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共闘 ②

一番最初に動いたのは、マリーだった。

 マリーは目にもとまらぬ速さで、グーデルスネックに突進すると剣に青白い光をまとわせて、斬りかかった。しかし、その剣は今までの戦いとは違い、皮膚を浅く切っただけで止まる。

 すぐさま、グーデルスネックはマリーを尻尾で打ち払った。グーデルスネックの尻尾には、鋭そうな刃がついていた。


姿勢を大きく崩しながらも、なんとかマリーはその刃を剣でガードする。しかし、人間と大蛇の体格差は果てしなく大きい。巨大な尻尾の一撃に大きく後方に吹き飛ばされた。

 次に、バーストが魔法を完成させ、グーデルスネックへと放った。どうやらマリーが斬りかかったときから詠唱を始めていたようだ。

 巨大な炎の龍がグーデルスネックへと迫る。防御魔法の練習の時に、俺を殺しかけた魔法だ。俺はその龍がグーデルスネックにぶつかるのを視界に入れつつ、周りのグースネックを攻撃していった。水を弾丸にして打ち出す水魔法と拷問魔法を併用しながら次々に邪魔な魔物を狩っていく。

マリーの魔法が効かなかったのだ。俺の魔法はグーデルスネックに届くことはないだろう。ならば、少しでも二人に貢献するために、邪魔者は排除しておこう。そう思ったのだ。

 

 炎の龍がグーデルスネックにぶつかる寸前だった。泥がグーデルスネックを厚く囲った。そこに炎の龍が激突する。

その瞬間、ものすごい熱気と水蒸気があたりをおおった。

 「防御魔法?」

 バーストが驚愕の声を上げる。


 水蒸気が晴れて、少しずつ視界が明らかになっていく。そこには無傷のグーデルスネックがおり、こちらのほうに泥が固まった礫を大量に打ち出そうとしているところだった。

 そこに、マリーが再度斬りかかる。

 今度は少し離れたところから、強烈な斬撃を飛ばした。斬撃は、まばゆいばかりの光を帯びながらグーデルスネックへと迫る。しかし、その斬撃をグーデルスネックは尾に付いた刃で迎え撃った。巨体なのにすごい速度だ。斬撃はいとも簡単に尻尾の刃に打ち消された。

マリーは斬撃が飛ぶすぐ後ろを走っており、地面を大きく蹴りあげて飛び上がり、斬撃とは別の角度からグーデルスネックの首を狙う。鋭い剣撃だが、グーデルスネックはそれを牙で受け止めた。

マリーの剣が大きく弾かれる。グーデルスネックの牙も大きくヒビが入った。痛みがあったのだろう。大きく顔を背けていた。


先に体制を立て直したのはマリーだった。

マリーは、空中でくるりと一回転し、見事に着地すると再びグーデルスネックの首目掛けてジャンプし、先程と同じように首を狙った。しかし、その攻撃はグーデルスネックの尻尾の刃に止められた。


グーデルスネックの刃とマリーの剣は一瞬拮抗したが、すぐにマリーが押され、再び後方に吹き飛ばされる。さっきよりも勢いが強い。マリーは、何度も地面に叩きつけられ、最後にはバシャンと沼に落ちた。



