龍崎神斗~その2~
甘味処アリスさん、コラボありがとうございます。
龍崎くんとの話は次くらいで終わりになる予定です。
もし、参加したい方というありがたい方がおられましたら、
活動報告を読んで、私の方までメッセージをお願い致します。
踏み込んだ神姫は、まず最初に自分の大鎚を投げつけた。
飛んできた、大鎚を龍崎は拳で弾く。その弾いた大鎚の影から、神姫は出現した。
死角から現れた神姫に龍崎は驚いた。
だから、振り上げられた剣を防ぐのが少し遅れてしまった。
歪な体勢で防いだせいで龍崎は体制を崩される。
そのまま、神姫が繰り出した横薙ぎに吹き飛ばされた。
「はぶっ、へぶっ」
地面を転がりながら龍崎が呻く。しかし、立ち上がった彼は全くの無傷で、神姫は不思議そうに首を傾げた。
「あら? 結構本気で蹴ったのですが」
「ああ、それは簡単だよ」
龍崎は明るく応える。距離を取るためにも、派手に飛んでみただけ。
ダメージはないというふうに龍崎は両手を振る、そして、付け加えるように言った。
「足、大丈夫?」
その言葉で、神姫は自分の足に目を向ける。
彼女の足は、何かで弾かれたように所々が弾けて血を吹き出していた。
「あうっ」
気づいていなかったダメージに気づいた神姫から力が抜け、膝をついた。
痛覚を消している彼女に痛みはないものの、彼女の足はダメージによって動かなかった。
「何をされたか気になる?」
立ち上がった龍崎が首を傾げながら神姫に問うた。
しかし、神姫は首を横に振る。
「娘から何が起こっていたかは聞いてます。そして、この状況から推理も出来ます」
つまるところはエネルギーを操れるということでしょう?
神姫は正体見たりと微笑しながら言った。
そのことばに、龍崎はさてどうだろうとはぐらかした。
「当たってても、当たってなくても、この状況は俺が有利じゃないかな?」
そう言って、龍崎はスペルを唱えた。普通の弾幕では倒せないことも考慮して。
「龍陣『東方七星陣』」
そう唱えた龍崎の腕から無数の龍が飛び出した。
それは濁流のように渦を巻き、一匹の大きな龍となってそれを舞う。
龍は星おも砕く一撃となって神姫を見下ろした。
「ああ、これはもらいたくないですね」
そう言って神姫は苦笑いする。そんな彼女に、龍崎も笑顔で答えた。
「出来ない相談だな」
巨龍が、神姫へと降り注ぐ。その巨大なエネルギーをたった一人に集めて。
とぐろを巻いた龍は光の渦となって一面を崩壊させる。
その中心にいる少女の姿は欠片も見えなかった。
「まだまだぁ!」
龍崎は叫ぶ。その右手には先程の龍よろしく今度は一匹の大亀が現れていた。
大亀が一歩進む、次の瞬間、亀は龍のように飛び出していた。
神姫を取り巻いていた龍の渦へと大亀がぶつかる。
それはそのまま龍と一体化し、更に大きな力となって場を覆う。
龍崎は渦を見た。よく知るあいつが言っていたのだ。あの兄妹は倒せたのをいくら確認してもし足りないほどだと。
だから、彼は見つめる。見つめて、見つめて、気づいた。
避けられた、と。
そうわかった瞬間に、彼の背筋を殺気が襲った。
反射的に身を崩し、前に飛ぶ。瞬間、先程まで彼がいた場所を巨大な槍が貫いていた。
「『矛盾』こんなスペルにもしてない古い技を出すなんて久々です」
空から着地した神姫はそう言いながら神姫は掌から小さな盾を落とした。
片方を特化したらもう片方が弱くなる。極端なスペル。しかし、その極端さが今回は彼女を救った。
