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外道は外道のまま世界を救う  作者: カタヌシ
乳幼児期 奴隷編
7/54

木偶の坊のデク

あれから一年が経った。

俺はかわらず魔法の修行を行い続けている。


朝俺は他の子供たちよりも早くに目を覚ます。

そして、全身に魔力を大量に巡らす訓練を始める。

今や俺のPMPは莫大になっており、

一日そうやってPMを消費したところで尽きることはなくなっていた。


次に、爪で右手の肉を抉る。それを瞬時に癒す。

結構大きな傷でも直接見える部分は、傷から出た血で瞬時に治せるようになった。

軽く準備運動したあと、回復魔法の本格的な練習を始める。


まずは身に付けているものをすべて脱ぎ、裸になる。

敷いてある布団と掛け布団を丁寧に畳み、自分から遠いところにおき、

自分の周りになにもない状態を作る。

全裸で汚いフローリングに仰向けに寝ているのはあまりにも不愉快で、不格好だが、

これは仕方がない。

今、その解決策を試しているところだが、まだ未完成だ。

だから、今は不格好でも仕方がない。

そうしなければ、魔法を練習するたびに服がぼろぼろになってしまう。


始めて回復魔法を成功させた日のように、俺は血で無数の針を作り出す。

以前は針を一本一本を操ることはできなかった。

だから、群れとして一つの集団(ゲシュタルト)として操作したが今は違う。

毎日、毎日死ぬような思いで一年間魔法の訓練を使い続けてきたのだ。

俺の魔法の能力は格段に成長していた。

俺は、作り出した血の針を全て、自分の体に満遍なく刺す。

激痛が体を走るが、もうなれた。

あぁ、いつものやつつだ。くらいの感想しかない。


そんな痛みにへきへきしながら、瞬時に体を治す。

血を体内で増幅させているため、体からは大量に血が溢れだしてくる。

全身の傷は30秒もせずに治った。

それを3セット行う。

そうすると、俺の体のまわりは血だまりができる。


次はこの血だまりを使う。

血の全てに、魔力を飛ばし、魔力を充満させる。

そして、魔法を発動。

全ての血をひとまとまりの球体にする。

その球体を、大きくしたり、小さくしたり、動かしたり、飛ばしたり、転がしたり、形をかえたり、いろいろと弄って操作の練習をする。俺はもう結構精密で、素早いな操作ができるようになっていた。この血を攻撃に使えば、なかなかの殺傷力を出せると思う。


俺は水魔法を完全にこの血魔法にシフトさせた。

水と血では確かに生み出すのに血の方が何倍も魔力を必要とする。

しかしだ。

俺のMPは結構すごいと思し、一日血を生み出し続けてもなくならない自信はある。

ならば、余った魔力を有効に使わなくては勿体ない。

そう思って、水の代わりに血を使った魔法を練習している。

人と殺しあう場面では、水で攻撃するよりも血で攻撃した方が嫌悪感を与えられるし、怯ませることがてぎるかも知れないと考えたのも理由のひとつである。


さて、血魔法の練習をしたあと、次の魔法の練習に入る。

俺は隣の部屋で寝ているだろう一人の奴隷に思念を飛ばす。


「おい!起きろ!デク。時間だ。」

まぁ、すぐには来ないだろう。その間に脱いでいた服をきておく。



2、3分デクを呼び続けると、赤ん坊の奴隷が寝ている部屋に、デクが入ってくる。


このデクとは、奴隷屋敷で一番年長の子どもである。

ガリガリの癖に、背ばかりが高く、何事も容量が悪い。

そして頭もかなり悪いし、喋り方も舌足らずでいらいらする。

なにより致命的なのが足が悪く、素早く動くことができないことだ。

そのためにいつまでも売れ残っており、もう数ヶ月買い手がつかなければ、鉱山奴隷として鉱山に送られる運命が待っている。


俺はこいつを脅し、手下として使っていた。デクとは俺がつけた名前だ。

デクは、入り口で俺の方をじっと見つめて待っていた。


思念魔法は、自分の思念に魔力を込めて対象に飛ばすことで発動する魔法だ。

前世ではテレパシーとか念話とか呼ばれていたやつだ。

リンスさんが俺たち奴隷に物語を読むのに、使っていたのがこの思念魔法だった。

実際に使われる場面を見て、その魔法を使われるのを見るとイメージはかなりしやすかった。

ゆえに、思念魔法は簡単に習得できた。

最初は、対象が見えていることが必須だった思念魔法も練習をしていくうちに、正確な場所さえ指定できれば遮蔽物があっても魔法を使えるようになった。距離で言うとだいたい100メートルほど離れても思念を送ることは可能である。


