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 夕焼け色の空の下、僕は美空の隣で川の流れを眺めていた。

 昼間の蒸し暑さが嘘のように、吹いてくる風はどことなく涼しげだ。

 学校での最後のミーティングの後、僕たちはいつものように一緒に学校を出た。そしてどちらともなく自転車を止め、柔らかな草の上に並んで座った。

 三年前と同じ場所。あの頃の僕と今の僕。なにかが変わっているだろうか。

「ねぇ、コタ?」

 しばらく黙り込んでいた美空が、思い出したように微笑んで、僕に向かって言う。

「あたしたちが初めてキャッチボールした日、覚えてる?」

「……うん」

 覚えてる。僕は人差し指を真っすぐ伸ばし、河川敷のグラウンドを指さした。

「あそこのグラウンドの片隅で、美空に無理やりやらされた」

 あははっと美空がおかしそうに笑う。

「無理やりなんか、してないよ」

「してたよ。おれの手を、こんなふうにぐいぐいひっぱってさ」

 どさくさにまぎれて美空の手をつかんで、そっと引っ張ってみる。

 細くて柔らかくて頼りない、女の子の手。守ってあげたいなんて気持ちが、ふと、僕の心をよぎる。

 美空はこの小さな手で、ボールを握って、ピアノを弾いて、料理をして、お守りまで作ってくれた。

「だけど……ミクに誘ってもらって、良かったと思う。おれ、ミクと野球ができて楽しかったから」

 温かなぬくもりを感じ取ってから、僕は静かにその手を離す。美空は僕に笑いかけて、ちょっと照れくさそうに言う。

「あたしも……コタと野球できて楽しかったよ? 本当にありがとう」

 美空の横顔に夕陽が当たる。短い髪がキラキラと光って、それがすごく綺麗で、また涙が出そうになった。

「ミク! キャッチボールでもやるか?」

 美空から顔をそむけるように立ち上がって、僕は言う。

「うん! やろう!」

 僕の大好きな美空の声。その声をこれからも聞きたいから、もう少し頑張ってみようと思うのは、未練がましいだろうか。

「おれ、また誘いに行くから。受験勉強中でも、学校卒業しても、無理やりでも、ミクのこと誘いに行くから」

 グラブを構えた美空が、きょとんとした顔をしている。

「だからこれが……最後なんかじゃないんだ、よっ!」

 大きく右手を振って、美空に向かってボールを投げる。

 今はまだ、頼りない僕かもしれないけど……でもいつか絶対、美空が好きになるような男になってやる。

 ゆるく弧を描いたボールが、すとんと美空のグラブに落ちた。

「しょうがないなぁ。これからも、つきあってやるか」

 笑い声と一緒に、美空の澄んだ声が流れてくる。

 美空の右手がしなやかに上がった。

「いくよー! コター!」

 高く高く飛んでゆく、白いボール。

 僕と美空の上には、今日も美しい空が広がっていた。

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