*25*
卒業式です。
一部【夕焼け〜】とかぶってます。
卒業式の朝は、とてもよく晴れた。こういう日は確かに晴れてほしくもある、けどもう少し曇っていても悪くないのに。
この制服に腕を通すのも今日が最後。この寮部屋も今日が最後。昨日はそれほどでもなかったのに、当日になると急に寂しさが込み上げて来る。朝食なんか食べた気がしない。きっと卒業式前は皆様々な思いを抱いてるだろう。嬉しさや悲しさ、卒業するという達成感なんかもあるかもしれない。
「今日が来るのが嫌だった……。できればずっとここにいたかった。けど、これは変わらないから仕方ないね」
手作りの生花のコサージュを付けて僕は体育館に向かった。その途中良介とあって一緒に行くことにした。
「そういえば、貴方も卒業でしたね」
「良介、僕に勝てるからってそういうの良くないと思う」
「正当法なら貴方の方が上ですよ」
「良介は邪道だから、ね」
「彼とは一緒じゃないんですか?」
「無理」
「無理って……」「そういう良介はどうなのさ。澪は?」
「まだ寝てますね。式には来るでしょう」
「いつもと同じかぁ。二人らしいといえばらしいかもね。……夕貴君、大丈夫かな」
「貴方も知ってたんですか」
「も、ってことは良介も?」
「卒業生代表の言葉の代役を」
「あぁ、そういえば代々会長がやってたっけ。それじゃ尚更夕貴君可哀相」
「……昨日、見送ったんですかね」
「さぁ、可哀相すぎて清桜の話しなんかできないし、会ってもないからね。馬鹿な清桜だよ、全く」
本当に、卒業式にはいろんな想いが渦巻いてるんだよね……。
式は予定通り行われた。一部修正されて。
*** *** ***
式が終わり僕ら卒業生はそのまま放課。周りでは卒業アルバムに寄せ書きを書き合ったり、写真を撮ってる姿で賑わっている。僕もそれなりにあっちこち引っ張り回された。そんな教室に息を切らした淳が現れた。
「淳?」
「はぁ……はぁ……っ、会長は?」
「会長って清桜?」
淳が言った信じられない言葉を聞いた僕は、片付けも終わった体育館に向かった。
静まり返った体育館。その隅の方で壁にもたれ掛かっている一人の少年。僕は一目散にそこへと走った。
「夕貴君……ごめん、ごめんね!!僕……いえばよかった……てっきり知ってるんだと思って……。でも、夕貴君かなしいだろうし、わざわざ僕がその話題持ち出すのも駄目だと思っていわなかった……ほんとにごめんね!」
「何のこと……ですか……?」
驚きと不安が入り混じるような顔をした夕貴君。それが彼がなにも知らないことを告げていた。
「っ……。本当に知らないんだ。じゃ、お別れもいってない?なんで、どうして清桜!!」
「静香……」
言うって言ったじゃんか。何やってんだあいつ。ふざけんな。僕だったら今頃ぶん殴ってやりたいほどムカついてたと思う。現に今ムカついてるけど。取り乱しかけた僕の肩にそっと淳が手を置いた。そうだね、僕が取りみだしちゃだめだよね。
「っ……。いい?落ち着いて聞いてね。清桜は昨日、出発しちゃったんだ……」
「え?」
あぁ、何で僕がこんな酷なことを夕貴君に伝えなきゃいけないんだ。
「アメリカに……」
「アメ……リカ……えっ……」
僕と淳の顔を交互に見る。嘘だと告げてほしいのはわかるけど、ごめんね本当なんだ。多分もう清桜は日本にはいない。
「そんな……何で……」
「あぶねっ!!」
ふらついた夕貴君を何とか支えた淳。僕も反対側から支える。血の気が引いたように真っ青な顔をした夕貴君は、震えが止まらないようだった。泣きだすかとも思ったけど今はまだ大丈夫みたいだった。
「静香先輩……」
「ん?」
「教えてくださって……ありがとう……ございました。僕はこれで失礼します……」
「え、大丈夫なの!?夕貴君!!」
僕らの支えから抜けた夕貴君は、危ない足取りで体育館から出て行った。
「ありゃ相当ショック受けてんな」
「何とかしてあげたいけど、それも無理そうかな……」
「そうだ。これどうすっか……」
「それって……」
淳が取りだしたのは一本の黒い筒だった。僕はそれを握りしめ、夕貴君の後を追った。
本編はあと2・3話です。
その後は社会人?何年後かの二人を書く予定です。(これも2・3話程度)