デクは思念魔法どころか魔法を使うことが全くできない。

そして、思念魔法はこちらからの思念を送る魔法であり、受信はできない。

だから、多くの子どもたちが寝ており、起こすことが出来ない上代の今、デクはこちらに指示を乞えず、だからといってなにかを判断し、行動することもできずただ俺の指示を待っているようだ。


『遅い。薪割りにいくぞ。呼ばれたらすぐこい。で、お前今日薪割り当番だっただろ。』

思念でそう送ると、デクはハッとした顔になった。

これは、完全に忘れていたな。

そんなんだから、いつもいつも懲罰を受けるんだ。


3歳より年齢が上になると、一人一人になにか家の用事を任され、当番のなかに組み込まれるようになる。

デクは今日屋敷の裏山で薪を斬る当番だった。

デクは、慌てた様子で部屋から出ていった。俺も続けて、部屋を出る。

ちなみに、普通に歩くとまだまだバランスがとれずよろけたり、早く歩けなかったり、長距離では異様に疲れたりする。

今は全身に魔力を巡らせ、体を強くするイメージと筋肉だけではなく魔力で体を動かすイメージを行い、魔法を発動させることでかなりの運動能力を手にいれた。

これを俺は魔力駆動と呼んでいた。

魔力駆動発動中の俺は、並の大人には身体能力で負けない自信がある。

正直、前世の俺の身体能力よりも数段上だ。


裏口から庭に出て、木で出来た背の低い柵を超えて、裏山に入る。

裏山を少しいくと、木を薪にするための作業台と斧が置いてあった。

周りの木は、ところどころ斬り倒されて切り株になっている。

俺は、切り株の一つにひょいっと腰を掛けた。

デクは、斧を手に取り作業を始める準備をしていた。


「さて、人気もない。色々実験に付き合ってもらうぞ。

だが、いつもどおりお前にして貰うのは報告だけだ。

デクは、作業を続けたまま質問にだけ答えろ。」

「やっぱりこういうのはよくないと思うんだな。」

デクは基本的に頭が悪い。そのくせに、嫌に真面目だ。

「なにがだ?」

「それは、ご主人様に黙って、俺らみたいな奴隷がこそこそと企てるのなんて、きっとよくないと思うんだよ。」


ちっ!

舌打ちが出る。

「また、その話か?お前は危険きわまりない鉱山に奴隷として連れていかれて、死ぬほど働かされて、最後には無惨に死んでゴブリンの餌にでもなりたいのか?」

脅すように言った。

「ち、ちがう。そんなの俺だっていやだ。けどさ。」

「俺はな。奴隷でいるが嫌なんだ。支配されてると思うと吐き気がする。」

そう。俺は嫌だ。

このままなんて絶対嫌だ。俺はせっかくの第二の人生を自由にいきるのだ。

そして、あのグレイとかいう醜い豚を殺してやる。

そのために死に物狂いで魔法の訓練をしているのだ。

かならず、成り上がり、そしてグレイを殺す。


そう思った瞬間、首輪が光り体に激痛が走る。

しかし、そんなのもはや慣れっこだ。

どうでもいい。

「あっ、また首輪が光った。リビィ。また、いけないこと思った?」

デクはあからさまに慌てる。

「これくらいで取り乱すな。いつも言っているだろう。

首輪はその場で苦痛を与えて、光で敵愾心を伝えるだけだ。

光を直に見られない限りあとになって光ったことはばれない。

ばれなければなにも問題はない。

そして、俺をリビィと呼ぶな。

そう呼んでいいのはリンスさんだけだ!」


怒気を込めた目で睨むと、デクはビクッと肩を震わせた。


「わ、わかったよー。師匠はすぐ怒る。謝るよ。

でもさ。師匠。俺たちみたいな醜い奴隷があまり大それたこと考えない方がいいんだよ。俺たちはしょせん奴隷なんだ。普通の人とは違うんだな。」


きた。

馬鹿馬鹿しい負け犬思考。

教育の賜物といってもいい。

俺たちに読まれる童話や物語は一歳を過ぎるとガラッと内容が変わった。

それまでは、冒険譚や寓話が多かった。

しかし、一歳を過ぎた頃からいかに奴隷という身分のものが醜いか。いかに魂が汚れた存在か。そして、それを飼ってくれている主人たちがいかに優れたものたちかを語る物語に変わっていた。

