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*24*

 

 体育館に卒業生と、3学年を担任に受け持つ先生達。後は椅子だけが物凄い数並べられている。

 卒業証書授与式予行練習。

 ま、そんな長々しく言わなくてもわかるよね。ようは卒業式の練習中だ。まぁ普通の授業無いのは嬉しいけど、眠い。

 何の役割も無い僕みたいな一般生徒は暇で暇でしかたがない。正直参加したくないけどこれも一応出席日数が関わってるから仕方が無い。

 あ、そういえば学校行事だから、進行の確認も兼ねて生徒会もいるんだよね。“次期”だけど。会長が何故か淳で、副会長が夕貴君。書記が朝貴君で、会計が澪だった。探せばほら、壇上脇で先生と確認しながら参加してるでしょ。あそこ行きたい。ここじゃ遠い。というか淳、そこ代われ!!

 ま、無理だけどさ。あと1時間か……。

 

***   ***   ***


 午後ぶっ通しで、練習は疲れる。練習終わったらそのまま放課だから嬉しいけどさ。そんなわけで僕は今打ち合わせでまだ先生と話してる淳を待ちながら、ステージに腰掛けて夕貴君とお話し中ですよ。久しぶりだね、夕貴君!


「そういえば、静香先輩合格おめでとうございます」

「あれ、僕言ったっけ?」

「いえ、青葉先輩が……」

「なるほど、あいつ……後でぶっ飛ばす」


 せっかく、夕貴君驚かせようとわくわくしてたのにぃ!!


「え……?」

「あ、なんでもないよぅ。んふふ、夕貴君メイド計画は順調だよ」

「まだそんな話しあったんですか!?」

「ミニがいいんだよね」

「そんなこと言ってないですよ!!」


 必死になっちゃってかわいー。ますます着せたくなっちゃうなぁ……。


「静香、夕貴で遊んでんなら俺先帰るわ」

「青葉先輩……ひっ!?」

「帰る、だぁ?何言ってんのかなぁ」

「……冗談に決まってんだろ?夕貴マジでびびってんぞ」

「誰のせいだよ。ごめんね夕貴君。大丈夫、夕貴君が部屋に帰った後に、説教するから」

「げっ。夕貴帰んないで、マジお願い」

「夕貴君は早く帰っていいんだよ。まぁ、名残惜しいけどね。また今度ゆっくりお話ししようね」

「は、はい……」


 何気に、夕貴君に怯えられたの結構傷ついてたりするんだけどな。ひっ!?って言われた。ま、許すけどさ。

 夕貴君を寮の部屋まで送った僕らは、淳の部屋で小一時間ほど説教。日も暮れたころ僕らは再び寮の外に出た。寮の裏には小さいけど噴水広場がある。金かかってるよね。夜になりかけでも、この噴水は一晩中、24時間休むことなく水を噴出している。あ、冬はさすがに無理だと思うって?なんかお湯にするらしいよ。金かけてるよね。あ、二回目。

 淡い水色のライトアップが、水に溶けるように光っててちょっと幻想的かな。もうちょっと色のバリエーションがあったらさらにいいんだけど。金かけてもいいんじゃない?そこはさ。

 噴水の石段に並んで腰かける。


「最近、こういうの多いな」

「僕と話すの飽きたって言いたいわけ?」

「いんや、全然」

「淳が会長か……」

「意外だったろ?俺も最初はやる気なんかこれっぽっちもなかったもんな」

「え、じゃなんで?」

「んー……何となく、こういうのも経験しとかないと将来役に立たないかなってさ。あと、進路にも有利だし」

「推薦もらっててさらに有利になろうとか。受験生の敵だな」

「俺も受験生ね」

「何ー?きこえなーい」


 もう何回も繰り返してきたおなじみのやり取り。最後はお互い笑いあって次の話題に切り替わる。ホン些細なことだし、ほかの人が聞いてもへぇ、とかそんな感じで終わってしまうような話。だけど、たわいない話を淳とするのが楽しくてたまらない。正直、夕貴君とかと話すよりも楽しくて大事。


「ごめん、一緒の進路進めなくて」

「まだ言ってるの?いいって言ったのに」

「ん……でもなんかな……。静香は頼りがいあるようで頼りがいがないからな」

「はぁ?」

「一見、何でも相談できて頼れるお兄さんタイプだろ?夕貴とかはそう思ってるし、俺もそう思うからよく相談するときはするだろ?」


 そうだね。あまり僕は相談したりはしないかな。逆に相談に乗ることは多いけどね、僕もそういうの好きだし。


「でも、自分は相談しない。というか、苦手なんじゃねーの?で、自分であれこれ考えて勝手に……それも悪い方に決めつける。……ちょっとそこは心配だけどな」

「不安がないわけじゃない……。新しい環境になれるか、勉強に付いていけるか……夢を実現できるか……。不安はあげたらきりがない……」

「もっとあんだろ?」

「……僕がいない一年で、淳が誰かを好きになったらとか……、新しく女の教師が来たら……とか、僕のことなんか忘れて大学行っても何の連絡もなくて、久々に連絡来たとか思ったら結婚式の招待状だったら……とか……」

「最後のは俺最悪じゃねーか」


 笑い事じゃないんだから。その考えにいたって、夜寝られなかった時もあるんだよ。


「大丈夫だって」

「淳はさ、前向きだからそう言えるんだよ。こっちは不安が消えたら生まれての繰り返しなんだよ?」

「静香、度々ひどいよな。俺にも不安、悩みはあるんですけど?」

「あるんだ」

「あるっつの。まぁ、静香よりは少ないかもしれないけど、だから俺がその悩みとか不安を少しでも解消させてあげたいんだよ。まぁ、その不安とかの原因に俺が関係してないとは言えないかもしれないけどさ。でもそれを少しでも共有して、解消してあげるのが俺の立場としての役目って奴だろ?」

「……僕、しつこくうじうじ悩むよ?」

「知ってる」

「あきれるほどネガティブだし……」

「それも知ってる」


 幼馴染で、恋人で……僕のことを誰よりも、きっと親よりも知ってる淳だからきっと大丈夫なんだろうね。頼りにしてるから、ね?


「卒業式、泣くから慰めて」

「泣く前提なのね。わかった」


 僕らは進んで行く時間にあらがえない。でも、それは誰にだって同じことだから、僕もそれを受け入れて行かなきゃいけない。

 卒業式はもうすぐそこまで迫ってきている。

卒業式なんか無縁の季節ですが……


次回卒業式&本編最終話です。

そのあと番外編としてその後のお話を数話載せる予定です。

静香は無事店を構えられたのかとか、淳の進路はとか……

R15な展開かはわかりません。番外編次第でR15タグは外そうかと……

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