ボートでデート
王宮の庭園にある湖に一艘のボート。その上にはレオンとミラの姿があった。
その湖を見下ろす北の塔の上では・・・。
「なかなかいい雰囲気じゃない? 俺たちの初デートのときみたいだよね?」
ベル第2王子は妻をみてニッコリしていう。
「デートなんてどうでもいい。さっさと結婚してくれ。レイシア財務大臣と毎日顔を会わせるこっちの身にもなってもらいたい」
マリン第1王子は苦虫を噛み潰したような顔で湖上の2人を見守る。
マリン第1王子はレイシア財務大臣から、ミラが無事レオン王子と結婚できるよう見守ってあげてね、と脅迫されている。
「あら~。レオンは3回デートして、理想の男性になってから結婚したいっていってたわよ?」
レオンの母親の王女は楽しそうにいうと、双眼鏡を覗いた。
「レオンったら。キスもできないの? そこよ! いけ! 男は度胸よ!!」
何がみえているのやら。
「キスなら、ミラの時間を止めたときには毎日してましたけどね。今思うと、ほとんど犯罪ですね。魔術関係の法律も、今後見直す必要がありますね」
ラルフは腕組みをしていう。横でマリン第1王子が頷いている。
「だーれもいないと思ったら、みんなここにいたのか。お父さんだけ除け者かい? おや? あれはレオンか? 驚いたな。レオンがデートとは。レオンは魔術や勉強にしか興味が持てない子なのかと思っていたよ。そうかぁ・・・。あの子も大人になったんだなぁ・・・」
レオンの父親である国王は皆の後ろから湖を見下ろす。
「でも、困ったな。レオンが魔術や勉強にしか興味が持てない可哀そうな子だと思ってたから、お見合いの話、いろいろ受けちゃったんだよ。どうしよう?」
国王は長男マリン第1王子をつっつく。
マリンは疲れたような顔をしてのん気な父親を見た。
「ああ。その話でしたら、みんなお見合いの話、断ってきましたよ。レオン王子は人間を魔術修行の実験台にして、ゾンビにしたりしているって噂が立ちましてね。どうせレオンはお見合いする気なんか全然ないし、ちょうどよかったですね」
ふぅ、とため息をつくマリンの言葉のむこうで、レオンとミラが楽しそうにボートに揺られていた。