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大切な人達  作者: 曹叡
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第七十一話

今回で水族館でのお話は終わりです。

 水族館にてたまたま見知った小学生の兄妹、妹の弥生ちゃんが泣いているトコを兄が慰めてる場面に遭遇したのだが泣いてた理由が少し淋しいものだった               『 俺達ギリギリしかお金持ってきてないんだ、父さんには黙って来たからお金とか貰ってないし・・・、昼ご飯も食べてないから弥生もお腹がすいて泣いてるだけなんだよ。』                『 お腹すいてんのか、だったら俺達と来るか? ちょうど今から昼飯にしようと思ってたトコだしな、金は俺が出すからさ。』              泣いてる弥生ちゃんが可哀相になった俺はこの兄妹も一緒に昼飯に誘う事にした、幸い金には余裕があるので二人分の昼飯代に困る事はなかったしこの兄妹には俺と里奈に似てるトコがあるように思えたのだ               『 えっ、本当ですか! おいっ、弥生! 昼ご飯が食えるぞ、本当にありがとうございます、会ったばかりの俺達の為に・・・。』             少年は俺達に深々と頭を下げる、弥生ちゃんも泣き止んで笑顔を見せてくれた              『 それじゃあ行きましょうか、真司君達に知らせなきゃいけませんわね。』              奈津美さんや彩花が友成達に電話して近くのレストランにて待ち合わせをする、ほどなく友成や蒼太達もレストランにやってきた              『 おおっ、君達が奈津美さんの言ってた兄妹か、何も気にしなくていいから好きな物食べろよ。』               友成が気さくにその兄妹の緊張を和らげてやってる、友成は子供好きらしいからな、誰よりも早く兄妹と親しくなってるみたいだ。  レストランで食事をする内にだいぶ兄妹も俺達と打ち解けてくれた、兄の名は龍太といい小学五年生、妹の弥生ちゃんは小学三年生で父親は日頃から忙しい銀行の役員、母親も有名ブランド店で夜遅くまで働いててほとんど両親と遊んだりする機会がないとの事               『 まあ親御さんも家庭の為に一生懸命働いてるってのは分かるけどなぁ、でもなんで今日来たんだ? 両親が確実に休める日でもよかったんじゃないか。』              俺がそう聞くと弥生ちゃんは最初見た時にしてた淋しそうな目をした、なんか悪い事でも言ったのかな              『 俺達、明後日に引っ越すんですよ、父さんの仕事の都合で・・・、弥生がここのアシカショーをどうしても見たいって言うからどうしても今日じゃなきゃ駄目だったんです、明日はもう父さん達と一緒に引っ越しの準備をしなきゃいけないから・・・。』                なるほどね、妹のささやかな願いを叶えたかったわけか、妹思いの優しい兄じゃないか、同じ兄として感心だな               『 私も早苗ちゃんや由香里ちゃんと別れたくないよ、せっかく仲良くなったのに、でもパパは仕事だからしょうがないって言うんだもん!! パパやママなんて自分達の事ばかりで私やお兄ちゃんの事なんかちっとも考えてないんだよ!! 』            突如、弥生ちゃんが長い間溜めていたであろう思いの丈をぶつけ始めた、彼女の気持ちも分からないじゃないがこればっかりはしょうがないだろう                  『 弥生ちゃん、友達と別れたくない気持ちは分かるよ、でもお父さんもお母さんもきっと悩んだと思うよ、だから元気出そう、大丈夫、弥生ちゃんも龍太くんも新しい学校で新しい友達がきっとできるから。』              今にも泣き出しそうな弥生ちゃんに里奈が優しく語りかける、不幸な幼少期を歩んだ里奈にはこの兄妹がどことなく自分と俺にダブったのかもしれない                『 本当に・・・、私、新しい友達できるかな? 』            弥生ちゃんの表情に笑顔が浮かんできた、里奈も迷う事なく首を縦に振る               『 それじゃあ皆もお昼を食べ終わった事だしアシカショーに行こうよ、龍太くんや弥生ちゃんも私達と一緒に来ましょ。』                皆の昼飯が終わったのを確認していずみちゃんが明るい口調で龍太達を誘う、今日はこの兄妹にいい思い出を作らせてあげたいという思いは皆同じなんだな。  昼過ぎから開催されるアシカショーには既に大勢の家族連れなどで賑わっていた、俺達は後ろの方の席だったがそれでも龍太達はショーが始まるとその光景に目を奪われていた                 『 凄いなー、アシカってあんな事も出来たんだ。』            『 本当だねお兄ちゃん、でもあそこのアザラシも可愛いかったな〜。』               アシカだけではなくアザラシやラッコ、イルカのパフォーマンスに龍太達は大いに喜んでた、これならいい思い出も出来ただろう              『 さあ、まだまだ面白いアトラクションはたくさんあるからね、行きたい所に案内してあげるよ。』              蒼太の言葉にまだ興奮冷めやらぬ様子の龍太達兄妹が満面の笑顔で頷く、それから二時間くらいはいろんなアトラクションを見て回って大方この水族館の全ては見尽くした、気付けば夕方近い時刻になり龍太達も帰らなきゃならない時間がきたと申し出た                  『 貴志さん、里奈さん、それに皆さんのお陰で本当に今日は楽しかったです、この町での最後に楽しい思い出が出来ました! 』              『 私も新しい学校で頑張るから、里奈姉ちゃん達も頑張ってね、ありがと。』            別れ際の龍太と弥生ちゃんは最初の元気のなさがウソの様に明るかった                『 俺達も楽しかったよ、龍太も弥生ちゃんも元気でな、新しい学校でいっぱい友達作れよな、縁があったらまた会おうぜ。 』               俺はそう言って龍太と弥生ちゃんの頭を撫でた、2人共嫌がる事なく笑ってる、名残惜しそうに俺達と別れ去っていく兄妹の未来が幸せである事を願いながら俺達は見送っていた。

そろそろ別荘編も終わりに向かってます、夏休みは続きますが・・・。

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