それをひたすら聞かされて育つ奴隷の子供たちは多くは卑屈で、悲観的だ。

それは致し方ないことだろう。だが、不快だ。

そんな話を聞くと虫酸が走る。

「別に俺たち奴隷とあの醜い豚に違いなんてない。

俺たちはたまたま不運に奴隷に生まれただけで、やつはたまたま幸運に奴隷に生まれただけだ。

魂や存在そのものに違いなんてない!」


俺が言い切るとデクは少し驚いた顔をして、そしてそのあと悲しそうな顔になった。


「なしたら、どうして俺たちはこんな仕打ちをうけねばならないんだ?

俺たちが奴隷なのは、魂が汚れているからだろう?」


なるほど、これは本当に救えない。

デクは、今の境遇や仕打ちを魂が汚れているから仕方ないというせいにしたいのだろう。

魂が汚れているとかいうわけのわからない理屈にすがって、辛くて、かなしい現実を無理矢理納得する言い訳に使っているのだ。


無理だな。

俺にはこいつのこの奴隷根性を叩き直すことはできない。

これ以上は何をいっても無駄だ。

俺はデクの思想を強制することをあきらめた。


「はい。はい。お前は一生そう思って快適で楽しい奴隷生活を謳歌すればいい。」

俺は鼻でデクを笑った。おもいっきり馬鹿にするように表情も作った。

「ば、馬鹿にするなよ。

リビィ!おまえのこと、ご主人様に告げ口してといいんだからな!」


ちっ!木偶の坊が!立場をわきまえろ。

俺は飼い犬が手を噛んできたら、数百倍の力でかみ返すタイプの人間だ。


「やってみろよ。できるならな。お前は主人に逆らうよりも恐ろしい目に遭うことになるぞ。」


言葉に魔力を込めて、魔法を発動させて脅す。

魔力のこもった言葉は相手の魂に響く。

脅しの言葉ならば魂にごと怯え、癒しの言葉ならば魂から癒される。

虚偽の言葉は魂で信じ、真の言葉は魂を震わす。


俺が開発した言語魔法だ。

デクは、斧を持ったまま、その場にへたりこみ、膝を抱えて縮み混んでガタガタと震えだした。


魂の弱いものには効果は絶大だ。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」


震えながら、何度も俺にデクは謝罪する。

どうやら、俺はこの言語魔法の特性が一番高いらしく、今では一番得意な魔法になっていた。

「わかればいい。さぁ、薪割りをさっさとしろ。それが終われば魔法の訓練をしてやる。」

俺が手を差しのべるとデクは震えながらその手をとって立ち上がった。

目には一杯の涙を浮かべている。


「時間もないさっさとやるぞ。

俺はお前に魔法を使うから、お前は適当に薪でも作ってろ。」

デクはコクンと小さくうなずき、斧を片手に木を伐りはじめた。

俺も思考に魔力を込めて、デクに飛ばし、魔法を発動させる。

発動させたのは、思念魔法の1つ。

言葉を相手に送るのではなく、自分のイメージした映像を相手に送る魔法だ。


俺は、グレイを殴り殺す映像を詳細に思い浮かべ、その映像に魔力を混ぜて、それをデクに飛ばすことで魔法を発動させようとした。


魔法が発動した瞬間、デクの首輪が光った。

俺の首輪も当然光っている。デクは強烈な悲鳴をあげてあたりにのたうち回った。


ちっ。大げさだな。情けない。

首輪1つで痛がりすぎだ。

「な、何て映像を送るんだよ。」

数分のたうち回ったあと、デクは俺に抗議の声をあげる。


「この程度で情けない。それより、報告しろ。」

「本当に師匠は横暴なんだな。」

非難めいた目でデクは俺をにらんでくるが、俺にとってはどうでといいことだ。

それよりも早く魔法がきちんと発動したか結果を聞きたい。

思念魔法や言語魔法は、いくら訓練しても、相手がいなければ発動したかということすらわからない。

