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外道は外道のまま世界を救う  作者: カタヌシ
乳幼児期 奴隷編
13/54

行動開始 外道のやり方

俺は、攻撃をやめた。だってそうだろう。攻撃したところでダメージを与えられない。

ならば、いっそやめてしまえば良い。攻撃するのを他のことにまわしてしまえば良い。


俺は、防御することもやめた。だってそうだろう。防御したところで、大して意味がないほどに俺の防御力は薄く、魔物の攻撃力は強大だ。ならば、いっそ防御しなければ良い。そして、攻撃を受けた分は、再生してしまえば良い。


では、どうするのか?

言語魔法を使うのだ。


俺は、言葉に不気味さや気持ち悪さを強調する魔法をのせて、「ぐおおぉぉ」、「がおぉぉぉ」、「んがぁぁぁぁ」と怒鳴り散らした。言葉の意味なんて理解しない魔物に対して言葉に意味を込める意味などない。

ただ、俺に迫る青い熊の魔物に気持ち悪さと嫌悪感を与えられればいいと思った。魂で怯え、体が恐怖し、心が嫌悪するようイメージし、魔力をこめて、言語魔法を発動させる。


青い熊の魔物の歩みが止まった。明らかに魔法が効いているように見える。食い入るように俺を見つめる魔物の目からは、敵愾心が薄れ、かわりに忌避の心が感じられた。


俺は、さらに自身の気味悪さに拍車をかけための行動に出た。まず、自分で左腕を引きちぎった。右手で、左肘よりも少し上の部分をつかんで、無理やりに引っ張ったのだ。腕が、肩から見るも無残に引きちぎられた。魔法で強化しない十分に栄養を取っていない2歳児の腕は想像以上にもろく、そんなに力をいれずとも簡単に引きちぎれた。


確かに、痛い。

しかし、耐えられないほどではない。全身を針で貫くほうが、何倍も痛い。


血が、左腕から止めどなくあふれる。

その流れる血の量を魔力を使って、さらに増やす。

いっきに血が左腕から流れ出る。それを無視して、俺はニッタっと熊の魔物に向けて笑いかける。



そして、引きちぎった左手を口に加えて押さえて、さらに半分にちぎった。そうしてちぎれた半分を、魔物の方に向けて投げて渡した。

ゆっくり山なりに俺の腕は、青い熊の魔物に向け飛んでいった。それを青い熊の魔物は、それを大げさに動いてよけた。

よし。効いている。効いている。

さらにだ。俺は、もう半分の左腕をそのまま口の中に入れ、咀嚼した。

ガシュッ、ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ

わざとらしく音を大きな音を立てながら、自らの肉を食う。

はっきりいってまずい。鉄の味しかしないし、異様に生臭い。

はきそうになりながらもそれを我慢して、もう一口喰う。

「ガシュッ、ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ」

今度は、咀嚼音にも魔力をこめて、恐怖心をあおるよう魔法を発動させた。言語魔法としては、異種だと思うが容易に成功したようで、魔法が発動した感じがした。


「ふふふふふ、ははははははははは。」

つぎに俺は、わざとらしく大声で笑い声を上げた。

もちろんその笑い声にも魔力をこめ、言語魔法を発動させている。

楽しい気分ではない。むしろ最低、最悪な気分だ。

だが、笑った。

心のそこから楽しくて仕方がないかのように笑いながら、ゆっくりと熊の魔物に近づいていった。


どばどばと、血を垂れ流しながら、ニタニタと笑い、できるだけ瞬きをせず、目の瞳孔をカッと開きながら、俺は青い熊の魔物に近づいていく。

「ぐぉぉぉ」

残り2、3メートルほどの距離に近づくと、青い熊の魔物は弱弱しく鳴いて鋭い攻撃を仕掛けてきた。

俺は、その攻撃を一切回避行動を取らず、正面から受けた。

熊の爪が深く、俺を切り裂いた。

しかし、その傷は瞬時に再生し、何事もなかったように傷はなくなった。


俺は、大きく手を広げ、体を開いた。

さぁ、どこからでも攻撃して来い、というように。

しかし、熊の魔物は追撃せずに俺との距離を大きくとった。

取ったと思ったら、リクリエットにも放ったような巨大な水球をつくり上げ、それを俺にうちはなってきた。


ものすごいスピードの水弾が俺に襲い掛かる。

その攻撃も俺は、一切よけずに正面から食らう。

まぁ、水の魔法は速過ぎて、避けようとしてもどうせよけれなかっただろう。だからといって、急所とかははずせたかもしれない。しかし、俺にとってはそんなのはどうでもいい。

