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やっとやっとの三話目です。
清桜にメロンパンをおごった後、僕はまっすぐ屋上に向かった。屋上へと続く階段を上る足取りが少し軽いのは、やっぱりこの後のひと時が僕は好きだからだと思う。ドアをあけると、屋上なのにそこに広がるのは洋風の庭。バラのアーチとか、噴水なんかもある。無駄に広い校舎の屋上を有効利用しようという学園側の考えなのかもしれない。そういえば巷では屋上に緑を植えるのが一時期話題になってたから、エコにもなってるかもしれない。僕はいつも淳と昼を食べる少し奥まったところにあるベンチに腰を下ろした。まだ淳は来てない。屋上にはさっき見たら数人ほかにもいた。おそらく目的は僕と同じ。恋人たちの憩いの場。なんてそんな言葉がぴったりなこの空間。僕の目の前には小さな花壇があって、白い鈴蘭の花が初夏の風に揺られていた。あちこちから香ってくる花の芳香に、思わず睡魔が襲ってくる。そんな僕に近づいてくるあわてた足音。
「淳、そんなあわてなくてもいいよ」
「ごめん静香、おそくなった!片付け押しつけられてさ」
そう言って僕の隣に腰掛けた淳。額に光る汗。だけど全然暑苦しくなくて、むしろさらにさわやかな高校生を演出してる。なんかちょっと悔しい。背もすっかりぬかされたし。改めてみると淳の方が年上に見えてしまう。
「……体育だったんだ。おつかれ」
「なんでわかった?」
「襟、おかしいから。じっとしてて直すよ」
あわてて着替えたのかな。こういうところをみるとかわいいって思う。内側になってしまっていた襟を出す。ふと頭にある温かい感触。まったく、抜け目ないんだから。髪に触れてた淳の唇がだんだん下に降りてくる。額、瞼、頬、耳……。
「はい、そこまで」
「静香―」
「先にご飯。おなかすいてるんでしょ?」
「やっぱ厳しいんだよなー。もう少し良いじゃん」
「だーめ。いただきます」
「ちぇ。いただきます」
それ以上やられたらさぁ、僕の我慢限界なの。わかってやってるんじゃないの?まぁ、気持ちはわかるけどさ。僕も淳に触りたい。けど、今は我慢。
「清桜、また生徒会室こもってるよ」
「会長、あれでもまじめだからなぁ」
「淳も手伝ってるんでしょ?」
「むりやりね。でも、あんま俺に手伝わせようとしないんだよな、会長。なんかこう……自分の仕事なのに人に迷惑かけんの嫌って感じ?」
「会計君のも請け負ってるみたいだし」
「まじで?うっわ、さっすがー。俺無理だなぁ」
「へぇ、僕がそういうのたくさんやってても手伝ってくれないんだ」
「うそうそ冗談!!」
あわてて、訂正するんだから。まぁわかってるけどね。淳は優しいから。あぁ、僕ってなんてこう意地悪いんだろう。こういう淳みてると追意地悪くなっちゃうんだもんなぁ。それ自覚してるけど直さないのもあれだけど。ん……会計君?
「あ!そうだ、淳。会計君に会わせてよ!!」
「会計君?ああ、朝貴か?」
「そう!僕まだ会ったことない!!」
うっかりして忘れてた。まだ会ったことない超可愛いって噂の会計君。へぇ、朝貴君って言うんだ。
「ね、可愛いんでしょ?澪とどっちが可愛い?」
「澪と―?んー、あの二人ジャンル違うからなぁ」
「澪はどっちかっていうとクール美形のかわいいだけど」
「そう。で、朝貴はなぁ……可愛いしか思い当んねーな。俺もついついいじりたくなる」
「はぁ!?何、淳。僕はまだあってもないのに?もう淳はその子いじってるの!?なにそれずるいー!!」
「しょうがねーじゃんか。俺生徒会だから会うのは当然だし。朝も会うの多いし」
「いいなー!!かわいい子会いたい!!3年じゃあんまりいないんだよ可愛いの!!」
「俺に愚痴らないでください」
「会いに行きたいなぁ。それでぎゅってしてきたいなぁ」
「……へぇ、俺より朝貴がいいわけ?」
「あ……」
やば。また癖が出ちゃった。淳の声がいつもより少し下がった。もう、何度言ったらわかるのかなぁ。それに、こんな風に過ごしてるけど、俺今すっごく不安なの。悩んでるの。誰のせいだと思うの?
「僕の一番は淳だって言ってるじゃん。信じらんないの?それとも、淳は違うの?やっぱ僕じゃダメ?」
「ばか」
あぁ、パンつぶれちゃうよ。でも、抱きつかれて腕の中にいる時が一番落ち着く。悩みも何もかも吹っ飛んじゃう。
「なら、俺を嫉妬させないで」
「なんで?」
「……静香が好きだから。で、十分?」
「もちろん」
僕も好きだよ、淳。
淳をようやく出せました。
ですが、何か違和感あるんです。
今気付いたら年下が一応攻めって私の小説じゃ初なんですよね。
だからですかね。
年下だけど、幼馴染なので敬語がない。
そこもちょっと大変です、慣れない。
ところどころ敬語になってるのは、ただのおふざけで場の空気でそうなってるって感じですね。あと、静香が怒ってる時も淳は敬語になりますw
静香さんは最強なのです。