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*11*

 のばされたナンパ野郎の手が、隣にいた朝貴君の腕をちゅうちょなく掴んだ。あっそう、そんなことしちゃうんだ。ふーん、そんなに死にたい?


「やっ……離して……」


 聞こえてきた、そんな小さい抵抗の声。隣に視線を移すと、すごくおびえた表情をした朝貴君。まるで以前にも、こんな風に見知らぬ男に連れ去られちゃったことでもあったかのように。



「嫌だ……離してっ……」

「そんなふるえなくてもいいじゃん。かわいいなぁ」

「ちょっと、それ以上その子に……っ」

「いいじゃんいいじゃん、祭りなんだしさぁ」


 何がいいんだよわけわかんねーよ。もういい。こんな可愛い子おびえさせた罪、償ってもらおうか。この恰好じゃあんま力はいんないけど、やるしかなさそう。


「あんたら……いい加減にっ……!?」


 蹴りだそうとしてた足を、僕は地面に戻した。だってもう、僕がする必要がないってわかったから。まったく、遅いよ。今回ばかりは許せないな。でも、これで大丈夫だよね。


「ねぇ、俺の彼女に何してんのかなぁ?」

「そうそう、お前らじゃこの子たちの相手にはなれないとおもうぜ?」

「さっさと立ち去ってよね。ていうか、触んないでよ。きったない手でさぁ」


 朝貴君を後ろから抱き寄せて奪還した清桜と、僕の傍らにそっと立った淳。おどろいて後ろを振り返ってる朝貴君の目にはうっすらと涙がたまってた。あ、その瞬間にさっきまでナンパ野郎たちをにらんでた清桜の表情がいつものにこっり顔に戻った。

 

「か……会長……」

「ごめーん、遅くなって。あっはは、朝貴また可愛いから連れてかれそうになってたね。でももう大丈夫だからさ、泣かないの。」

「んぅ……」


 今、またって言ったよね?てことはだよ、やっぱり朝貴君どっかに連れ去られちゃったんだね。で、清桜が助けたんだよね。うわー、やるなぁ。やっぱ清桜やばいね。もう傍から見たら恋人にしか見えないのに。あんなふうに目にたまった涙、指で拭ってるの見たら誰だって思うけど。でもそこは、口でチュッとさぁ……。まぁ、いいけど。


「遅いし、清桜も淳も」

「電車こんでたんだよ。つか静香、蹴りいれようとしてたな?」


 まさかあれに気付いてたとは……。やっぱり淳にはかなわないな。


「ばれてたか。だってあのままじゃ本気で朝貴君連れてかれそうだったし。何よりむかつくしね。でもベストタイミングだったよ」

「静香の蹴りいれられちゃ、ここに死体の山ができてたかもねー」

「こわ」

「え……え……」


 あ、朝貴君が交互に淳と清桜の顔見てる。そっか、知らないか。ていうか、ふつう想像つかないって言われるしね。


「ほら、何も知らない朝貴君が話についてけてない」

「静香はね、うちの学校の空手部主将なんだよ、あんな顔してるけど」


 あんな顔?どんな顔だっていうのさ。え?何強そうに見えないって?じゃ、一戦交えてみますか?


「清桜、あんな顔は余計だよ」

「ほぇ……やっぱり静香先輩すごい……」

「あれー、朝貴俺は―?」

「なんか言いましたか?」


 あ、そういうやり取りなんだいつもは。いいね、朝貴君に逆らえないよ、これは。


「やっといつもの朝貴に戻ったようですね」

「あ、榊原先輩……ふぎゅぁ!?」


 この落ち着きはらった声は良介か。やっと来たわけね。というかたぶん、それはお連れの方のせいだろうね。で、そのお連れの方は早速気に入ったわけか。


「あ、澪も来たんだ。しかも女装浴衣で」

「べ……別に、着たくて着たわけじゃないし……。ただ良がどうしてもって言うから、だから着ただけだし。違う……良のためでもないんだからね!!」


 若干ツンデレ披露。うん、やっぱり澪にその浴衣だったね。きれいでかわいい。あー、朝貴君に抱きついてる今の光景、写メっていい?


「ふぎゅぅ!!」

「どうでもいいですけど、それじゃあ朝貴が胃袋吐き出しますよ」

「あ、忘れてた」

「ぷはぁっ!!ていうか、胃袋とかはきませんから!!……えと……はじめまして?」

檜山澪ひやまれい。2年。好きなものは良とあとちいさくてふわふわしててあったかいの。君とかね」

「え?」

「こらこら、変なこと言わないんですよ。朝貴がはてな頭の上に展開してますよ」


 うん、その光景見たことある。ついさっきね。僕と淳が付き合ってるってのも初耳だったみたいだけど。こっちもか。でも、僕らで耐性ついちゃったのか、あそこまできょどきょどしてないね。それでもぽかーんとしてるのは、いい。


「で、これで十分かな、静香」

「なんで清桜も浴衣じゃないのかなぁ?」

「俺まで巻き込むのやめて」

「ちぇ。うん、でも朝貴君に会えたからとりあえずはいい」

「じゃ、もういいよな!」

「は?」

「あーやっぱそうなるんだ。ま、澪もその気だし。ここで解散!はい、あとはご自由にどうぞ」

「は?え、清桜!?ちょ、淳、どこ行く気!?」

「祭りだろ」


 いや、それはそうだけど。え、もう朝貴君さよなら!?清桜の馬鹿!淳の馬鹿!!朝貴君いい加減にぽかんしてるのやめなさーい!!そして言っちゃヤダって言ってよバカ!!

 こうして僕は、淳に連れられ、強制的に朝貴君とサヨナラし、祭りの真っただ中でにぎわう神社に入った。


なーんでバレンタインの時期に夏祭りの話してんだろう。

あほな作者ですみません。


しかもおわりそうにないですね。

あと一話夏休みの話はあります。

すみません。

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