レオンの懺悔
「ミラ、そいつを殴っていいよ。ミラは死んでない。ゾンビでもない。そいつ・・・レオンが魔術を使って、勝手にミラの時間を止めたんだ。6年間も」
イオの言葉に、イオを見て、レオンを見るミラ。
その愛らしい瞳に映し出されたのは、疑惑、困惑、迷惑?
「・・・レオン王子? コレが? 本当に? んまぁ~、無駄に大きくなっちゃって」
小首を可愛らしく傾けていうその言葉は、暫く会わなかったおばちゃんのような感想・・・。
レオンは、本当は6年間、かなり、いや、ものすごく努力したのだ。
ミラに釣り合うよう、立派な大人になるために。
無駄に、という言葉がレオンの胸に刺さる。
素敵になったとか、そういう言葉を期待してはいけなかったのか・・・。
ミラはあっさりとレオンから目を逸らす。
「でも。その前に。イオ先生殴っていいですか? 死んでるっていったじゃないですか! ゾンビだっていったじゃないですか!」
くるりと向きを変え、ミラはイオに突っ込んでいく。
「イオ先生の馬鹿!」
殴るミラをラルフも呆れてみている。
「馬鹿はどう考えてもミラでしょう。っていうか、自分をゾンビだと思った上で、お見合いに行くつもりだったんでしょうか、ミラは。6年たっても馬鹿は馬・・・」
レオンはラルフに拳骨を落とし、黙らせた。
「ミラ、殴るなら俺だ」
レオンは半泣きでポカポカとイオを殴っているミラをひょいと抱え上げると自分の腕に抱きこんだ。
「ミラ、ごめん」
愛しいミラ。
「こんなのレオン王子じゃない。レオンはもっと可愛かった。こんなにムサくなかった。こんなにデカくなかった。こんなじじいじゃなかった。もっと、我儘で、生意気な子だったのに」
腕の中でジタバタしているミラをそっと抱きしめる。
腕の中にすっぽり収まるミラ。
やっぱり無駄にでかくなってよかった。
「ミラ、大丈夫だ。今でも俺は我儘で生意気だ!」
レオンはきっぱりと宣言した。
・・・・・・・・・・・・・
「おやまあ、みなさんおそろいで」
ドスのきいた声がしてレイシア・ラクシスが現れた。
レオンを追ってきたらしい。
「伯母様!」
「ミラ! よかったよ。本当に心配をかけて」
レイシアはレオンを引っ剥がすとミラをむぎゅむぎゅと抱きしめた。
レイシアはミラの頭に頬ずりするとレオンをギロリと睨んだ。
「王子には責任とってもらうからね。ミラに言い寄る男を片っ端から片付けた挙句に、ミラを眠らせて監禁して。とんでもない変態男だ」
ラルフがうんうん、と頷きながら変態を見る目でレオンをみる。6年前その片棒を担いだことは無かったことにして。
イオも無言でレオンを睨む。ニセのリハビリ体操をやらせていたことは棚にあげて。
「もちろん責任とりますとも!! ミラと結婚します!!」
嬉しそうにいうレオン。
「よろしい。あと、あたしを財務大臣に推薦するのも忘れないようにね」
ちゃっかりそういい、ニッカリとレイシアは笑った。