ハイド・天之御中主・ミラ ~その壱~
今回は糖分99%さんのハイドとコラボです。
※注意※
今回のコラボにあたって、IFストーリーとして、ハイドの価値観、人間への対応等が変わっています。
コラボ先の龍人晶本編のハイドくんとは色々あった別人として考えて下さい。
それでは、よろしくお願い致します。
お気に入りの世界を外側から眺める彼は、あくびをしながら件の赤黒い力の権化が道を作るのを見ていた。
魔法の森奥地、そこの上空に現れた黒い世界の穴。一つの世界を滅ぼしたうえで、世界の壁を強制的に捻じ曲げてやってくるそれを、彼は眺めた。
「赤黒……ね……久々に見た」
彼が呟いたのは赤黒い力のこと、すべてを飲み込む、彼のいるあらゆる概念のない、世界から外れた力。
『龍神力』それが赤黒い力の名前だった。
「もういないと思っていたんだが、あれを使えるのは」
そう彼がつぶやいたのも無理はない。それを使っていた、いや、使うことができた種族はもうずいぶんと前に滅んだはずだったからだ。
『龍人』赤黒いあの力を使う、人から派生した生命。
強靭な鱗と尾、感覚器である角、空を飛ぶ翼と、驚異の再生能力を持った彼らは、あの力でもって、自分たちを支配しようとしたものを逆に支配して見せた脅威の種族。
しかし、支配したと思った物達に、不完全な彼等の力を使って滅ぼされた悲しき種族。
「世界を飲み込ませたってことは、復讐か」
手当たり次第に世界を潰して、復讐の相手を呼びだそうとしてるんだろう。そう、彼は予想した。
いつかは出てくるだろう。いや、出てこないかもしれない。新しい世界を作って永久に逃げ回るかもしれない。
ただ、今ある事実は彼を野放しにするとたくさんの世界がなくなるということだけだ。
「さあて、いざとなったら出てもいいが、まぁ出る幕はないだろう」
そうつぶやきながら、彼は一件の家を見た。
そこから飛び出した少女が、手を掲げるのを見て、彼は笑った。
「今日は、あの子に任せるとしようか」
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ふわり、と地面降り立った人物、否、龍人は周囲を見回して首を傾げた。
「おかしいですね。確かに次の世界に降りたはずですが……」
その赤い目をキョロキョロとさせながら、龍人は感覚器である白い二対の角で周囲を探る。結果、彼の周囲、かなりの範囲の中に地球で言う所の生物がいないことが判明した。
「たまたま、生物のいない宇宙に出たのでしょうか?」
龍人はそうつぶやきながら少し周囲を歩く。
そして、角がそれを見つけた。地面を球体状にそこだけ削りとったようなクレーター。
「これは……」
ハイドは手を伸ばし、それを調べた。
ついこの間出来たクレーター、そこにはかすかなエネルギーの残り香があった。
そして、彼は結論を出す。これが自然に出来たものではないと。
「ならば、いますね。まだ、感知していないだけで」
そう、呟いて、龍人は腰を起こす。
ここには、彼の狩るべき者がいるはず。いや、いると。
そして、その予想は当たっていた。龍人の降り立った地面より遥か上、高度六千メートルを超える位置より、少女はそれを放った。
角が、それを感知して、とっさに防いだのは龍人にとって正解だった。
受けた地面が、高速ならぬ光速で到達した何かに無残にもクレーターを追加された。
龍人は空を見上げる。そして、そこから降りてきた一人の幼い少女を見た。
「初対面で随分と物騒なことをするんですね」
龍人は言った。
それを聞いて、呆れたようにため息を付いて少女は返した。
「世界を一つ無くしてきた輩です。問答無用は仕方ないと思いませんか?」
「それもそうですね。ですが、潰したことを知ってるとは思わなかったので、一応言ってみただけです」
「そうですか。で、本日は何用でこの世界に?」
少女は龍人に問うた。それに、龍人は笑顔で応える。
「少々、この世界をまるごと消しに」
「あら、素直で嬉しいです」
少女は笑顔で返した。
双方の間には見えない火花が散っていて、すでに腹の探り合いが始まっていた。
先に龍人が口を開く。
「疑問を先に解消しても?」
「どうぞ」
「ちゃんと世界に穴を開けて入ってきたつもりだったんですが、これはどういうことですかね?」
ああ、それはですね。と、少女は指を立てる。
「貴方が作った穴、それが出来るホンの少し前に、別空間への穴を作っていたんです。世界に出来た穴と同じ、エネルギーの発生しない空間そのものを消失させる方法で穴を作りました」
「なるほど、巧妙ですね。それで、此処は貴方の空間ですよね?」
「そう思ってもらって大丈夫です。宇宙の中に作ったもう一つの宇宙です」
私が見た貴方の力には無いよりマシ程度にしかならないでしょうけど。
そう言って少女は肩をすくめた。
「随分と手のこんだことを。では、私は目的地にはついたわけですね」
「そうです。ちゃんと生物のいる宇宙に出ていますよ」
「それは良かった。無駄足は嫌ですから」
「わかりますよ。面倒になります」
二人はお互いに笑顔を浮かべながら会話する。
二人の発する牽制の威圧は、その場に別の誰かがいたなら、その人物をそれだけで腰抜けにしたであろう。ビリビリと電撃を流したかのような緊張の空気の中で、二人はそれをお首にも出さずに会話する。
「それで、まず最初の相手は貴方ということでいいんですよね?」
龍人は少女に聞いた。
「ええ、最後の相手としてもらっても結構ですよ」
少女は返した。
龍人はそうですかと返した後に、一応の礼儀として、名乗った。
「僕はハイド・天之御中主・ミラ。龍人です」
少女もそれに習う。
「私は神谷呼白。人間です」
二人が、息をつく。
次の瞬間、今まで満ちていた緊張は殺気へと変貌した。
ハイドは龍人特有の鎖帷子のような鱗に全身を覆われ、呼白はどこから出したと言わんばかりの霊力の刀剣を、これでもかと展開した。
「行きますよ。人間、さっさと死んでくれるとありがたいです」
「いつでもどうぞ。それは素敵な提案ですが、今回は逆に殺してあげますよ」
それは、二人の開戦の合図。
磨きぬいた刀のようなその雰囲気を弾けさせて、二つの殺気はぶつかり合った。