魔法を一身に全身で正面から受けた。


防御する代わりに、水の魔法が直撃する瞬間、俺は大量の血を無差別にばら撒いた。鮮血が飛び散り、青い熊の魔物の毛や体表が半分ほど赤く染まった。

それと同時に、俺はすさまじい衝撃で、吹き飛ばされる。

しかし、吹き飛ばされながら、左手から流れる血を体にかけて、瞬時に欠損部位を再生する。

地面に激突するころには、傷は完全に癒えた。

地面に衝突した衝撃で、骨や内臓等に多大なるダメージを受けたが、それも血の針で全身を貫いて瞬時に再生させた。


俺と青い熊の魔物の戦場は、俺の血によって赤黒く染まっていた。匂いも血のいやなにおいが充満して、かなり不快感がある。やっている張本人ですらかなり不快なのだ。

対峙する魔物の不愉快さは俺の比ではないであろう。


「ふふふふ、はははははははははは」

地面からさっと立ち上がり、そうやって笑い声を上げた。

「ぐ、ぐぐおぉぉ」

もはや青い熊の魔物の鳴き声も力がない。

怯えているのだ。

直感でわかった。

青い熊の魔物は未知なる俺の言動に心底恐怖しているように見えた。


動物すべてに共通する恐怖として、目新しい刺激に対する恐怖というものがある。つまり、まったく見たことがないものや知らないものを動物は恐れるのだ。俺のような奇妙な行動をするものが自然界にいるはずがない。きっと青い熊の魔物は俺を理解できてはいないだろう。理解できないことは、それだけで恐ろしいものだ。


さらに、血に対する嫌悪も魔物を怯えさせるのに一役かっているのであろう。俺は、血に対する嫌悪感は、生得的に獲得するものと、根源的に魂に刻まれている進化の過程で種が学習した先天的なものの両方があると思っている。

その考えが、魔物にも適応されるかだが、たとえ魔物であっても傷つけば血が流れる。そのことは、今までの戦いでもわかっている。傷つけば、痛みもあるのだろう。つまりは、血に対して嫌悪を抱く条件は十分にそろっているということだ。


だが、まぁそんな考察はあとだ。

今は、そんなことを深く考えている余裕はない。

とにかくだ。青い熊の魔物は俺に対し、恐怖や嫌悪感を抱いている。重要なのは、それだけだ。


その恐怖心をさらにあおる。

思念魔法を発動し、魔物に画像を数百枚見せる。俺が見せるのは、いくら攻撃されようと笑顔で全回復し、ニタニタと笑う俺の姿だ。その画像の解釈を誤認魔法を用いて、こちらで操作する。俺をどうやっても勝てない不死の人間であると認識させようとしたのだ。


魔物の知覚や認知過程など知るはずがないので、魔物相手に上手くいった自信は全くなかった。確かに、魔法が発動した感覚はあったが、それが効果あるかといわれれば甚だ疑問が残った。


しかし、できるかぎりのことはすべてやらねばならない。

とにかくなんでもやる。

俺は、さらに雄たけびを上げて、言語魔法を重ねがけした。


そして、一歩ずつゆっくりと青い熊の魔物に近づいていった。

すると、それにあわせて青い熊の魔物は、一歩ずつ後退した。

俺はこれを好機と、左手を血をつかってゆっくりと再生させていきながら、全速力で魔物に向かって走った。


青い熊の魔物は、俺が迫り来るのに後ずさりして、一目散に逃げていった。さっきまで、二足歩行で行動していたのに、四速歩行に切り替えて脱兎のごとく逃げた。


「うぉぉぉぉぉぉぉ」

俺は嬉しさのあまり大きな雄たけびを上げた。

やった。やった。助かった。追い返した。よかった。

一気に安堵感が襲い、疲労により気を失いそうになった。

しかし、意地で踏みとどまる。リクリエット……リクリエットの治療をしなければならない。

まだ、生きているよな。

俺は、急いでリクリエットに近づく。

そばにより、口に手を当ててみた。大丈夫。息はしている。なんとか生きていた。


さて、PMPはそろそろ限界に近くなってきたがまだ大丈夫だ。まだ、魔法は使える。

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