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更新遅くてすみません。
いよいよ、此処にも朝貴が登場。
でもあくまでこっちは静香が主人公です。
朝から落ち着かない。夏休みなのに午前6時には目が覚めてしまった。でも仕方がない。今日という今日を僕はどれほど待っただろう。
そう今日は待ちに待った祭りの日。朝貴君と会える日。これほど楽しみなこともないでしょう。しかもこれから浴衣を着せちゃおうっていう計画も、僕の気持をさらに高揚させる。早く来ないかな。なんて思いつつ焼き菓子の生地をこねる。クッキーにマドレーヌ、チョコのパウンドケーキだ。もちろんお茶の準備も忘れずに。甘党らしい朝貴君のためにシロップは多めに用意しておいた。それをリビングの机に並べていたらインターホンが鳴った。来た!待ち合わせ時間に遅れずに来たよ!!でもあっていきなり抱きついちゃだめだ!!そんなことして嫌われたら元も子もないからね。落ち着け落ち着け、平常心!あー、なんでうちのインターホンはカメラ付きじゃないのかなぁ。こっからすでに顔みたいよ。っと、待たせちゃ悪いよね。
『ふふふ、朝貴君……だっけ?待ってたよ。今開けるから中入ってきて。』
「え……あ……はい」
よし、声は合格!!低くもないし、高くもないけど。変声期来てないんだね!うんうん、わかるわかる。僕も来てないから。外の門を開くボタンを押した。玄関までは門を通って階段を上って玄関になるからすぐに朝貴君は来る。僕は数回深呼吸する。
玄関に行くとそこに一人の男の子。この子が朝貴君か。家の玄関を珍しそうっていうか楽しそうに見回してるけど。こっち向いてくれないかな。って、声かければいいんだよね。
「いらっしゃい。そして……はじめましてだよね?」
うん、おかしくないあいさつだよね。で、こっち見た――――!!真黒なふんわりヘアーに真黒い大きな目。柔らかそうな唇にほっぺ。うん、可愛い。噂通り……それ以上かもしれない!!かわいいよ。かわいい。お気に入り決定!!
「は……はじめまして、北條朝貴です……あの……」
「そか、僕は君の事知ってるけど、君は僕の事聞いてないんだっけ淳から」
「青葉先輩?」
むっ。淳、青葉先輩って呼ばれてるんだ。いいな先輩呼び。よーし、僕も呼んでもらおう。あとでだけど。だっていきなりそう呼んでとか言われても困っちゃうでしょ?
「ま、とりあえず上がってよ。こんなところで立ち話するのもあれだしね。紅茶とお菓子あるからリビング行こうか」
「は……はい」
緊張してるのかな?後ろからちょこちょこついてきてかわいいけど……。表情が硬いな。なんでぼくここに居るんだろうなって思ってるのかな。そうだよね、理由も知らずに人んちきたんだもんね。さて、まずは話をしてから本題に入ろうかな。
リビングのソファに座って、朝貴君に向かいに座るように促した。遠慮勝ちにちょこんとそこに座るその姿も僕的にはたまらないものなんだけど、平常心を保って紅茶を入れる。朝貴君用のミルクティーと、僕用のストレートティー。この時期に暑い奴入れるのもどうかとも思われるけど、エアコン聞いてるからいいよね。
「見かけどおりの甘党なんだって?ケーキとジュース一緒に食べちゃうような」
「そ……それも青葉先輩情報ですか?」
「ううん、こっちは清桜。甘さ足りなかったら言ってね、シロップいっぱいあるから」
「いただきます」
両手でカップを持って、ミルクティーを飲む。猫舌じゃないのかな。あちっ!てならないかなって思ってたんだけど。ちょっと残念。
「……お……おいしい。この紅茶すっごく美味しいです!!」
「そうよかった。淹れたかいがあったよ」
わ……笑った!今笑ったよね。も、かわいすぎるよ。写メ取りたかった位、それを待ちうけにしたかったくらいかわいい。もうかわいいしか言えなくなる。朝貴君かわいいよぉ。
「あの……あなたは……」
朝貴君がちょっと控え目に聞いてきた。あれ、僕名乗らなかったんだっけ。やばー、かわいいばっかでそっち忘れてちゃだめじゃん。
「あ、まだ名乗ってもなかったっけね。僕は三王静香。一応三年生ね。よく一年だろって言われるけどさ。失礼だよねぇ、背も低くないのに。で、淳とは付き合ってます」
「……はい?」
「んふふふ」
あれ、僕と淳の事、清桜から聞いてないのかな。目をまん丸くして固まっちゃったけど。あ、唇わなわなしてきてる。なんかいろいろ頭の中で考えちゃってる?もしかしてそういうのだめなノンケくん?え、でも清桜のお気に入りだよね。だからそっちだよね。お仲間だよね?
「あの……三王先輩……」
あ、名字+先輩呼びかぁ……。それじゃあ淳といっしょじゃん。やだ、名前がいい。うん、名前じゃなきゃだめ。
「静香でいいよ?」
「……静香先輩?……静香先輩が……青葉先輩と付き合ってるなんて僕の幻聴……」
「マジだよ」
あ、すっごくおどろいてる。顔真っ赤にしたり真っ青にしたり繰り返してる。おもしろーい。想像してなかったんだねきっと。淳に恋人いてそれが男だなんて思ってなかったって感じかな?ピュアっ子だねきっと。こりゃ清桜大変だなぁ。そっかそっか、けがれも知らない純粋っ子かぁ。こりゃさらにいいわ。この子イイよ。
「くすくす、大丈夫?」
「頭パンクしそうです……」
「純粋無垢って感じ?かわいい」
「かわいくなんかないですぅ!」
「で、話を元に戻すよ。今日家に来てもらったのはね、ちょっと着てほしいものがあったからなんだよね」
「着て……ほしいもの?」
そう、着てほしいものだよ。僕は立ち上がると、朝貴君に手招きして浴衣が用意してある隣接した和室に向かった。
静香先輩!!?
あんな人だっただろうか……。
静香の素はおそらく今回のような感じかもしれないです。
可愛い子にはかなわないって感じですかね。