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外道は外道のまま世界を救う  作者: カタヌシ
乳幼児期 奴隷編
2/54

魔法の練習

 目が覚める。俺は、オギャー、オギャーと泣いていた。

 腹が減ったからだ。それに、寒い。冷たい。とにかく不快だった。

 それに、腹のそこのほうから何かメラメラと燃えていて、体全身に熱がめぐる奇妙な感覚がある。

 一番奇妙な感覚の源泉である腹を見ようとするが、首が動かない。

 体もわずかしか動かない。どうやら、俺は赤ん坊らしいということに気が付いた。

 しかも俺は外にいる。

 なにかかごのようなものに入れられて、なにかの建物の前でワンワンとわめいていた。

 ちっ、いきなり捨て子かよ。さすがは、穢れた魂だ。

 内心自嘲気味に笑うが、俺は泣き止むことをやめれず笑えない。

 なんだかだんだんと疲れてきた。

 眠い。なんだよ。30年もたたないうちに死ぬのかよ。

 そう思ったが、抗えない眠けに襲われて俺はゆっくりと目を閉じた。


 次に目を覚ましたとき、幸いに家の中にいるようだった。

 いつの間にかどうやらおなかも満たされているようだ。

 首に違和感があって、触ってみた。首輪のようなものが付けられているようだ。

 寝ているところも硬く、冷たい。

 出来るかぎり見回してみると、ぼろぼろの薄汚い布の上に寝かされているのがわかった。

 俺だけではない。何人もの赤ん坊がいる。何人か泣いていて、非常にうるさい。

 ここは孤児院かどこかだろう。

 さて、眠気はそこまでない。いろいろ試していくか。

 幸いに、思考はクリアだ。体の方は、生まれ変わりのせいで、赤子になってしまい身体能力に大いに制限があるようだが、頭の方は死ぬ前の水準は保っていそうだ。

 ってことは、俺の頭の回転は、赤子並だったってことかよ。むかつくな。


 さて、何からするか。まずは、最後の方にあの神とやらがいったことを試してみるか。

 魔法だ。

 あの神の口ぶりから言えば、この世界には魔法が存在するらしい。

 というのであれば、この自分を包む奇妙な熱のような感覚は魔力なのだろう。

 体は動かせないが、とりあえず時間はある。

 とりあえず色々やってみるか。

 俺は、腹の真ん中の方で燃えて全身にめぐる何かをもっと強く意識してみた。

 不思議な感覚だ。

 まるで、血液が全身にめぐっているかのように、別の何か温かい熱のようなものが全身をめぐっている。意識してみたが、それを操ることはできなかった。

 例えば、めぐる速度を速くしてみようとか、逆に遅くしてみようとか、強くしてみようとか色々試したが、血液の循環を自律的に操作できないのと同じで、体内を巡る何かは操作できなかった。

 

 こういうのは、イメージが大切なんだったよな。

 俺は、生前に読んだ漫画やライトノベルを思い出す。仕事もせずぷらぷらしていた時に、時間ばかりあって、そういうのを暇つぶしがてら古本屋で立ち読みしたっけ。

 さえない主人公が、環境が変わってヒーローになって活躍していく様を自分に重ねながら読んでいた。

 そういう知識ならば、豊潤にある。


 イメージか。まぁ、イメージしやすいのからいくか。

 まず思い浮かべたのは、ボイラーだ。腹の中心で燃えているものをもっと燃やす。

 燃やして温度を上げるイメージをした。上手く温度が上がらない。しかし、疲労を感じる。

 感覚で言えば、上手く燃料が燃えていない感じだ。いや、燃料が足りないのだ。

 火に対して何も薪をくべずに、燃え上がれと空気ばかりを送り続けているような感じだ。俺は、全身から力を搾り出し、それを燃料として燃やすイメージをしてみた。

 結論としては全く上手くいかなかった。そして、俺は疲れて意識を失った。


 俺が転生したと意識できてから1週間がたった。この1週間でいろいろとわかったことがある。

 まず、どうやら俺は奴隷らしい。そして、俺が今いる場所はおそらく赤ん坊の奴隷を集め、商品できる年齢まで育てる施設のようだ。

 観察したかぎりでは、ここには0歳~7歳までの子どもが100人ばかり暮らしている。

 世話をしてくれるのは、3人の大人の奴隷と年長の奴隷たちだ。

 いまだに持ち主はわからぬが、どうやら読み書きなどは最低限教えて貰えるようだった。

 あとは、適正や顧客の要望や奴隷の才能によって特別授業が組まれるようだ。

 特別教育は、最速でも2~3歳から始まるようで俺は十把一絡げに寝かされ、適当にえさを食わされ、適当に下の世話をされ、適当にあやされ、一括で話しかけられて、絵本を読まれている。

 

 しかし、この一括での絵本を読むというのはありがたい話だった。

 頭に世話係の大人の奴隷の声が響くのだ。

 言葉がまるで違ったから、なんて言っているのかはわからなかったが、どうやら魔法で、同じように寝かされている赤ん坊全員に話しかけているようだった。

 

