第八十九話
第四十三話で出てきたあの子の登場です。
真兄に案内されて駅の近くにあるお好み焼き屋に辿り着く、中に入ると割と大勢のお客さんで賑わってた
『 やっぱ多いなー、でもホントに旨いんだぜ。』
『 それは楽しみね、でもあんまり食べ過ぎると私達が作る晩ご飯が食べられなくなっちゃうよ。』
『 そりゃ大丈夫さ、お好み焼き一枚くらいで満腹にはならないよ、なんせ夕飯はうな丼だかんなー。』
店員さんの案内でテーブルに座りメニューを眺める、お好み焼きだけじゃなく焼きそばや焼きうどん、たこ焼きもあるのね
『 いずみは注文決まったのか? 俺はこの豚玉にするけどさ。』
『 私も同じのにするよ、なんか美味しそうだし。』
『 美味しそうじゃなくて美味しいの、実は俺もこの店の事は奈津美さんから教えてもらったんだよ。』
奈津美さんが? なんか意外ね、お好み焼きが好きそうな人にはあんまり見えないから・・・
『 奈津美さんのお姉さんの友達さんが経営してるんだそうだ、奈津美さんもたまに食べに来るらしい。』
なるほどね、でもお姉さんの友達なら随分若いんじゃないかしら、そんな事を思ってたら店員が注文を聞きに来る、しかしその店員は見覚えのある子だった
『 いらっしゃいませー、ご注文はお決まりでしょうか・・・って、あなた達は確か・・・。』
『 あっ、君は・・・。』
その店員は以前に悪者に絡まれてるトコを真兄と蒼太くんが助けた綾子さんという女性だった
『 へぇ、ここで働いてるんだ、バイトなの。』
私が何気なく聞くと綾子さんは何故か顔を曇らせる
『 は、はい・・・、あの・・・、ここで働いてるのは他の人には内緒にしててくれませんか・・・、お願いします・・・。』
『 別にいいけど・・・、何か訳ありなの? 』
『 なっ・・・、何でもないです! それよりご注文は決まりましたか。』
どうにも彼女の様子はおかしいのだけどとりあえず豚玉2つを注文する、注文を確認すると彼女はそそくさと去っていった
『 真兄、どう思う? 彼女、絶対に何か訳ありよね、お金が必要なのかな。』
『 俺達には関係ねぇーべ、彼女も女子高生なんだから普通にお金が欲しいだけなんだろ、工藤と関係ある人間に絡むとロクな事ないんだからほっとこーぜ。』
確かに彼女は工藤先輩と何かしらの関係がありそうな人だった、もしかして付き合ってるのかな? でもだったら前田先輩は・・・
『 お待たせ致しました、豚玉です。』
綾子さんが豚玉を持ってきた、ソースの匂いが食欲をそそるわね
『 キタキター、この匂いがたまらんねー。』
『 真兄ぃ、マヨネーズはかけないの? 』
『 マヨネーズなんて邪道だよ、いずみは好きにしたらいいけどさ。』
邪道って・・・、私はマヨネーズかけた方が美味しいと思うけどな、そんなのは人それぞれなんだけどね
『 いただきまーす。』
『 うん、ホント旨いわ、味もだけど柔らかくて食べやすいね。』
食べやすかった豚玉をわずか五分で平らげ店を出る、すると店の横から気になる会話が聞こえてきた
『 恭介先輩っ、お金はあといくら必要なんですか、私もこれ以上バイト増やすのは少し・・・。』
恭介って工藤先輩の事よね、まさか綾子さんって工藤先輩にお金を渡してるのかしら・・・
『 真兄、ちょっとこれはほっとけないよ・・・、何とかしてあげようよ! 』
『 そうだな・・・、それにしても工藤の奴、女の子を働かせてその金を取ってるのか!! とことん見下げ果てた奴だな。』
私達が話してると綾子さんも私達の存在に気づいた、多少困ったような表情をしてたけどまずは事情を聞かなきゃ私達には何も分からないのだった。