一人では訓練できないタイプの魔法だ。

だから、俺はデクに魔法を教えるかわりに、魔法の練習付き合わす約束をした。


魔法が使えるとわかれば、買い手が見つかり鉱山で働く未来を防げる。

心優しい主人に拾われれば、人生を楽しめる可能性もある。

今のままでは、鉱山で死ぬのが目に見えている。

だから、俺に協力しろ。悪いようにはしない。

そう言って俺は、デクを脅した。

デクは言語魔法の効果により、盛大にビビりながら俺の話を聞いて、

恐怖と当惑と共に提案を受け入れた。


「えっと、俺が見たのは師匠がご主人様を殴っている映像だった。

ご主人様は仰向けに寝転んでいて、それを師匠が馬乗りで押さえつけてひたすら殴っていた。

だんだん、力が強く込められて行って、最後にはご主人様の頭はぺしゃんこにつぶれてしまったんだ。」

よし!イメージ通りだ。

次だ。次の魔法の練習だ。

デクの言葉に適当に頷き、次の思念魔法を別の魔法でコーティングして放つ。


イメージしたのは、グレイがデクを絶賛し褒め称え、褒美として大量のパンを与えている映像だ。


「やったぁ!師匠。これは未来を見せる魔法だろ?そんな感じがしたんだ。俺は、ご主人様に大量のパンをもらえるんだ。いつかな?いつかな?楽しみだな。師匠にも1つ分けてやるよ。」


デクは涎を垂らして喜んだ。俺が使ったのは、思念魔法に偽装魔法を混ぜたハイブリッド魔法だ。

思念魔法で映像を送る際に、それを未来の映像であると偽装してあいてに送るという魔法だ。

この偽装魔法であるが、対象の知覚に作用して認識をずらしたり、

虚偽の情報を知覚させたりするという魔法である。


見事にデクは俺の魔法に認識をずらされ、見た映像を未来のものだと知覚してしまったのである。


感覚と知覚は異なる。

感覚は、目や耳、鼻などの受容器によって、外界の刺激を受容することで生じる。

人間はこれを電気的信号で伝達し、情報処理を行い、情報を知覚する。

知覚とは、感覚よりももっと高次の処理段階である。

感覚が情報を刺激として単純に受容し、単純に処理するのとは異なり

知覚はさまざまな外的要因によって変化する。

たとえば、暇なほど時間が長く感じたり、楽しいほど時間を短く感じたりする。

そういう風に、知覚はあまりあてにならないもので

人は見たいものだけを見、聞きたいものだけを聞くとはよく言われることだ。


そして、この偽装魔法であるが、

感覚の刺激に魔力を混ぜて、自分の誘導したいように知覚を操作する。

それが偽装魔法のイメージである。


とりあえず、面白いほど偽装魔法は効果があったようだ。

近くそのものを偽装するのだ。なかなか見破れるものではない。

自分の直感を信じれば、それが実は魔法にかけられているというのもなかなかに使えそうだ。


俺はデクにはばれないようにひっそりとほくそ笑む。


さて、これでデクを使った魔法の検証は終わりだが、

もう少し新しい魔法の練習をすることにした。

デクには引き続き薪割りをさせておくか。


「おい。今から色々映像とか言葉とかを見せたり、聞かせたりするが特に気にせず作業を続けろ。」

そうデクに指示を出して、魔力を練る。

そのときだった。


「あっ、リビィ。また、デクといるの?」

突然声をかけられ、びっくりする。

しかし、同時にほっとする。

「リンス先生!!」

来たのは、リンスさんだ。リンスさんでよかった。

リンスさんは俺が魔法を使えるのを知っていた。

知っていて、グレイには報告しないでおいてくれている。

もし俺が魔法を使えることがばれたら、きっと売られるか無理やりに魔法を使った仕事をさせられるだろう。魔法を使えるものは、どうやら少なくはないが多くはないようなのだ。