 それのおかげで俺は魔法というものを感じることが出来た。

 どうやら思念に俺が感じている温かい何か 、おそらくこれが魔力なのだろう、をこめて、対象に飛ばしているようだった。

 ものすごくありきたりだが、俺は魔法とは、自分のうちで燃え上がる魔力を対象にこめることで、特異な自称を起こす力であると定義していた。

 そして、この一週間の修行で俺は少量の水を生み出すことに成功していた。

 理屈は簡単だった。自分の魔力を空気中の水分にこめて、量を増やしたのである。

 生み出せたのは、ほんの数敵だった。

 

 まぁ、もっと魔力をこめれば、もっと多くの水を生み出せるとは思うがやめておいた。

 そんなことをして目立っても言い事はないだろう。

 火は生み出そうとしたが、生み出せなかった。


 今俺に出来るのは、実際にあるものに対して魔力を使い事象を変化させることのみだ。

 魔力で何かを生み出すことはできない。

 ちなみに、腹のうちに燃える魔力の量を増やし、全身にめぐらす量を増やすことも試して入るが未だ出来てはいない。

 しかし、こういったことをやっているうちに燃える魔力の量が増えている感覚はあった。


 それから3ヶ月がたった。

 俺はだいたい魔法についてつかめていた。言葉も大分とわかるようになった。

 魔法を使う際は、自分の中にあるエネルギーを体内で燃やし、それによって魔力を全身に行き渡す。その全身の魔力を用いて魔法を発動させる、という手順が必要らしい。

 体内で燃やすのに使うエネルギーは、前世では存在してなかった物のようで、何かを食べたり、何かを飲んだりしたら回復するという類いのものではなかった。時間経過と共に緩やかに回復した。


 俺はこの最初のエネルギーとなるものを、プレ魔力(PM)と呼び、そのエネルギーの量をPMPと呼んだ。

 逆に全身を巡る魔力をそのまま魔力と呼び、そのエネルギー量をMPと呼んだ。

 PMより魔力は常時作られており、魔力は何もせずとも全身に行き渡った。

 魔力の方は、常に一定量空気中に霧散し、作られる魔力と自然代謝する魔力はほぼ一定を保っていた。

 しかし、それは何も意識しない場合だけだ。

 魔力を魔法で消費すれば、勝手に体がいつもより多くのPMを用い、魔力をつくり補充した。

 さらに、PMを一気に燃やし、過剰に行き渡らせることにより通常よりも大量の魔力を作り出すことも可能だった。はじめにやろうとしていたことが、1カ月ほどの練習でやっと成功するようになっていた。

 それにより、さまざまな恩恵を得ることができた。

 

 まず、身体能力の強化である。

 魔力を強く体にめぐらせると身体能力が爆発的に跳ね上がった。

 筋肉とは別に、魔力でも体を動かしているというような感覚だ。

 前世の記憶だが、赤ちゃんは多くが3~4ヵ月で首がすわり、7~8ヵ月でハイハイできるようになったと思う。俺は、まだ生まれて3ヵ月でハイハイできるようになっていた。

 おそらく、本気を出せば歩くことも可能であろう。

 それも、前世の栄養状態のいい赤ちゃんの話で、この世界の赤ちゃんはもっと発育がわるい。

 とくに、こんな奴隷屋敷にいるようなものが優良に発育できるわけがなかった。

 そう考えると魔力をめぐらせた俺の身体能力は常識外であるといっても過言ではないだろう。


 次の恩恵としては、使用する魔法の威力や効果が高くなった。

 込めれる魔力の量が増えたのだ。まぁ、当然と言えば当然である。

 しかし弊害もあった魔力をガンガン増やすとPMPは簡単に尽きた。

 最初は10分も持たなかった。

 PMPが切れると異常なほど寒く感じ、強烈な倦怠感と吐き気に襲われて、気を失った。

 しかし、寝ればどうやらPMPは回復するようで、俺は毎日PMPを使いきるまで魔法の練習をした。

 強くなる。俺はそう決めていた。

 せっかくの第二の人生だ。楽しませてもらう。

 このまま、奴隷などで一生を終えない。成り上がってやる。そのためにはまずは力が必要だ。

 PMは、使えば使うほど増えた。

 それにともない何もしない状態のMPも意識的に増やせるMPも増えた。


 それで、来る日も来る日も魔法の研究と練習に明け暮れた。

 おかげで、全力でPMを燃やして魔力に変えても一時間ほどはPMPが持つようになった。

 水も空気中の水分を増やすのではなく、魔力を直接変換して生み出せるようになった。

 俺の水魔法でできるのは、水の塊を生み出すこと、その水を飛ばすこと、水の塊を思い通りに操作すること、水の塊の形状を変えることくらいだ。

 量については、あまり大量の水を生み出すと魔法を使っていることがばれたり、不審に思われたりする懸念があるためどれほどの量を生み出せるかはわからない。

 喉が渇いたときに、コップいっぱいくらいの水を作り飲み干したが、感覚ではまだまだいけそうだった。

 今は、小さな水滴を速く飛ばしたり、水滴を宙に漂わせたり、水滴の形を綺麗な円形に変えたりといった練習をしていた。


 本来ならば、直接力になる火を生み出したかったが、火は何度やっても生み出すことは出来なかった。

 今は、もっぱら魔力を生み出す訓練と水を操る訓練にせいをだしていた。


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