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俺<幼馴染

作者: きみどり

「ただいまー」


今日は帰ってくるのが少し遅くなった。まあ、あの馬鹿たちと一緒にいるとこんなのしょっちゅうだ。辺りはもう暗くなっていて、電灯の灯りがぼんやりと家を照らしていた。


「おかえりー!今日も遅かったわね。もうとっくに…ーー」

ああ、と言いながら適当にながす。…早くこの重い制服を脱ぎ捨ててベッドに身を投げ出したい。学ランのボタンを外しながら2階の自分の部屋の扉を開けた。


「あっ おかえりー♡遅かったね…」


ばたんっ


はっ?

ベッドの上には既に先客がいた。

………。

見間違いであってほしい。誰だ、あの女は。


「ちょっとー!なんで閉めるのよー!!」


中から声が聞こえる。どうやら見間違いではなかったようだ。なんで部屋に上げてるんだよ、母さん。


観念してもう一度自分の部屋の扉を開けた。

「もーうっ 裕樹がすぐに帰ってくるって言ってたのに遅すぎ!…うーん、でもまあ美優の好みかも♩」


裕樹てめえ明日覚えとけよ。



*******


「おう、おはよう貴」

「遅いぞ貴司」


ゲシッ


俺は挨拶がわりに飛び蹴りをくらわした。

「朝から元気だなあ、貴司は。」

裕樹は、俺に蹴り飛ばされた背中の汚れを気にしながら笑って応える。

「お前、昨日の女俺に押し付けやがったな。」

「まさかそんなこと、貴司に女の子を紹介してあげたんだろ?」

なんの悪気もなさそうな顔をしてけろっと言う。

「んなもんいらねぇよ!」

「まあいいじゃねーか、そんなんじゃモテねぇぞ?女に。」

「佑は黙ってろ」

「いいのか?モテなくて?」

「裕樹、てめえ…」

「貴ーっお前顔は良いんだからさあ…」

「俺らには劣るけどね」

「もっとそういうことに興味もっても…」

「むっつりなのかい?」

「裕樹…またお前は……」

「「まあ、」」


この2人はーーー


「「俺らといるから仕方ないけど」」


ーーー 俺の幼馴染だ。


幼稚園から3人で一緒にいた。裕樹の自身満々な態度も、佑のちゃっかりしているところもこの頃からだった気がする。そんな性格なのに、昔も今も女に好かれる理由は容姿が大きいだろう。裕樹は、生まれもった栗色の柔らかい髪が同じ栗色の瞳とよく合っている。どちらもよく顔が整っているが、裕樹のクリッとした瞳に比べると、切れ長で漆黒の瞳を持っている佑は少し落ち着いた印象をうける。短髪で揃っている黒髪は真っ白な肌と対象的でより顔を引き立てている。と、クラスの女が言ってた。


俺はそんな2人といるため、特に目立ちもしないただの男子高校生だ。つまり、あの2人が言ったことは当たっているわけで、でもひどく腹立つわけで…。いや、今さらそんなことで腹を立てていては俺の心の穏やかな部分がどこかにいってしまうだろう。いかないでくれ。俺は穏やかに過ごしたいんだ。


ただーーー


ひとつだけ訂正させて欲しい。

俺はそういうことに興味がない訳ではない。


俺には想い人がいる。



「そーいや裕、俺昨日椿さんとお茶したんだよね」

「へー、おつかれ」

「またまたあ、俺好きだけどなあ、椿さん。相談にのってもらっちゃった」

「佑に悩みなんてあったの?」

「あるある。たくさんあるよ。ちなみに昨日は5回断っても諦めてくれない子がいるんだけど、どうすれば諦めてくれるのかな、って相談」

「佑、てめえは嫌味か?」

「なに?貴。紹介して欲しかったの?なーんだ、だったらもっと早く…」

「もうしゃべるな」


なんて、


なんて羨ましいんだ。


そう、俺の想い人とは

ーーーー裕樹の姉、椿さんだ。


「ちなみに椿はなんて答えたの?」

「じゃあ、私と付き合うかっていわれた」

「付き合ってるの?」

「付き合ってみたいよね、美人だし。普通に降られちゃったよ」

「ははは、残念」

「はは、本当に」


ーー本当に、こんな奴と血がつながってるなんて残念だよ。



「おはよーう♩裕樹と佑と貴司♩」

「「「おはよーう♡♡」」」

「ああ、おはよう」

「おす、」

「おはよう」


教室に着くなり、黄色い声が聞こえてきてすぐに取り囲まれる2人。

「ねえー裕樹ーっ、今日空いてるう?」

「空いてるよ、俺に会いたいの?」

余裕の笑みで返す裕樹。いつもながら完璧な笑顔である。幼稚園からこの笑顔をみている気がするが、一体どこで覚えたんだよ。

「佑ー!うちらも遊ぼ?」

「いいよー。今日暇だしね」

佑も誘われている。毎日のことだがあいつら、本当に暇だな。


ーーーー

ひとり、ゆっくりと席について空を眺める。いつもの窓際の1番後ろ、俺の特等席だ。まだ後ろから聞こえる聞き慣れた裕樹の惹きつけるような声と、佑の落ち着いた声だけがぼんやりと聞こえる。

爽やかな風が頬を撫でているのを感じながら、目を閉じて考えるのはいつもあの人のことで。今度はいつ会えるだろうか、まぶたの裏に少しだけ微笑む顔が浮かんでいて、ああ、珍しいなと少し口がほころぶ。いつのまにか、聞こえてくる裕樹の笑い声はまるで椿さんが笑っているように頭の中で響いていた。




*****


席に座ってひとり空を眺めている貴司をちらりと、目にいれる。ふっ、なにやらあいつ、物思いにふけっているな。さては恋煩いか。気付いないようだが俺をなめんなよ。とっくに気付いている姉への貴司の恋心を、佑は気付いていないようだし貴司も隠しているつもりのようだ。鈍感な佑と違って俺に隠し事できるわけないだろ?

薄笑いを浮かべて貴司から目を逸らす。最近部屋が散らかってきたからな、貴司を呼んで片付けでもさせるか。

「ねー裕樹聞いてるう?」

「はいはい、聞いてるよ」

「もーうっ、だからあ、今日カラオケでいいよね?」

「ああ…」

「ごめん、今日裕、用事あるから」

突然ハスキーな声が会話に入ってきた。

俺のことを裕っていう奴は佑以外1人しかいない。

「さくら、なに?今日なんかあんの?」

「あるわよ、近所にパスタ屋ができたの。付き合ってよね?」

もう1人の幼なじみだ。

「はいはい。ごめんね?俺今日用事できた」

「さくらあ!たまには譲ってよお!!」

「今日だけよ。じゃあまたね」

それだけ言い残してさっさと自分のクラスに戻ってしまった。


ったく、本当に強引な奴だ。

心とは裏腹にさっきの笑顔とは少し違う柔らかな笑顔になっていた。今日は大事な用ができちまったな、とぼそりとつぶやいた。


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