見えなかった。
連れられた先は武道場。しかし、来たは良いが誰もいない。
今日はお休みなのか、それとも、休憩中なのかと首を傾げた俺に優奈が声をかけた。
「今日は、急遽お休みにしたの。朝に零さんから連絡があったから」
「そうなんですか?」
「ええ、友人が来るから相手してやれですって」
ああ、なんとも零のやりそうなことだ。
そして、それを快く受けて急遽お休みにする此処も凄いと思う。
でも、それよりも、何よりも、零が俺を友人と言ってくれていたことが嬉しかった。
今でも鮮明に思い出せる。いつか、初めてあった日のことを。
『やぁ、平行世界の諸君歓迎するぜ』
そう言って不敵に笑った彼の顔は今でも変わらずにある。
自分が成長するごとに、遠い昔、手加減をされた彼の強さをあまりにも遠く感じた。
そして、その強さは自分が強くなっていけば行くほどありありと分かって、自分はまだ成長できるのだと、どこか安心があった。
いまも、彼は自分の前にいる。自分の進むべき先にいる。そして、その途中にあの彼の弟子たちがいる。
ああ、今日出会うのは誰なのか。
そう思いながら、俺は武道場で、優奈さんが呼ぶと言った人物を待った。
そして、それが現れた。
頭上に、拳を振り上げて。
「せいっ」
振り下ろされた腕に、反射的に結界を発動し、そのまま結界を押し込んで弾き飛ばす。
俺を攻撃した人物は武道場で軽やかに爆転しながら体制を立て直し、俺に目を向けた。
その顔を見て、俺は久しぶりと微笑んだ。
短い黒髪に頭部に生える二本の角。
国下と名乗った鬼が今、目前に不敵を持って立っていた。




