2話 酔っ払いの相手は疲れますわ
人間嫌な事からは逃げられない。
わかっている。
でもこうもイヤナコト続きだとね…
嫌んなっちゃうよ。
事の始まりは私の姉さんだった。
父さんも母さんも海外出張していて、何ヶ月かに一度くらいしか帰ってこないため、私は成人住みの姉と二人暮らしをしている。
姉はとにかく飲兵衛だった。
だいたい帰ってくる時はベロンベロンに酔っ払って帰ってくる。
まぁ、両親から仕送りが来るとはいえ、実質姉さんに養って貰ってるようなもんだから文句は言えないけど…
酔っ払いに絡んで意気投合して家に連れ帰ったり、バス停をズルズル引っ張って持って帰ってきたり、隣の家に突撃したりするのはやめてほしい。
酔っ払いさんは説得するのが難しいし、バス停は毎回リカコに頼み込んで戻して貰わないと行けないし、隣の家にメイワクだし。
「ユウキ〜!おしゃけ持ってこォい!ヒカリおねーたまの言う事聞けらいろか〜?」
「散々酔っ払っといてまだ言うか。また酔っ払い連れてきて…」
「んひひ、ゆーきってば〜、おかーしゃんみたい〜!お・ば・さ・ん!びーびーえー!んひひひひ!」
「やかましいわ!私がババァならあんたはお婆さんだろっ!」
「怒鳴ると老けるわよぅ!」
「ハァッ!?………おほん。また酔っ払い連れてきてさぁ……」
あろうことか…
「あっちのケのおねーさまなんか連れて来て!やめてよ!さっきからすごい視線感じる!さっき撫でくりまわされたし乳揉まれたしサイアク……」
「あらやあね、その人女装してるのよ。」
「…ん………?」
女装…?じゃあ男?
男に乳揉まれたの?ウソでしょ?
「………ユメ…コレハユメ……サメナキャ………ウフフ…」
「可愛い、このこ妹にしたい。」
「あらダメよ、私のいもーとなんらから。」
「ザンネン。」
どう見ても女性……
白い肌にツヤツヤのロン毛にパッチリした瞳……
今流行りの中性的なビショーネンって奴なのかな…
いや、お酒飲んでるしビセーネンかな?
っと、考えてるバアイじゃない。
上手く説得してお引き取り願わないと…
「すみません帰っ」
「それじゃあお暇するわね!じゃ。」
遮られた。
多分私の言おうとしたことを察したんだろう。ラッキー。
姉さんが何かごちゃごちゃ言ってたけど、別段気にした様子もなくさっさと帰って行った。
何かいきなり来てさっさと帰って、彗星みたいな人だなぁ……しかも女装趣味……
「あの人シオさんてゆーらしーわよ〜。」
「へー。」
シオさんねぇ……
どっかで聞いた事は無いなぁ。
それより。
「姉さん、ホントに酔っ払い連れて来るのはやめて下さい。ホンキのマジで。」
「やあね…やあよ。」
「嫌とか言うな!」
母さん父さん早く帰ってきて。
娘は疲れマシタ。
酔っ払いの相手は疲れます、酒臭いのは慣れません。ワタシトテモツカレタワ。
オチは…あるのか?