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外道は外道のまま世界を救う  作者: カタヌシ
乳幼児期 奴隷編
14/54

行動開始 はじめての人殺し

リクリエットは気を失って、うつぶせに倒れていた。

状態を起こして、仰向けに寝かせた。

最後に青い熊の魔物に切られた袈裟懸けの部分から結構な出血があった。背中の蜂が攻撃した傷跡よりも重症に見える。大きな外傷はそれだけに見えるが、おそらく魔物の体当たりを食らったときとかに、体の内部にもダメージを受けているのだろう。


大丈夫か。生きているのか。

ゆすってみるが反応はない。

心配になり、俺は、リクリエットの頬にそっと手を触れた。

仄かに温かい感覚が手に伝わってくる。気は失っているようだが、なんとかリクリエットは生きているようだ。


よかった。

とりあえず、間に合った。だが、出血がひどい。なんとか治療しなければいけないな。

ここで、疑問に思うのが俺の回復魔法が、他人にも使えるかということだ。

というか、使えなければここでリクリエットは死んでしまう。

無理でも何でもやるしかない。


使う血は、本人のものが良いとして、鎧が邪魔すぎる。

リクリエットは全身に真っ赤な鎧を身にまとっていた。

ためしに、血魔法で傷つけようとしてみたが、結構魔力をこめても傷すら付けれなかった。

「ちぃっ」

思わず舌打ちが出る。なんだよ。俺の魔法めちゃめちゃ弱いな。

それともリクリエットが強くて、装備がすごいのかもしれないが。

いや、だが蜂の魔物に鎧、破られていただろ。

って考えるのであれば、俺が弱いと考えるのが自然か。くそっ。もっと強くなりたい。


って、そんな事よりもだ。

早くリクリエットを何とかしなければ出血で死にそうだ。

俺は必死にリクリエットの鎧を剥く。めちゃめちゃ苦労したが、なんとか鎧を脱がすことに成功した。

まず、鎧の外し方がわからなかった。一口に鎧といっても全身つながっているつなぎのような構造ではなく、色々な部位に別れていた。それをばらばらにしていくのに非常に骨が折れた。

そして、もう一つは理性との戦いだ。


だって、そうだろう。

西洋人風の美人が、無防備で気を失っており、その身に着けているものを一つずつ脱がしていっているのだ。男として、何も感じないわけがないだろう。特にだ。胸のプレートを外したときなんて危なかった。

押さえつけられていた胸が、豊満に弾けたのだ。おそらく、2歳の体でなければ襲い掛かっていただろう。


とにかくだ。治療しないと……

特に手を出すことなく、なるべく早く鎧を脱がせた後は、早速回復魔法の準備に取り掛かった。

リクリエットは真っ赤な鎧の下に、体のラインがくっきりとわかるような亜麻のような素材の服を着ていた。背中と体の正面に深々と傷があり、そこから血が流れてる。

その血を使うことにした。

まずは、その血を増やせるかどうか試してみた。

血を右手で掬って、魔法を使って増やしてみる。見事に、自分の血と寸分違わず増やすことが出来た。

別に誰の血を使おうが、血は血で何も変わらないようだ。

ならば、回復魔法も使えるだろう。


まずは、背中の傷から治すことにした。リクリエットをうつぶせにし、背中の傷に魔法で増やした血をドボドボとかけた。かけられた血が、リクリエットの傷口から体に入って、新たなる細胞になり、欠損部位と入れ替わる。そういったイメージで、肉体を回復させる。傷がどんどんと塞がっていった。

うまくいった。

リクリエットの背中の傷はいとも簡単に治った。


いける。これだ。

これならば、リクリエットも治すことができる。

俺は、意気揚々とリクリエットの血で大量の血の針を生成した。これで、リクリエットの全身を貫き、瞬時に回復を図る。

100を越える血の針をリクリエットの上に精緻に並べる。

やれる。

自分でなんども、なんどもやっていることだ。

イメージは固まっている。

魔力も限界には近いが何とか足りる。

リクリエットを治して、さっさとこの場から消える。償えたわけではないだろうが、俺は、それで自分を許せるだろう。

リクリエットが許す許さないはどうでもいい。

俺は、俺が気持ちよくいきられれば、それでいいんだ。

さぁ、勝負だ!かならず助けてやる。

そう決意して、血の針でリクリエットの体を突き破った。

「あっ、うっ、あぁぁぁ」

針で刺した瞬間、リクリエットはそんな弱々しい声でうめき、ピクッ、ピクッと、体を痙攣させたのち動かなくなった。

俺は、気にせず治療を続けた。一気に、リクリエットの体から血が吹き出て、その後傷がみるみるうちに治っていった。

よかった。

魔法は上手く発動したようだ。

だが、おかしい。


リクリエットは呼吸していなかった。


はぁ?なんでだ!

俺は、治療のペースをあげるためさらに血をリクリエットにかける。リクリエットの体が血に染まる。


傷は治ってきている。たしかに自分に魔法をかける時のように、一瞬で再生とはいかない。だが、着実にリクリエットの体はよくなっている。しかし、それとは対照的にリクリエットの顔からどんどんと精気がなくなっていく。


傷が完全に塞がる頃、リクリエットの心臓は完全に止まってしまっていた。治療は、完璧だったのに。体には、もはや傷ひとつないのに。助けれると思ったのに。


リクリエットは死んだ。俺が殺した。

針の痛みに耐えられなかったのか。針を刺した時の出血に耐えられなかったのか。そもそも間に合わなかったのか。

そんな事はわからない。


ただ、1つわかっているのは俺がリクリエットを殺したという事実だけだ。俺は、人を殺してしまったのだ。


胃からムカムカとしたものが上がってくる。

周囲は、血の臭いが充満していて、気持ち悪い。


俺は、その場でしこたま吐いた。胃液をぶちまけうずくまった。

意味がわからない涙がポロポロと流れる。

俺が、俺が、俺が……殺した


ただひたすらに頭が痛い。


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