第七十二話
世間はもう年末です、作中は夏ですけど・・・。
水族館から出た俺達は友成の顔なじみの人が営んでるというラーメン屋さんに寄って少し早めな夕食をとる事にした、友成の案内で来た店はいかにも老舗の風格が漂うラーメン屋だった、友成がドアを開け店に入るといきなり威勢の良い声が店中に響き渡る 『 よぉ〜、真ちゃん! いずみちゃんも! 随分久しぶりじゃねーか、それになんだ、今日はまた大勢連れてきてよぉ、皆真ちゃん達の友達なのかい。』 随分と陽気な人みたいで友成やいずみちゃんとの仲も良さそうだ、というかいずみちゃんとも顔見知りだったのか、そういえば友成といずみちゃんは幼なじみだったんだよな 『 ご無沙汰してます、信介さんも相変わらず元気そうですね、この店も変わってなくて安心ですよ。』 友成も久しぶりの再会を喜んでる様だ、友成の話だとラーメン屋の主人である信介さんと友成の父親が高校生時代からの親しい友人であり友成も小さい頃から父親と別荘に遊びに来た際には必ずこのラーメン屋に寄ってるとの事だった 『 信介さん、お久しぶりです、そう言えば茜さんは何処ですか? 出前とかですか。』 いずみちゃんも和やかに信介さんと挨拶を交わし茜さんとかいう人の所在を聞く、すると信介さんがえらくニヤけた顔になった 『 茜なら今病院だよ、その・・・、あれだ、生まれるんだよ、三人目が・・・、へへへっ。』 心底嬉しそうに報告する信介さん、それを聞いた途端、友成といずみちゃんが声を揃えて祝福の言葉を贈る、俺達も簡単ではあるがお祝いの言葉を掛けた 『 へへっ・・・、ありがとな、よぉし、腕によりかけて作るからよ、ジャンジャン食べてってくれ。』 まだニヤけてる信介さんは腕まくりして厨房へ向かう、店には今のところ俺達しか客がいないがそれについてはいずみちゃん曰わく 『 この店、今の時間はほとんどお客さんが来ないんです、その代わり夜になると客足は増えるらしいですよ、常連さんも結構居るみたいで地元じゃ人気店って評判なんです。』 知られざる名店ってヤツか、メニューもラーメン屋にしてはいろいろと豊富だし値段も庶民に優しい設定なのが人気だという評判に結びついてるんだろうな、メニューを見終えて注文を頼み始めた。 俺達は信介さんが作りやすいだろうと最初は全員同じのラーメンセットを頼む、ラーメンは醤油ベースのスープに細麺と常連客がつくのが納得できる味だった 『 美味しいです〜、特にスープがさっぱりしてて飲みやすいですね。』 『 ・・・麺も美味いです・・・、スープと上手く絡み合って・・・、後味もいいです・・・。』 里奈や夕奈ちゃんも相当の高評価だ、他の皆も旨そうにラーメンをすすってる 『 そうかい! お客さんに美味しいって言ってもらえるのが飲食業やってて一番嬉しいからなっ、ほら、これは俺からの奢りだ、皆で食べてくんな! 』 里奈達の賞賛に喜んでる信介さんはホクホクと湯気を立ててる出来たてのシュウマイを出してきてくれた 『 そんな、奢りだなんて悪いです、ちゃんと代金はお支払いしますわ。』 奈津美さんは申し訳無さそうに言うのだが肝心の店主が全く聞く耳を持たない 『 気にすんなよ嬢ちゃん! このシュウマイ以外の代金はちゃんともらうからよ、せっかく来てくれたんだし今日は腹一杯にして帰ってくれや。』 こんなんで店の経営は大丈夫なのかと思うがいずみちゃんの言う通りなら心配ないんだろうな、シュウマイが無くなると今度は麻婆豆腐にカニ玉、水餃子の入った中華スープを頼んで二時間あまりでたらふく食いまくった、特に友成といずみちゃんの食欲は驚異的だったが2人は太らない体質だと言う、羨ましい限りだ 『 あ〜、ラーメン屋でこんなに食べたのって初めてねー、どの料理も美味しかったし満足よ。』 『 俺も満腹ですよ、ご飯がおかわり無料だからいっぱい食っちゃって・・・、御馳走様でした。』 最後にデザートの杏仁豆腐を頬張りながら四森姉弟が心地良さげに呟く、その声を聞いた信介さんも厨房から返事を返してくる 『 そっか、よかったらまた来てくれよ、いつでも待ってっからな。』 デザートも食べ終え勘定を払う、9人であれだけ食べてピッタリ一万だ、本当に計算合ってるのかな 『 信介さん、今日は御馳走様でした、茜さんにも元気な赤ちゃんが生まれるのを願ってますから。』 夜になり店に客が入ってるので店を出る前に友成が信介さんに挨拶をする 『 おう、茜もきっと喜ぶぞ、真ちゃんもいずみちゃんも友達の皆も元気でな、本当にまた来てくれよ! 』 仕事中でも信介さんは友成や俺達に挨拶をしてくれる、できればもっと話をしてみたい人だったな、店を出た後に俺はそんな事を考えてた。
誠に勝手ながら大晦日と正月1日、2日、3日は更新を休ませてもらいます、こんな作品でも期待してくれてる人がいるなら申し訳ありません。