第八十話
今回で夕奈のデート編はラストです。
お兄さんとの人生初デート、途中に小学生時代の友人だった飛鳥と出会うハプニングがあったものの昼食を食べ終えた後、私はある事をお兄さんに告げた
『 ・・・お兄さん・・・、この近くに・・・、新しく出来た・・・、室内プールの施設があるんですけど・・・、一緒に行きませんか?・・・。』
自分で言っときながら赤面してしまう、少し子供っぽいけど私はどうしてもお兄さんと行ってみたかった
『 俺はいいけど、水着とかあるのかな? 』
『 ・・・向こうに行けば・・・、水着を・・・、貸してくれますから・・・。』
『 そーなんだ、なら行ってみようか、室内プールとか初めて行くなー、しかし夕奈ちゃんがそんな人の多そうな場所に誘うなんてな・・・、ちょっと驚いたよ。』
『 ・・・私が・・・、そんな場所に誘ったら・・・、おかしいですか・・・。』
お兄さんの何気ない一言に少しショックを受けた、やっぱり私みたいな地味で暗い女の子が誘う場所じゃないのかな・・・
『 あっ・・・、いやっ・・・、そんな変な意味で言ったんじゃないからさ、気分を悪くしちゃったんなら謝るよ、ごめんな、ただ夕奈ちゃんもこの前の別荘で言ってただろ、人が大勢集まるのが苦手だったてさ、それが里奈や俺達と出会ってからは俺達となら楽しいと思える様になったんだろ。』
確かに言った、里奈やお兄さん達と出会う以前の私は人と接するのが苦手だった、こんな喋り方だし・・・、1人の方が気楽に思えた
『 でも今は俺達以外の人がたくさん居る場所にも積極的に行こうとしてるだろ、それで俺は思ったのさ、夕奈ちゃんは変わったんだってね、夕奈ちゃんが自分の力で殻を打ち破ったのが嬉しかったんだよ。』
お兄さんは本気でそう言ってる、嘘じゃないのはお兄さんの顔を見れば分かる、私は思わず泣き出しそうだった、自分では気づかなかったけどお兄さんがそう思ってくれてたのが凄く嬉しかった
『 ・・・ありがとう・・・、お兄さん・・・、そう言ってくれて・・・、私・・・、お兄さんや里奈・・・、それに友成先輩達に出会えて・・・、本当によかったです・・・。』
私は思った気持ちを正直にお兄さんに伝えた、するとお兄さんは少年の様な屈託のない笑顔を私に向けて話しだす
『 俺も夕奈ちゃんに出会えて本当によかったよ、料理は上手だし友達想いで他人を思いやれる優しい心を持ってる、その上ポニテの似合う美少女だなんてそうそういないしな、それより早くプールに行こう、時間がなくなっちまうよ。』
お兄さんの容赦ない褒め殺しに私は夢でも見てるのかなと勘違いしてしまいそうだった。
室内プール施設に着いた私達は水着を借りて着替えた後、プールの入り口で落ち合う、お兄さんは私を見て喜んでるみたい、お兄さんもやっぱり男なんだね
『 おおーっ、いーよ夕奈ちゃん! 案外貸し水着もいいのがあるんだな・・・、こんな美少女と一緒に泳げるなんて俺も果報者だよ。』
貸りた水着は黒と青と緑の三色が混じった少々派手な競泳用の水着だった、多少恥ずかしいけどお兄さんが喜んでるのなら私は満足だった
『 ・・・行きましょう・・・、お兄さん・・・、今日は・・・、2人だけだから・・・、私・・・、ワクワクしてます・・・。』
お兄さんに寄り添う様にプールへ入っていく、いろいろなタイプのプールを楽しみお兄さんと至福の時間を過ごした。
お兄さんが喉が乾いたらしく何か飲み物を買いに行っている、その時、たまたま1人だった私に2人組の男の人が声を掛けてきた
『 ねー、彼女ー、1人で来てるのー、よかったら俺達と遊んじゃわない? 』
嫌に決まってる、なんでこんな人達と遊ばなきゃいけないの!! 私が遊ぶ男子はお兄さん達三人だけなの
『 ・・・あの・・・、男の人と・・・、来てますから・・・。』
『 そんな見え見えのウソ言わなくてもいいからさー、いっぱい楽しませてやるぜ、そしてその後は・・・。』
『 あの〜、何してるの? その子、俺の連れなんだけど。』
しつこい2人組にうんざりしてた私を金髪の騎士が助けに来てくれた、その瞳は2人組をしっかり見据えていた
『 ・・・別になんでもないから、それじゃ・・・。』
お兄さんを見た2人組はそそくさと立ち去った、正に戦わずして勝つ、お兄さんの金髪頭にはこんな効果もあるのね
『 大丈夫だったか、夕奈ちゃん、ごめんな、俺が飲み物なんか買いに行ってて夕奈ちゃんを1人にしたから・・・。』
何故お兄さんが謝るの? 私をちゃんと守ってくれたのに・・・
『 ・・・私は・・・、平気です・・・、お兄さんが・・・、一緒にいるから・・・、そんな事忘れて・・・、いっぱい・・・、遊びましょ・・・。』
それからは日が暮れるまで存分に室内プールを楽しんだ、帰り道もお兄さんといろんなお話をしながら歩いた、そしてデートが終わって改めてはっきり分かった、私はどうしようもないくらいにお兄さんの事が好きなのだ、ライバルの三人、里奈と奈津美先輩と彩花先輩は手強いけど私だって負けたくない! 私の挑戦は始まったばかりなんだから・・・。
次回は多分、彩花編かな・・・。