第八十三話
今回で彩花デート編はおしまいです。
貴志の提案でゲームセンターに来た私達、新しく入ったというレーシングゲームを貴志と遊びその後はクレーンゲームで私が欲しいと言ったウサギのぬいぐるみを取ってくれた
『 ほらっ、これでいいんだよな、後なんか欲しいのがあるか? まだあと2、3個は取れるぞ。』
飄々と言い放ちぬいぐるみを私に渡す貴志、クレーンゲームには相当の自信がありそうだった
『 もういいわ、それよりプリクラ撮ろうよ、今日の記念にねっ♪ 』
やはり定番は外せない、貴志も了承してプリクラ機に向かうとそこに居た先客に声を掛けられた
『 おっ、青山に四森じゃん、2人っきりで何してんだよ、もしかしてデートなのか? 高野が知ったら嫉妬するぜ〜。』
プリクラ機に居た先客は私達のクラスメート、後藤君と柴山さんだった
『 ・・・まあそんなトコだ、頼むから奈津美さんには言わないでくれよな。』
後藤君からの問い掛けに少しバツが悪そうに答える貴志、でも私としては奈津美達にバレたとしても別に構わないけどね
『 ねーねー、青山君と四森さんっていつの間にそんな仲になったの、高野さんには黙っててあげるから教えてよ〜。』
柴山さんが小動物みたいに飛び跳ね貴志に引っ付く、なんかムカつくわね
『 この夏休みからだよ、つーかあんまりくっ付くな、後藤が見てるぞ。』
『 あー安心しろ青山、俺と裕子は別に付き合ってる訳じゃねーから。』
そうなの? でも恋仲じゃない男女が仲良くプリクラなんて撮ったりするのかな、私には理解できなかった
『 そうなのか? じゃあなんで一緒に居るんだよ、しかもご丁寧にプリクラまで撮ったりしてさ。』
私と同じ疑問を聞く貴志に柴山さんが笑って答えた
『 ふふふっ、私と達也は小学校からの幼なじみなの、私も達也もそれぞれ恋人がちゃんといるわ、今日はお互いヒマだったから遊んでるだけよ。』
初耳だった、幼なじみなら仲がいいのも分かる、でもお互い恋人が居るのにヒマだからって年頃の男女が2人っきりで遊ぶのはねぇ・・・、私は感心しないな
『 ふーん、まあいいけどさ、それよりもうプリクラは撮ったのか? 俺達も早く撮りたいんだけどな。』
スッキリしない私と違って極めてドライな貴志、男ってこういう事は気にしないものなのかな、でも貴志は私と同じ傷を持ってる筈なんだけど・・・
『 もう撮り終わってっから少し待てよ、しっかし青山もツイてるよな、前田を六組の工藤に取られたと思ったら今度は四森と付き合ってんだからなー、四森みたいな美人が彼女だなんて羨ましいぜコノヤロー。』
『 そうだよね〜、普通恋人を奪われたらもう恋愛とか怖くなってもおかしくないのにね、四森さんなら大丈夫だろうけどさ。』
後藤君も柴山さんも悪気はないのだろうけど貴志に嫌な過去を思い出させる様な事を言ってほしくなかった、思いあまった私はつい2人に言ってしまう
『 2人ともあまりその話はしないでくれるかな、貴志も聞いてて気分のいい話じゃないからさ・・・。』
『 あっ・・・、す、すまなかったな青山、悪かったよ・・・、もうシールも出来たしそろそろ行くわ、じゃあな、高野には黙っててやっから安心しろよ。』
『 別に気にしなくていーよ、また学校でな。』
後藤君も柴山さんも貴志に詫びてゲームセンターを出る、貴志も相変わらずドライな反応だけど怒ってはいなかった、2人が去った後プリクラ機の前に立ち貴志の肩に寄り添う
『 やっと撮れるね♪ 貴志とプリクラなんて初めてじゃないかな? もちろん一緒に携帯に貼ってくれるんだよね。』
『 ああ、構わねーけどもう既に二つ貼られてるんだな、これが・・・。』
そう言って貴志は自分の携帯を私に見せる、そこには里奈と撮ったプリクラと夕奈と撮ったプリクラが貼られてあった
『 あっ!? そう言えばあの時に撮ってたんだっけ、まだ貼ってたんだ。』
あれは貴志達に私の過去を打ち明けた時だった、その後ゲームセンターで行って里奈と夕奈にプリクラをせがまれてたんだったわね
『 まぁしょうがないわね、私で三つ目かー、ちゃんと大事にしなさいよー。』
『 へいへい、毎日拝ませて頂きますよ。』
プリクラを撮ってゲームセンターで一通り遊んだ後はまた街中を当てもなく歩き回る、貴志といろんな場所に行けて満足できたデートも気がつけば空が暗くなる時間になっていた、貴志も時間を気にしてか帰宅を切り出してきた
『 そろそろ帰ろうか、あんまり遅くなるのも悪いしな、今日は楽しかったぜ、サンキュな彩花。』
『 感謝してるならまたデートしなさいよね! ・・・今度はちゃんと行き先を決めとくからさっ。』
なんだかんだで充実したひと時だったけどまだ今日だけで貴志と恋仲になれるなんて思っちゃいないし慌てなくてもいいわ、じっくり時間をかけて貴志の気持ちを私に向けさせるんだからねっ、待ってなさいよ〜、た・か・し♪
次回は奈津美? それとも・・・。