さまよっちゃう娘
パンッという先ほどの音とともに、少しずつ棺桶の周りの魔法陣が薄れていくのが見える。
ど、どうしよう・・・?
私、結界を解いちゃったの?
外、出ちゃっていいのだろうか?
娘はキョロキョロと辺りを見渡すが、人の気配はない。
失礼しま~す。
そろり。
靴が無い。
仕方なくそのまま、建物から出る。
小さな円形のドーム状の建物は、美しいステンドグラスがはめ込まれ、小さな扉が一つついているだけだ。
外は一面の花だった。
建物には藤の蔓や蔓バラが巻きついている。
どうやらその建物は、霊廟というよりは、庭園の中の小さな東屋のようだった。
その東屋を守るようにたくさんの花々が咲き乱れていた。
はるかむこうに城が建っているのがみえる。
辺りは小鳥の歌声が聞こえるばかりだ。
薄手の絹の靴下の先に固い地面を感じながら、迷宮のような庭園をとぼとぼと歩きだす。
「うーわー!!」
突然、背後から大声が聞こえた。
娘がハッと振り返ると、さっきの東屋からだった。
庭園の警備兵らしい男が腰を抜かさんばかりにしている。
「戸が開いている! 封印の結界が解けているぞ! 大変だ。警備隊長を呼ばないと!!」
封印? 警備隊長・・・?
やっぱり、私は封印されていた化け物――ゾンビだったの??
ひぃぃ。ごめんなさい。ごめんなさい。
娘は走り出した。
闇雲に。
警備兵に見つかったら、どうなっちゃうの?
もしかして、殺される・・・!?
・・・でも、もう死んでるんだっけ?
ああ、もう、何が何だかわからない!