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外道は外道のまま世界を救う  作者: カタヌシ
乳幼児期 奴隷編
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魔力判別石と魔石

 そろそろ体感で2歳になる。

 不快な奴隷教育も始まった。

 そして、最近になってようやく自分の容姿もわかっていた。

 どうやら俺は、金髪に、ホリの深く、色が白い前世で言うとヨーロッパ系の顔をしているようだ。

 鏡がないので、きちんと見たことはなかったが、なかなかに整った顔だとは思う。


 そんなある日のことだ。

 早朝、グレイに呼び出され、だいたい俺と同じ2歳くらいになる奴隷の子どもたち全員が

 奴隷屋敷の空き部屋に集められた。全員でだいたい20名ほどだ。

 当然のように、呼び出した張本人の姿はない。

 その部屋には何も置かれていないどころか、カーペットもしかれておらず、床の木がむき出しになっていた。皆、不安そうにグレイが来るのを待つ。なかなかこない。


 ちっ、今日は色々と魔法の実験をしておきたかったのに無駄な時間をとらせやがって。

 そんな事を考えているとようやくグレイは現れた。

 呼び出しておきながら30分近くたってやっとだ。


 グレイはビー玉くらいの小さな何の変哲もない石を、手一杯に持ってやってきた。

 その石を、俺たち奴隷に一つずつ手渡しで渡していく。

 見れば見るほど、その辺に落ちている普通の石だ。

 これが一体なんなのだろうか。

 俺は、グレイの言葉を待った。


「命令だ。今配った石を飲み込め。」

 グレイがそういった瞬間、腕が勝手に動き、石を口に運ぶ。

 そして、そのまま石が口の中に放り込まれ、抵抗むなしく飲み込んでしまう。

 抗うことは出来ない。

 隷属の首輪による。絶対命令の力だ。

 俺はつよい反発心をもちながらも、首輪の魔力に逆らわず甘んじてこれを受けた。

 ごろごろとした感触が喉の奥に残るが、なんとか飲み込むことが出来た。


 とくに、飲み込んだがなんの変化もない。

 そんな風に思っていた瞬間だ。

 腹の中から、急激に魔力が吸い取られる感覚が俺を襲った。

 ごそっと魔力が座れ、ふらつく。俺は、あわててPMを燃やし、魔力を作る。

 しばらくして、魔力の喪失感は収まる。

 それにしても、大量の魔力を一気に吸われた。

 原因はどう考えても、グレイが持ってきた石だろう。


 周りを見れば、他の子どもたちは床にのたうちまわり、もがき苦しんでいた。

悲鳴のような声を上げて泣くもの、ひたすらにリンスさんの名を呼び助けてと繰り返すもの、じっと腹を押さえ痛みに耐えるもの、金切り声をあげてわめき散らすもの。反応は千差万別だった。


 やばいと思ったときには遅かった。

「おい。2567番。おまえは相当な魔力をすでに持っているな。

 最初から、石を飲んで倒れないとはなかなか有望だ。」

 そういって、グレイはニタニタと汚らしい笑みを見せる。

「ご主人様にお褒めいただき、光栄にございます。」

 俺は、うやうやしく肩ひざをつき、グレイに対し礼をする。

 心の中では、憎悪の火がメラメラと燃えていたが、そんなのは表面に出さない。

 いつか必ず殺してやるよ。

 そういう殺意に、偽装魔法をかけて、首輪がそれを敵愾心と認識する前に忠誠心にすりかえる。

 隷属の首輪も意外にたやすく騙せることはわかっていた。

 行動自体を騙すことは出来ないが、自分が思っていることや考えていることを偽装し、誤って認識させることはできるようになった。


 グレイは俺の反応と検査の結果に満足したようで、機嫌がよかった。

「よろしい。お前は明日よりリンスから魔法を学べ。

 そして、立派に魔法を使えるようになって、価値のある奴隷となるがよい。」


 そうすれば、高く売れる。

 そう思っているのだろう。

 そんなに上手くやらせるか。最後には俺が笑ってやる。

 お前はかならず八つ裂きにして、殺してやるよ。

 俺は、頭を深く下げたまま、「魔法を私みたいな下賎なものがつかえるようになるのか…しかし、わが主の為、全身全霊をつくさせていただきます。」と、俺は歯を食いしばった。


 そのあと、俺が石について質問するとグレイは自慢げに石についての説明をしてくれた。


 石は、魔力判別石というらしい。

 体内で魔力を吸い取り、魔力と結合し、水に変わるという不思議な石だそうだ。

 魔力判別石は、魔力がたりなければ全身に痛みを与える物質を発生させる。

 痛みを与えながらも、次に生み出された魔力を生まれたそばから吸い取っていく。

 石がすべて魔力と結合し、水に変わるまで痛みと魔力の吸収は続くのだという。

 魔力を多く持っているものは、短時間で苦しみから解放され、

 魔力が少ないものは、長時間苦しむことになる。

 その時間で魔力の才能の有無をはかるものらしい。

 また、魔力はあっても魔法を使うことが出来ないものは、この石を呑むことで身に巡る魔力の存在を感じることができるのだという。魔法の一番最初は、魔力の存在を知ることだともいっていた。


