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外道は外道のまま世界を救う  作者: カタヌシ
乳幼児期 奴隷編
10/54

行動開始 外道の戦法

さて、行動開始だ。

この場をリクリエットにばれないように去り、リクリエットをこの場に貼り付けにせねばならない。

そのために使用するのは偽装魔法の上位特化バージョンの魔法だ。


その名も、隠蔽魔法という。

原理は、簡単だ。俺から発生するすべての情報に魔力を込めて、対象に俺を知覚させなくする。

俺に跳ね返った光を、目が拾い、脳が処理することで俺を見るのであれば、光に魔力を込めて脳が処理する段階で俺の存在を完全に抹消するよう魔法を発動させる。匂いも同じ、音も同じだ。

俺は、相手の五感から完全に姿を消す。

奴隷屋敷では、他の奴隷や世話役奴隷たちに対して何度も練習し、成功している魔法だ。

なかなか発動するのに集中力が必要で、かつ維持するのは極端に難しい。

だが、今は戦闘中ではない。

ならば、ゆっくりと魔力を練ってイメージすることが出来る。

いつでも魔法を発動できる。さてやるか。


まずは魔力で全身を覆いつくすようにイメージする。

次に、この全身を覆った魔力が、俺から発する情報に引っ付き、相手に届くことをイメージする。

最後に、その魔力が対象の知覚を阻害し、書き換えるようにイメージする。

大丈夫だ。上手く行っている。

あとは、魔法を発動するだけだ。


「うっ、なんだか。なんだか。急に苦しくなって、うっ……」

三文芝居だが、苦しむまねをする。当然、苦しむまねに説得力を増す為に、言語魔法も発動済みだ。

俺の言葉が、リクリエットの魂を揺さぶる。

「おい。おぬし、どうした急に。なにがあった。」

突然、苦しみだした俺にリクリエットは動揺する。言語魔法の効果が十全に効いている。

リクリエットは、俺の体を揺らして、呼びかける。

しかし、俺は演技を続け、そして突き放すようにリクリエットから距離をとって、隠蔽魔法を発動する。

その瞬間、リクリエットの五感より俺の存在が完全に消える。

リクリエットの困惑はピークに達していた。

「おい。どうした。どこにいったというのだ。なんだ。これは、おい。どこだ。」

その長い髪をゆさゆさと揺らしながら、リクリエットは俺を必死に探している。

それはそうだろう。目の前の人間が突然跡形もなく消えるのだ。

その驚きは、筆舌に尽くしがたいであろう。


しかし、俺にとってはそんなことはどうでもいい。俺は足早にその場を立ち去り、走り出す。

目的の奴をさがして、森中をさがしてやる。せいぜい、いなくなった俺を必死に探すが良い。

その間に俺はお前を殺す算段をつけてやる。


しばらく、森を奥に、奥にとすすんでいくと少し先に目的の奴はすぐに見つかった。

それは、熊のような姿をした魔物だった。

一見すれば、普通の熊にも見えなくもない。しかし、まずは大きさからして異なっていた。

その熊は、目測で全長3メートル以上にものぼり、爪には鋭利な鉈のような刃物がついていた。

目はなんと4つもあり、牙は上の犬歯が異様に発達し、下唇にささっている。

薄汚れており、ところどころ皮膚が破け、血がにじんでいるようにも見える。体表は、黒いが、所々そのせいで赤黒い箇所が目立つ。肉が腐ったような強烈なにおいが、ここまでにおってくる。