マリーの落ちた沼に、周囲にいたグースネックが殺到する。5、6匹がマリーを追って沼へと飛び込んでいった。

これはまずいかもしれない。冷や汗が出る。マリーの剣もバーストの炎もグーデルスネックに及んでいない。

「俺は今魔力充電中だ。坊主。少しでいい、グーデルスネックを頼む。」

バーストがビビる俺に向けて叫んだ。その瞬間に展開されていた泥の礫が大量に俺とバーストへ襲いかかった。

数は多いが、幸い威力は大したことはない。グーデルスネックに関して言えば、その巨体から繰り出される打撃や尻尾の刃による斬撃のほうが脅威だ。


その攻撃により少し我に帰る。

大丈夫だ。物理的な攻撃では滅多なことで俺は死なない。まずは、拷問魔法で動きを止めて、水魔法で攻撃する。

やることはかわらない。

魔法に対する防御は防御魔法に任せることにして、攻撃の方に意識を集中させることにした。


「うぉぉぉおおおおおおお!」

言語魔法を込めて雄叫びを上げる。それと同時に思念を飛ばし、拷問魔法をグーデルスネックに叩き込んだ。

魔法が上手く発動する。恐怖が優しくグーデルスネックを包み込む。それが手に取るようにわかった。 ビクッとグーデルスネックが震える。

隙とも言えぬほどだが、すかさず水魔法を弾丸のように放った。


俺が放った水の弾丸が、グーデルスネックの防御魔法を貫き、巨体に数か所の穴をあけた。

 「シーーー」

 グーデルスネックは、嫌がるように首を振った。

ダメージは与えられたが、いかんせん相手がでかすぎる。小さい水の弾丸で数か所穴をあけたところで、倒すには程遠い。

 グーデルスネックが俺をギッと睨み付けた。


俺に狙いを定めたのだろう。大きな口を開けて、牙をむき出しにし迫ってくる。気づけば、避けようもないほどまで近づいていた。

 噛まれる。

 そう思った瞬間、防御魔法が発動し、牙が目の前で水の膜に阻まれた。それでもグーデルスネックは、そのまま俺を噛み殺そうと力を込めてくる。俺のからだが、地面から引き離され、防御魔法の水ごとグーデルスネックにくわえられた。防御魔法がなければ、確実に死んでいた。折れそうになる心を必死に鼓舞し、ひたすらに防御魔法に集中する。


ただ強く、もっと強く。


しかし、俺を覆う水をどんどんグーデルスネックの牙が貫いてきている。牙だけでも俺の体の数倍は大きい。

 このままじゃ、まずい。噛まれたら終わりだ。


 そう思った瞬間、グーデルスネックの横合いから、真っ青に燃える炎の塊が数十個激突する。

 バーストの魔法だろう。見事に、泥の防御魔法を消し去り、グーデルスネックの白い体を黒く焼いていた。しかし、グーデルスネックは小さく「しー」と鳴いただけで止まらない。俺の防御魔法に引き続き牙を突き立ててくる。焼いていたといっても身体の5分の1ほどでしかないのだから仕方がない。


 「おい坊主。さっきの動きを止める魔法を使えるか?どうやらあれを使えば、グーデルスネックの防御魔法はかなり弱くなるみたいだ。どうだ?」

『できます。』

バーストの叫び声に、思念魔法で答えて、俺は再び拷問魔法を発動させた。俺自身は水の膜のなかにいるがゆえ、言語魔法が届かないのが心残りだ。


グーデルスネックが恐怖に、口を開いた。俺はそのまま、地面に落ちていく。


それに合わせてグーデルスネックに炎の壁が「ドン!」と激突し、そのままグーデルスネックを押し退ける。その壁はグーデルスネックよりも大きく、いとも簡単にグーデルスネックを俺から引き離し、グーデルスネックを押していく。グーデルスネックは、そのまま数メートル壁に押されて、後退していった。