 最後の方の話は、俺には全く関係はないが、この石は使えると思った。


 最近俺はどんなに魔力を使い、PMを燃やしてもPMPが尽きないようになっていた。

 だから、最近はあまりやMPやPMPが増えていることを実感できないでいた。

 というよりも、増えているかどうかも怪しいものだ。


 そこにこの魔力判別石を使えば、大量の魔力を一気に消費できる。

 それにより、PMPをさらに増やす訓練が出来る。俺は確信していた。


 俺は強くなる。

 そして、世界を救えというならば救ってやる。

 だが、俺が求める強さは世界を救える力ではない。

 俺の願いや欲望をすべてかなえることが出来る力だ。

 それがこの世界ならば手に入れることができる。


 魔法は、練習すれば練習するほど強くなる。

 現世では、一切役に立たなかった心理学の知識も魔法と相性が良いのか役に立っている。

 すべてが無駄になっていない感覚がある。

 後は、首輪さえ外すことができれば俺は、最強になれる。

 すべての欲望を充足させることも夢ではなくなる。


 だから、今の俺は強くなることに貪欲だ。

 痛みや苦痛はもうとっくになれた。そんなのはどうでもいい。

 多少痛くても、苦しくても強くなれるのであれば、それはやるべきことだ。

 聞けば、魔力判別石は非常に安価で、屋敷の裏の山でも採取可能だという。

 魔力と反応して水になるが、魔力効率が極端に悪く、得られる水も少量である為に価値がないのだという。


 魔力判別石は魔力に触れさせさえすれば、水に変わる為非常に平易に大量に見つかるとのことだ。

 それならば、大量に集めて、大量に飲み込んでやれば良い。そしたら、もっと魔力が上がるだろう。


「おまえは、もう良い。下がっていつもの仕事を続けろ。」

 他の子どもたちがのた打ち回っているのを尻目に、部屋から出て行くように命じられた。

 子どもに一瞥をくれる。こいつらには負けない。切り捨てて先に行く。

 俺は決意して、部屋を出て行く。今日も魔法の訓練をしなければならない。仕事をそうそうに済ましてしまおう。俺は、ようようと魔法の訓練に向かった。



 次の日から、俺の日課にリンスさんの魔法の講義と、魔石への魔力注入の仕事が加えられた。

 しかし、リンスさんの魔法講義は早々に辞退した。

 なぜなら、俺はリンスさんが使える魔法は一つを除いて使えるようになっていたからだ。

 リンスさんが使える魔法は、【水魔法】、【思念魔法】、【浄化魔法】の3つだった。

 浄化魔法は、端的にいえば、対象を綺麗にする魔法で、俺はいくら練習しても出来なかった。

 才能がないのか、イメージがだめなのかはわからなかったが、いくら魔力をこめても魔法は発生しなかった。

 それ以外の魔法はもうかなりのレベルで使えるようになっていると思う。

 いまさら、リンスさんに学ぶことはないだろう。リンスさんもそれはよくわかっているようで、特に反対はされなかった。


 そして、もう一つの仕事。

 魔石への魔力注入の仕事だが、これが非常に退屈で、簡単で無駄な仕事だった。

 この世界には、魔力を貯めておける石があるという。

 それが、この魔石というものである。

 魔石は、魔力で動く魔道具を動かす動力になるのだという。

 魔道具は、例えるのであれば電化製品のようなもので、魔石が電池である。

 当然、魔石は使えば使うほど、内臓する魔力が減っていく。

 しかし、それは人の手によって補充することができるのだという。

 その補充が俺の仕事だった。


 魔力判別石で魔力があるとわかった次の日から、それの仕事は始まった。

 俺はグレイに裏庭にある小屋につれてこられ、そこの鍵を渡された。

 曰く、魔力切れの魔石を補完している小屋で、

 ここで1日に一度、魔力が切れるまで魔石を作れとのことだった。

 魔石は殻の状態であってもそれなりに高価であり、屋敷には100個ほどしかないが

 まずはそれにすべて魔力をこめるよう命じられた。

 ちなみにこのときの命令は、隷属の首輪の命令ではない。

 この首輪の命令は絶対服従ではあるが、効果時間がそれほど長くない。

 そのために、こういった日課の命令をさせるのであれば、

 毎日同じ命令をする必要があった。

 そんな命令はめんどうなのか、グレイはただ普通に命令だけをされた。


 そして、俺が持ち出したり、さぼったりしていないか

 一日に一度、隷属の首輪を用いて質問するもいわれた。

 最後に、魔石への魔力のこめ方を教えて、足早にグレイはその場をさった。

 

 倉庫の中を見ると、狭い倉庫に大き目の麻袋が3つだけぽつんとおかれていた。

 一つはからで、他二つには魔石らしい石が入っていた。


 魔石の見た目は、アメジストの原石のようだった。

 大きさは、小さいものでこぶしくらい、大きいものでティッシュ箱くらいあった。

 大きさによって、注げる魔力量が違うらしい。


 一つ一番小さそうな魔石に魔力を注いで見ると、魔石は淡く紫色に光った。

 強く光れば、光るほど魔力が入っているということだった。

 まずは、入るだけ魔力を注いでみた。

 最初はドンドン魔石の光は強くなった。しかし、少しして、光の強さが増さなくなった。


 普通の者は、1日で魔石を10つも光らせれば、上等なのだという。

 リンスさんも、11個が限界とのことだった。

 しかし、俺は倉庫にあった魔石のすべてを限界まで光らせても、まだまだ余裕だった。

 もちろん、グレイには8つくらいで限界だと報告し、充電済みの魔石から適当な数を渡している。

 グレイも首輪を使って嘘がないかチェックする程度で、実際に魔力切れの魔石の保管庫を見たりはしていない。見たところで、偽装魔法が発動し、グレイを騙し気付かれない自身はあるのだが、今のところは全くばれていない。


 あきらかに、魔力判別石よりも消費魔力が少なかった。もっと、魔力を消費する仕事ならば、率先して行うのだがこれでは効率が悪すぎる。しかも、一つ一つ手をかざして意識を集中させなければならない為、時間もかかる。だから、魔石の仕事はつまらない退屈な仕事だと俺の中で決まっていた。



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