「おはようございます。今日もデク兄さんに遊んで貰っているのです。」

俺は精一杯の笑顔を作りながら、流し目でデクをにらんだ。

「そ、そうなんだ。リビィと遊んであげてるんだ。」

デクは棒読みでリンスさんに笑いかける。

「ふふふ。どっちが遊んであげているのかしら。

でも、デク。あまり遊びすぎて仕事をおろそかにしちゃだめだよ。

リビィもデクの仕事手伝ってあげてね。」

リンスさんは優しく俺たちに笑いかけてくれる。

心があったかくなる笑みだ。

俺もそれに笑顔で返す。

「はい。リンス先生。魔法を使っても良いですか。」

「他の子やご主人様それとリー先生とラン先生には内緒にするのよ。」

リーとランというのは俺たちを世話する大人の奴隷のことだ。

この二人は、俺たちを育てることよりも自分たちが罰をうけないことを主においている。

だから、信用できないのだ。

「はい。もちろんです。先生。折角なんで僕の魔法。先生も見てください。」

俺はあくまでも無邪気を装った。

デクは少し困ったような顔をして、ぽかんとしている。

まぁ、デクなんてどうでもいい。


俺は魔力で水を生み出し、それを木に向かって薄く速く発射する。

イメージしたのは水のカッターだ。

スパンと木はきれて、倒れる。

「どうですか?これで、たくさん薪をつくります。」

「そ、そうですね。頑張りなさい。でも無理はだめよ。」

リンスさんはその様子を見て、驚愕の表情を作った後に、

ものすごく悲しそうな顔になった。

なぜそんな顔をするのか俺にはわからなかった。


「じゃあ、朝食の時間までには帰る様にね。」

そのまま固まったままでいたが、少ししてリンスさんはまた笑顔に戻り、屋敷の方に戻っていった。

「リンス先生。僕の魔法のこと。」

去り際に、一応釘を刺しておくことにした。

悲しそうな表情をつくり、懇願するような声色を出す。

そして、言語魔法を発動し、すがるような思いで言っていると強調する。

「もちろん。誰にも言わないから。安心して。」

リンスさんは力なく笑ってそう答えてくれた。

俺は、また最大級に笑顔を作る。

「ありがとうございます。」


「なんですか。師匠あれは。なんか気持ち悪かったです。」

リンスさんが去ってから、デクは開口一番そういった。

「あぁ?俺のことリンスさんに言ったらどうなるかわかるよな。」

俺は、今までで一番魔力をこめて、魔法を発動させ、デクを脅す。

「わ、わかってるよー」

デクはまたぶるぶると震えながらうなずいた。

「さて、興がそがれた。薪割りをさっさと終えて、デクの魔法の練習をするぞ。」

「おっ。待ってました。」

俺たちは、というか俺は大量の薪を作った。

デクが手伝うよりも俺が魔法でささっと木を伐り、薪を作る方が何倍も速かった。


その後、デクの魔法の練習に付きあう。

デクはあまり魔法の才能が内容でなかなか上達しない。

しばらく練習した後、朝ごはんの時間となり、俺とデクはそれぞれ別々に屋敷に戻った。


そんな感じで、俺はデクと周りの目を盗んでは魔法の訓練と実験をした。

現在使用可能な魔法は、以下の6つである。


【水魔法】

水を操る魔法。現在は、血魔法をメインで使用しているため、ほとんど使用していない。


【血魔法】

血液を操る魔法。血を直接魔法で作成できない為、血を魔法で増やして使用する。

血を欠損部位に変換することにより、回復魔法としても使用可能。


【魔力駆動】

魔力で体を動かす魔法。

同時に、魔法で身体能力も強化することで、通常ではありえない身体能力を得ることが出来る。


【思念魔法】

自分の思念を対象に送る。送る内容は、言葉でも映像でも可能。

相手の正確な場所がわかれば、直接目視の必要もない。


【言語魔法】

言葉に魔力をこめ、言葉のもつ力を強める。

言葉により、相手の魂を揺さぶる。


【偽装魔法】

魔法により、相手の知覚を操作し、情報を偽装する。


なかなか風変わりな魔法ばかりそろったが、そこそこ満足している。

満足しているが、俺はひたすらに魔法の訓練を続けた。



そして、デクはしばらくして、鉱山奴隷として引き取られていった。



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