壁が接していたグーデルスネックの皮膚は熱でどろどろに溶けており、苦しそうに「シーシー」鳴いている。

「聖剣技 光剣‼」

上空からそう声が聞こえたかと思った瞬間。あたりが真っ白い光に包まれた。まともに光が目に入り、咄嗟に目をつぶる。

「シィィィーーーーーーーーーーー」


グーデルスネックが今までにないほど大きな声で鳴いた。眩しさに目を細目ながら見てみると、マリーが眩い光を放つ剣でグーデルスネックを深々と斬りつけていた。


しかし、グーデルスネックの体を切断するには至らない。

マリーは次の一撃を入れようとするが、そうさせまいとグーデルスネックは全身を鞭のようにしならせて暴れ始めた。


全長50メートルはある大蛇がしっちゃかめっちゃか暴れまわるのだ。当たればただではすまない。マリーは地を転げ回るようにして、後退してきた。

俺とバーストも急いでその場から離れてグーデルスネックから距離をとった。グーデルスネックは、近くに俺たちがいないにも関わらず、その場で暴れ続けている。


「敵さんやけっぱちだな。」

バーストが悠長にそんな感想を漏らした。周りにいたグースネックたちはいつの間にかマリーに全て斬り殺されているようだ。きっと、沼に落とされたあとにやったのだろう。


「そうですね。」「でもまぁ、倒せそうだ。」

「はい。あと一回の攻撃でいけそうですね。」

二人は悠長に話はじめる。随分と余裕だ。

そういえば、マリーは沼に落ちたくせに全く服が汚れていなかった。今も綺麗な服のまま、グーデルスネックの暴走を眺めている。


「んじゃあ、最初に話し合った通りに、坊主が動きを止めて、マリー様が斬りつけ、俺が遠距離から焼きつくそう。」

「かしこまりました。では、まずはサックから行けますか?」


本当になんだ?二人の余裕は?

結構ヤバい魔物だと思うのだが、二人は何でもないというように話している。俺はさっき噛み殺されそうになったときから動悸が止んでいない。


だが、しかし、やるしかない!


「はい!行きます。」

さぁ、正念場だ。俺三度目の拷問魔法をグーデルスネックに叩き込む。今度は明確に、聖剣で切り刻まれ、炎で焼かれる映像を強く送り込んだ。痛みの経験がさらに恐怖を増幅させるだろう。

俺の魔法を受け、グーデルスネックの動きがピタッと止まる。その隙をマリーもバーストも見逃さない。

「聖剣技 聖撃!」

まずは、マリーの剣から放たれた飛ぶ斬撃が、グーデルスネックを斬る。しかも正確にさっき斬ったところに当てている。

グーデルスネックの肉が大きく抉れる。

「しぃーー」

「炎よ。怒り猛る炎よ。その怒りは龍を体現し、空を、地を、海を焼く業火となる。」

弱々しく鳴くグーデルスネックに、今度はバーストの炎の龍が襲いかかった。


大きい…………

バーストの放った炎龍は昨日よりも、また、さっきよりも2倍は大きかった。そいつがグーデルスネックの頭に噛みつき、そして全身を絡み付ける。すると、グーデルスネックの巨体がゴーっと音をたてて燃え始めた。

グーデルスネックは悶え苦しみながら、沼の方へ逃げようとする。しかし、それをマリーが許さない。

マリーは全身に強い光を纏わせながら、燃え盛るグーデルスネックを剣で打ち付け、吹き飛ばした。


そう吹き飛ばしたのだ。

大蛇が大きく、また勢いよく宙を飛ぶ。


どうやったらあんな大蛇を殴り飛ばせるのだろうか?

本当に規格外過ぎる。


 グーデルスネックは、バッシャンとぬかるんだ地面にぶつかった。あまりの質量に、グーデルスネックの身体が地面に接する際に大きな地鳴りが起こる。


そんな重量の物体を人間が、しかも年端も行かぬ少女が弾き飛ばしたというのだ。目の前で見ていなければ、到底信じられない光景だった。


 グーデルスネックは、100mは吹き飛び、その後身体にまとわりつく炎に焼かれて灰へと変わっていった。


それを静かに見送り、ため息をつく。

しばらく戦闘終了の余韻に浸ったあと、バーストはさて、帰るかとパンっと手を叩いた。

「そうですね。帰りましょう。」

マリーも特に異論なくそれにしたがった。とうぜん、俺にも異論はない。しかし、死闘を終えたにしてはやけにあっさりしている気もする。


俺たちは来た道を無言で引き返した。行きに鬱陶しいほど喋りかけてきたマリーも何故か無言だった。


幸いに帰り道では、何体かの魔物と戦いはしたが、大きなトラブルはなかった。行き道よりも遥かに早くドル街道に戻る。


帰ってきた。

石畳の街道を目にしただけでほっと息が漏れる。毎回だが、死ぬかと思った。俺がそう思っていると、前を歩いていた バーストも「死ぬかと思ったぁ」と呟き、その場に座り込んだ。

「そうですね。流石に駄目かと思いましたよ。」

マリーも座りこそしなかったものの、大きく脱力しため息をつく。


なんだ?二人とも?急にどうしたというのだろうか?