ちっ、気持ち悪すぎるだろ。魔物。

なんていうか、生物的に終わっている感じがした。

生きているのに、死んでいる。

死んでいるのに、生きている。

生理的に相容れない生き物であると直感で感じた。


これは予想よりも酷いな。魔物ってもっとクリーンなイメージだったぞ。くそが。

これでは、まるでゾンビじゃないか。


しかし、やらねばなるまい。


俺はばれないように、隠蔽魔法を熊の魔物にかけながら、近づく。

そして、思念魔法を発動し、魔物にある映像を見せた。俺はじっと魔物を観察する。

魔物はきょろきょろと周りを見渡したのち、「ぐおおぉぉぉん」とけたたましい叫び声をあげた。

どうやら上手く行ったようだ。

熊の魔物は、魔物を炎の魔法で次々に虐殺していき、最後には自分をも殺す赤い装備をした女の映像をみた。さて、そんな映像をみた熊の魔物は、一体どう動くのか。

しかも、誤認魔法で熊の魔物はそれを未来視の映像だと思いこませている。


なおも熊の魔物は、きょろきょろと周りを注意深く見回しながら、時折威嚇するかのように叫び声をあげた。


これは、上手く行ったか。ならば、次だ。

俺は、さらに熊の魔物に思念魔法を送る。今度は、今リクリエットがいる場所の画像だ。

今リクリエットがいる場所を写真のような感じで、一枚の絵にして熊の魔物に送った。

しかも、知覚できるか出来ないか微妙な秒数だけ、それを行う。

閾下刺激というものだ。

反応を示す最小限の刺激の強さを閾値といい、それ以下の刺激を閾下刺激という。

この閾下刺激を、当然認識することは出来ない。

例えば、人間の耳が拾える音の小ささには限界があり、その限界点が聴覚閾値である。

当然、その聴覚閾値より小さな音を人間はきくことは出来ない。し、普通はそんな認識できない刺激が人間に影響を与えることはない。

考えられていた。しかし、1950年代ごろだったか、人間が知覚できないほど、小さな刺激が人間の潜在意識に影響を与えるという閾下知覚(サブリミナル)効果が取りざたされるようになった。

サブリミナル効果が有用とされた理由は、心理的抵抗を受けないという点だ。

それは、そうだ。

知覚出来ないのに、いつの間にか刷り込まれているのである。普通に映画を見ているうちに、いつの間にか知覚できないほど短い時間ポップコーンという文字を見せられ、潜在意識的にポップコーンを食べたいと思わされてしまうかもしれない。前世の東西冷戦の際にも、このサブリミナル効果は、知覚出来ない刷り込みとして使用されたという。

だが、現在に至りその効果には否定的な意見も多い。


そんな閾下刺激をなぜ俺は、熊の魔物にしようしたのかだが、理由は簡単だ。

この世界には、魔法なんて便利なものがある。

実際に、魔力をこめず頭の中に知覚出来ないほど短く画像を流したとしても魔物に意味があるとは到底思えない。しかし、俺が送った画像には魔力がこもっている。魔力により、画像を脳に刻み込み、潜在意識に刷り込む。そんなイメージの魔法だ。対象は、何時刷り込まれたのかもわからず、直感としてその画像や感覚を信じ込む。俺は、この魔法を閾下魔法と呼んだ。


熊の魔物は、直感でリクリエットがいる場所を感じたと思ったのだろう。

リクリエットがいるほうへと走り出した。

上手くいった。上手くいった。上手くいった。

笑いそうになるが、まだだ。

一匹では心もとない。もっと大量の魔物に襲わせてやる。

なにしろ、やつの実力は未知数だ。どれほど強いかもわからない。

だったら、できるだけ多くの魔物をけしかけさせてやる。幸いに、リクリエットから得た情報では、この森では魔物が増加してかつ凶暴化しているという。


好都合だ。俺は、また走り出し、魔物を探した。

結果的に魔物は次々に見つかった。

熊の魔物に、背骨がむき出しで、口からよだれを出し続ける犬の魔物、そしてどろどろとただれた皮膚を巻く蛇の魔物だ。それを俺は次々に、リクリエットにけしかける。これらの魔物たちは、おもしろいほどに俺の魔法に引っかかり、血相をかえてリクリエットのほうに向かっていった。

そして、一番の収穫は、今の目の前にある巨大な蜂の巣だろう。

大きい。

普通の民家くらいある蜂の巣が俺の目の前にあった。

そとには、一匹蜂の魔物が飛んでいるのだが、そいつもまたかなりの大きさだ。

全長にして50cmほどある。

さて、この蜂をけしかけるので最後にするか。さて、何匹くらいいるだろう。

まずは、飛んでいる蜂を血魔法で攻撃する。血を最大出力でカッターのように飛ばした。

血の刃は、狙い通りに蜂に胴体を真っ二つにする。


よし。上手くいった。しかもさすが蜂のような昆虫の魔物だ。

胴体を切られてもまだ生きているようだ。すかさず、俺はリクリエットの映像を苦しむ蜂の魔物に見せた。

「キッー、キッー」

蜂は悔しそうな声を出して、死んでいく。

その瞬間だ。大量の蜂の魔物が蜂の巣からでてきた。どうやら蜂が仲間を呼んだらしい。

そのうちの一匹に、閾下魔法をかけリクリエットの居場所を教える。

蜂たちは、リクリエットのいるほうに軍団で向かっていった。

だいたい100匹はくだらないだろう。


さて、俺もリクリエットのいる方に向かうとしよう。

これでリクリエットが勝つというのであれば、俺もお手上げだ。

そうなれば、このまま姿をみせずに消えるのが良い。

もう戦っているとは思うが、どうなっているのか。楽しみだ。

この世界の人間はどれほど強いのか。見せて貰おう。

俺は、急いでリクリエットがいるであろう場所に向かった。

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