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外道は外道のまま世界を救う  作者: カタヌシ
乳幼児期 奴隷編
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プロローグ

 くそ、いてー

 マジかよ。撃ちやがった。馬鹿みたいに血が出てるよ。くそが。

 失敗したぜ。いまどきコンビニ襲って金ふんだくろうってのが間違いだったわ。

 最悪だ。こんなことなら、あの女からもっと金むしってたらよかったぜ。

 っち、どいつもこいつもよ。俺のこと見下しやがって。

 あぁ、くそつまらない、人生だぜ。


 俺 工藤 大作 37歳  (フリーター)は

 コンビニ強盗に失敗し、逃げた民家で人質を盾に立てこもった挙句、人質に説教され、

 逆上しナイフをぶっさそうとしたところで警察に射殺られ、死んだ。


 ブラックアウトしていく意識の中、俺の心には憎悪と後悔ばかりが残った。


 目が覚めたら、光に包まれた何もない空間にいた。

 どこからか頭の中に声が響く。

「小悪党よ。おぬしまさか自分が天国にいけるとは思っておらぬな。」

 光の中で、一際強い光が俺に語りかけてくる。

 重低音の声で、しわがれており、どこかの仙人のようだ。

「思ってるわけがねぇがねぇだろ。さっさと地獄でもどこでも連れて行けよ。」

「おぬしは地獄にも行かぬ。輪廻の輪の中で巡り続けるが良い。」

 意識をしてみれば、自分も一つの光になっている。

「はっ。んじゃあ、俺は蛆虫にでも生まれ変わるのかよ。」

 前世は花だったとか、来世は悪いことをすれば虫になるとかいうのを思い出す。

 まぁ、俺はそれなりに悪さもしてきた。虫になったからといって文句を言える立場ではない。

「人間の魂を虫の器に入れるのは難儀だ。おぬしは、次も人だ。しかし、世界が異なる。

 あと、30年で人間が滅びる運命にある世界。そこにおぬしは転生する。せいぜいあがいてみればよ  い。」

 はっ。そんな軽い罰で良いのかよ。率直にそう思った。

 少なくとも30年は滅びないのなら、30年楽しめば良い。

「それはそれは辛い罰を与えるんだな。」

 しかし、いまさら今のはなしだといわれても癪だ。

 俺は、何も考えるまでもなく嘘をつく。

「たわけ。わしに対し、うそなど無意味。おぬしの考えていることなどわかりきっておるわ。

 この罰、一度や二度では終わらぬ。貴様は、死ねばまた無限に存在する同じような世界に転生する。それは、永久に続くのだ。貴様が30年という短い期間の中で、輪廻の輪を抜け出し涅槃にたどり着くことは永遠にないであろうな。」

 いちいち仏教ぽいな。俺はとくに何の感慨もなく言葉を聞いていた。

 どうせ、生まれ変われば記憶なんて消されるのだ。そんなこと聞いても関係ない。

「関係なくはないぞ。」

 どうやら、この光の仙人、いや仏教っぽくいえば仏なのか、は俺の心が読めるらしい。

「まて、わしは仏教とは一切関係はないぞ。おまえにもわかりやすいように、お前の宗教信仰の土台に則して話しているだけだ。だからわしは仏ではない。一般的に神と表現されるものだと思っておればよい。」

 そんなのはどうでもいいから、話をつづけてくれ。

 心が読めるのであれば、わざわざ喋る必要もあるまい。

 さっさと話だけ聞いて、さっさと転生とやらをしてしまいたい。

 話を聞くかぎりでは、俺が転生するのはもといた世界とは別の世界、つまりは異世界のようだ。

 それに関しては、それなりに楽しみでもある。

「おっほん。では、話を戻そう。簡単に言えば、おぬしは実験体じゃ。

 前世の記憶をもったまま、転生すればどういったことが起こるのか。それを確かめる為のな。

 おぬしは、小悪党のままか、はたまた前世の経験を活かし、清く生きることが出来るのか。

 そのための実験じゃ。」

 確かめるも何も目に見えているだろう。

 俺が記憶を持ったまま転生したところで、俺は俺のままということだ。

 

 つまり、クズになる。たいした人生は送れないだろう。

 まだ、記憶をなくし、まっさらな状態で転生した方がいい。そのほうが幾分かましだ。

 イギリスの哲学者 ジョン・ロックは生まれたばかりの人間の心を白紙にたとえた。

 記憶をなくした白紙と今の俺の落書きだらけの紙、どう考えても、記憶をなくしたほうが良いに決まっている。

 俺みたいな魂でも白紙の方がまだましというものだろう。

「そうとも限らん。魂は記憶が消えても汚れは消えん。悠久の昔よりわしは、人の記憶を消して転生を行ってきた。しかし、前世で犯罪を犯したものは生まれ変わったとて犯罪を犯し、前世で清廉潔白だったものは、また清廉潔白となるのだ。」

 それは、環境によるだろう。

 貧乏な家に転生すれば、それだけ犯罪率もあがるだろうし、金持ちに生まれればまた違うだろう。

 両親の教育にもよるんじゃないか。

 俺は、温かい家庭なんて知らないからわからねぇが。

 心理学者のジョン・ワトソンは1ダースの子どもを自由に養育させれば、石にも弁護士にも、芸術家にも、経営者にも、ホームレスにも、泥棒にもできると豪語したという。

 それほどに環境というものは重要なものらしい。

 魂がどうとかで人間の性根などは大して変わらないだろう。

「残念ながら、魂が環境を選ぶのだ。汚い魂はより穢れた環境に行きつき、清き魂はより清き環境に行き着く。残念だが、わしとて魂がはいる器は選べぬ。そうやって、穢れた魂は、穢れをさらに酷くするのだ。」

 んで、それならばいっそ開き直って記憶を残したままにしてみようってわけか。安直だな。

「おぬしに拒否権はない。決定事項だが、わしの実験に付き合ってもらうにあたり、一つだけチャンスをやろう。世界を救え。それが出来れば、おぬしの魂の穢れをわしが全力を持って払ってやろう。

輪廻から解き放ち、涅槃へと案内してやることを約束しよう。」

 特に魅力は感じないな。

 しかし、まぁ折角の異世界での二度目の人生せいぜい楽しませてもらうとするさ。

「せいぜい頑張ると良い。さて、おぬしに最後にわしからのアドバイスじゃ。魔力は、幼いほど伸びる。赤ん坊から必死に魔法の修行をしろ。さすれば、おぬしは人並み以上には強くなれる。それと、おぬしはいっこりょうぜつという特性を魂に刻まれておる。それに関した魔法は得意なはずだ。

では、せいぜいあがくと良い。小悪党よ。」

 そう自称神がいうと俺は強烈な光に包まれ、意識を失った。

 いっこりょうぜつってなんだよ。そう思ったが、もう返答はなかった。


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