二人は終始何でもないと言う顔をしていたはずだ。

「あぁ、サックは冒険者の心得なんて知りませんよね?」

「そうか!坊主は、魔法について全然知らなかったんだな。」

俺がよっぽど不思議そうな顔をしていたのだろう。二人はなぜ、余裕そうに振る舞っていたのか、なぜ帰りは無言だったのかを説明してくれた。


要約すればこうだ。

魔法とは、つまり自分の自信や自負に応じて威力が変わる。

つまり、戦闘中に少しでも勝てないと思ってしまった瞬間に、もうその戦闘では絶対に勝てなくなる。

だから義勇兵や冒険者はどんなに死にかけでも余裕だ、まだ負けないと思い込み、それを態度に示さなければならない。もし恐怖が態度に出てしまえば、敵に自信をつけさせて、敵の魔法の威力をあげてしまうことに繋がってしまう。故に戦闘中は弱味を見せないというのが鉄則らしい。


また、帰りは二人とも無事生き残った安堵に心を緩めてしまいそうだった故に、それを圧し殺す為無言を貫いたとのことだった。それは安全な場所に来た瞬間にへたりこむバーストを見ていればよくわかった。


「それにしても今回は坊主のおかげだったな。」

言いながら、バーストはよいしょと体を起こした。

「そうですね。あの動きを止める魔法があったからこそ勝てました。」

マリーもそれに合わせるかのように背筋をただした。そして、短く「行きましょうか」「行くか」と言ってマハトリオに向けて歩き始める。俺もそれに付き添いながら、謙遜することにした。

俺は健気で無害な子供の奴隷だ。可愛そうな境遇に、自信を持てるはずもないのだ。


「いえ、ぼ、僕なんて、大したことはしてないです。だって、全然ダメージを与えられませんでした。」

「いや、あの魔法は凄い。もっと自信を持つべきだ。」「そうですね。あの魔法のおかげで勝てたと言っても過言ではないでしょう。」

俺の発言を二人はきっぱりと否定する。その上で如何に俺の拷問魔法が有益かを教えてくれた。


当然だが、拷問魔法なんて、厳めしい名前は二人には言っていない。ただ、相手の脳裏に恐怖を送り、思考を停止させることができるガン=ミラー家の秘術だと伝えていた。

基本的に魔法の詮索は法度らしく、二人はそれ以上は追及してこなかった。


拷問魔法の優秀な点だが、敵の動きを止められる以外に副次的な効果として2つあるらしい。

1つ目は、目に見えないこと。

思念魔法と言語魔法で直接脳に情報を送るのだから、目に見えなくて当然だが、それがかなり強みになっているらしい。マリーとバーストにとってはどういう原理で作用するのかもわからない魔法だったそうだ。何が効果を発揮して恐怖を与えるかがわからないと言うことはつまり防ぎようがないということになる。

防ぐ手段がないなど普通では考えられないと絶賛された。


2つ目は、相手に恐怖心を与えれること。

恐怖で相手の動きを止めるのだから、これは当然と言えば当然であるが、相手に恐怖心を与えるというのは俺が思っているよりも効果があるらしい。魔法の威力は、自信や自己効力感に大きく左右される。相手に恐怖を与えるということは、つまり相手の自信を奪うことに繋がる。相手は、拷問魔法により恐怖し、自信を無くす。そうすれば、魔法の威力は当然に下がる。

