表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/30

*25*

卒業式です。

一部【夕焼け〜】とかぶってます。

 卒業式の朝は、とてもよく晴れた。こういう日は確かに晴れてほしくもある、けどもう少し曇っていても悪くないのに。

 この制服に腕を通すのも今日が最後。この寮部屋も今日が最後。昨日はそれほどでもなかったのに、当日になると急に寂しさが込み上げて来る。朝食なんか食べた気がしない。きっと卒業式前は皆様々な思いを抱いてるだろう。嬉しさや悲しさ、卒業するという達成感なんかもあるかもしれない。


「今日が来るのが嫌だった……。できればずっとここにいたかった。けど、これは変わらないから仕方ないね」


 手作りの生花のコサージュを付けて僕は体育館に向かった。その途中良介とあって一緒に行くことにした。


「そういえば、貴方も卒業でしたね」

「良介、僕に勝てるからってそういうの良くないと思う」

「正当法なら貴方の方が上ですよ」

「良介は邪道だから、ね」

「彼とは一緒じゃないんですか?」

「無理」

「無理って……」「そういう良介はどうなのさ。澪は?」

「まだ寝てますね。式には来るでしょう」

「いつもと同じかぁ。二人らしいといえばらしいかもね。……夕貴君、大丈夫かな」

「貴方も知ってたんですか」

「も、ってことは良介も?」

「卒業生代表の言葉の代役を」

「あぁ、そういえば代々会長がやってたっけ。それじゃ尚更夕貴君可哀相」

「……昨日、見送ったんですかね」

「さぁ、可哀相すぎて清桜の話しなんかできないし、会ってもないからね。馬鹿な清桜だよ、全く」


 本当に、卒業式にはいろんな想いが渦巻いてるんだよね……。

 式は予定通り行われた。一部修正されて。



***   ***   ***


 式が終わり僕ら卒業生はそのまま放課。周りでは卒業アルバムに寄せ書きを書き合ったり、写真を撮ってる姿で賑わっている。僕もそれなりにあっちこち引っ張り回された。そんな教室に息を切らした淳が現れた。


「淳?」

「はぁ……はぁ……っ、会長は?」

「会長って清桜?」


 淳が言った信じられない言葉を聞いた僕は、片付けも終わった体育館に向かった。

 静まり返った体育館。その隅の方で壁にもたれ掛かっている一人の少年。僕は一目散にそこへと走った。


「夕貴君……ごめん、ごめんね!!僕……いえばよかった……てっきり知ってるんだと思って……。でも、夕貴君かなしいだろうし、わざわざ僕がその話題持ち出すのも駄目だと思っていわなかった……ほんとにごめんね!」

「何のこと……ですか……?」


 驚きと不安が入り混じるような顔をした夕貴君。それが彼がなにも知らないことを告げていた。

 

「っ……。本当に知らないんだ。じゃ、お別れもいってない?なんで、どうして清桜!!」

「静香……」


 言うって言ったじゃんか。何やってんだあいつ。ふざけんな。僕だったら今頃ぶん殴ってやりたいほどムカついてたと思う。現に今ムカついてるけど。取り乱しかけた僕の肩にそっと淳が手を置いた。そうだね、僕が取りみだしちゃだめだよね。


「っ……。いい?落ち着いて聞いてね。清桜は昨日、出発しちゃったんだ……」

「え?」


 あぁ、何で僕がこんな酷なことを夕貴君に伝えなきゃいけないんだ。


「アメリカに……」

「アメ……リカ……えっ……」


 僕と淳の顔を交互に見る。嘘だと告げてほしいのはわかるけど、ごめんね本当なんだ。多分もう清桜は日本にはいない。


「そんな……何で……」

「あぶねっ!!」


 ふらついた夕貴君を何とか支えた淳。僕も反対側から支える。血の気が引いたように真っ青な顔をした夕貴君は、震えが止まらないようだった。泣きだすかとも思ったけど今はまだ大丈夫みたいだった。


「静香先輩……」

「ん?」

「教えてくださって……ありがとう……ございました。僕はこれで失礼します……」

「え、大丈夫なの!?夕貴君!!」


 僕らの支えから抜けた夕貴君は、危ない足取りで体育館から出て行った。


「ありゃ相当ショック受けてんな」

「何とかしてあげたいけど、それも無理そうかな……」

「そうだ。これどうすっか……」

「それって……」


 淳が取りだしたのは一本の黒い筒だった。僕はそれを握りしめ、夕貴君の後を追った。

本編はあと2・3話です。

その後は社会人?何年後かの二人を書く予定です。(これも2・3話程度)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