矛を極限まで弱くした結果、強化された盾は龍崎の放った攻撃をギリギリながらも防ぎ、彼女が逃げるだけの時間を作れた。
上空へ逃げた神姫はそのまま矛を強化、先ほど龍崎を頭上から狙ったというわけだ。
龍崎は身を翻しながら神姫へと霊力弾を撃つ。
それを竜崎の剣で切り裂きながら神姫は龍崎の元へと飛び込んだ。
飛び込まれた龍崎はリーチの違いに翻弄されて押されていた。
接近戦で、このままだとジリ貧だと判断し、彼は一つスペルを唱えた。
「雀陣『南方七星陣』」
声とともに、龍崎から炎が湧きでた。
その炎は龍崎を守るように回転し、神姫を近づかせまいと紅く輝く。
神姫は炎を避けるために一度後ろへ飛び、先ほど弾かれた大鎚を空間をつなげて呼び出した。
龍崎は神姫の動作から大鎚から何かが繰り出されると感じ、牽制のために自身を囲んでいた炎を神姫へと向けた。
それに、神姫は思惑通りと微笑を浮かべた。
「鋼糸『乱れ鋼』」
そう唱えながら神姫は大鎚を投げ捨てた。
龍崎は投げられた武器に一瞬気を取られた。だから、彼女が唱えると同時に出現した手甲に少しだけ気づくのが遅れた。
そして、その一瞬が、失敗だった。炎を神姫へ向けて無防備だった龍崎の体を、囲うように細い糸が張り巡らされる。
出来上がったのは触れれば斬れる鋼糸でできた檻。
龍崎に向けられた炎を、竜崎の剣でなぎ払いながら、神姫は掌を握る。それを合図に檻は収縮を始め、龍崎を切り裂こうとその体積を縮める。
「虎陣『西方七星陣』」
それに対して、龍崎が唱える。同時に、両手に貼られた甲羅の結界に大きな爪が生えた。
甲羅と同じ、超高度の結界で出来た爪は、神姫の檻を切り裂いた。
「さぁ反撃……」
龍崎は切り裂いた檻から飛び出し、目の前にいるであろう神姫へと飛び出す。
そんな彼が見たのは微笑を浮かべる少女の姿。
少女は、飛び込んできた龍崎に何をするでもなく、抱きしめた。
「は?」
竜崎の思考が一瞬停止する。
それで、十分だった。
「追憶『崩落する世界』」
少女は唱える。それは彼女のトラウマを強制的に相手に流し込むもの。
以前に自爆技だったものを改良し、相手に触れることを条件とした記憶干渉技。
その記憶は間隔までもを支配し、消えていく世界を、そこに住んでいた物達を映し出す。
「うっ。ああああああ!!!」
龍崎は叫んだ。覆い尽くす黒が、すべてを飲み込む光景を、全てが消滅する終わりを見た故に。
ガクリと、龍崎は神姫の肩に頭を落とした。息を荒らげながら、もたれかかる。
「降参します?」
神姫はまだ意識がある龍崎に驚きながらも、そう聞いた。
それに、龍崎は、行動で答えた。
霊力の放出。ただ単純なそれは、されども彼の膨大な霊力により強大な威力を発揮した。
「あぐっ!」
神姫が吹き飛ばされる。瞬間、ふとした拍子に剣がずり落ちた。
神姫はあわてて用に剣を引き寄せた。そして、柄の当たりを握ってしばらく持ちこたえる。
「『……』」
そんな彼女の口が動く。その音は衝撃に掻き消さた。
そして彼女は手を放した。剣はあっけなく吹き飛ばされ、龍崎は飛んでいったそれをもう一度掴んだ。
龍崎は剣先を神姫へ向ける。
「さて、第二ラウンドだ」
少し青ざめたままの顔で、龍崎は言う。
神姫は、貴方がそう言うならと頷いた。
「はじめましょうか」
二人は笑う。踏み出した龍崎の剣戟と、神姫の手甲が火花を上げた。