しかも、恐怖している相手を見ることで自分は自信を持つことに繋げることができる。怯えている相手に対し、倒せる、勝てると思うのは思った以上に容易だ。

相手に勝てそうな要素を常に探して、自信とし、魔法の糧とする。ある種自己暗示にも似た根拠のない自負で、余裕を漂わせて戦う。それが義勇兵(冒険者)とのことだった。


そんなふうに二人が、俺の魔法を褒めちぎったり、義勇兵としてのあり方を語ったりしているのを聞いているうちにいつの間にかマハトリオに着いていた。


日は既に傾きかけ、夕日に何処までも続く石の壁が照らされていた。

「んじゃあ、まずは斡旋所で換金するか!」

門で義勇兵登録証を見せて、軽く門番とやり取りをし、街に入ってからバーストはそう言った。

「あのもう遅いので清算は出来れば明日にしていただきたいのです。もし良ければ、明日も一緒に狩りに行きませんか?」

マリーは非常に申し訳なさそうに提案をした。俺としては自分一人では勝てない敵にも勝てるし、色々なことを教えてくれるのでとてもありがたい提案だった。

「あの、ぼ、ぼくはこれからも一緒に狩りに行けたら、嬉しいです。」

だからそう返事をした。

しかし、バーストは困った顔をしていた。

何度も頭をかいて、「でもなぁ」とか「やっぱりなぁ」とか明らかに迷っている様子だった。

「サック、ありがとうございます。わたくしはこれから1月はマハトリオに滞在する予定です。なので、是非是非お願いしますね。」

1ヶ月か……

思い浮かんだのは北條のことだ。マハトリオを落とす計画。奴はいつ頃までに実行するつもりなのだろうか?

出来れば二人は死んでほしくないし、敵対もしたくない。せめてマリーだけでも立ち去ったあとだといいのだがと思う。


「すまん。少し考えさせてくれ。」

さんざん悩んだ挙げ句に、バーストはそう言って頭を下げた。

「正直、一人での狩りに限界は感じていた。これもいい機会だ。俺も他人と共闘することに慣れるべきだとは思う。

実際、二人と今日やってみてやりやすかったし、あんな魔物も倒すことができた。いいトリオになれるとも思うんだ。だがな、だが。俺が敬愛するファイライは紅蓮士は一人での戦闘が望ましいと説いているんだ。


俺は今までの自分の矜持を簡単には捨てられない。だが、組んだ方がいいってのもわかる。だから、少し悩ませてくれ。」


そんなになんとかって言う魔術師が好きなのか?

自分のやりたいようにやればいいだろ?

だいたい、お前とそのファイライとか言うやつでは実力が違うのではないか?

めんどくさい言い分に、否定的な言葉ばかりが去来する。

俺が全く共感できずにいる一方で、マリーはバーストの手をとって「わかりますよ。その気持ち」と共感を示した。

「憧れの方と同じ思考でいたい。

同調し、模倣することで少しでも近付きたい。本当は思考で近付くよりも実力で近づかなきゃいけないってのもわかってはいる。わかってはいるけど、現実はあまりにも遠い。ならば、格好だけ、その思考だけ、理念だけでもと考えてしまうその気持ち。わたくしには痛いほどわかります。」

急に饒舌となったマリーの熱量に押されて、バーストは小さく「お、おう」と言う返事しかできていなかった。

「でも、だからこそわたくしはバーストさん、あなたと組んでみたいのです。わたくしも勇者の摸倣はしばらくお休みにすることにしました。あなたもファイライ様の摸倣はお休みされて、今は実直に力をつけることに専念してはいかがでしょうか?

まずは、1月わたくしたちと共に」


マリーはバーストの手を両手でぎゅっと握りしめ上目遣いに見ながら、そう熱弁した。バーストは、マリーから目を背けて、狼狽していた。


これは落ちたな。

その光景を俺はのんびりと眺めていた。俺にはとても理解も共感もできない話だった。


よくわからない精神論よりも、目的に近づく方法が目の前にあれば選択すべきだ。


イデオロギー、思想、信条、信念、倫理、宗教感。

それらのものが邪魔をして目的達成を阻むと言うのならば、それらは全て唾棄すべきものだ。尊厳は所詮、身の内にしかない。人には見えず、自分にも見えない。

自分のなかから突き上げてくる衝動にも似た目的のためであるのであれば、それら全ては無価値に等しいものとなる。


「わかった!とりあえず、1月だ。1月はお前らに付き合ってやる。」

バーストは無駄に大きな声を張り上げた。俺たちはそのあと、明日も同じくらいにいつもの食堂で会うことを約束して、解散した。


俺はダッロに会うために義勇兵斡旋所にむかった。







 


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