第七十話
水族館でのお話です、自分は水族館など二十年くらいは行った事がありません。
水族館で見かけた小学生の男女2人は特に女の子の方が淋しそうな目をしていた、どうにも気になるな 『 貴志くん、何を見てるんです? 気になる魚でも見つけたんですか。』 『 ・・・あっ、いや、何でもないよ、それより他のトコも見に行こうか、まだいろんな生き物がいるんだから見なきゃ損だよ。』 子供達と見つめ合ってた俺に奈津美さんが話しかけてくる、とりあえずあの子達の事は置いとこう、奈津美さんに他の場所もまわろうと促し俺達はこの場から離れた。 今度はプールの中の生き物に直に触れる事のできるエリアに来た、サメやらエイやらいるがよく調教されててとても芸達者だ 『 キャ〜、大丈夫かな〜、ねえ四森くん、襲いかかったりしないかな? 』 『 水族館にいるサメが人を襲う訳ないだろ、大丈夫だから鈴木さんも触ってみなよ、こんな経験めったにできないんだから。』 サメに怯える紗恵ちゃんに蒼太が穏やかに言い聞かせる、蒼太の説得が実を結び紗恵ちゃんの手が恐る恐るサメに触れると 『 あっ・・・、なんか私、思ったより平気かも・・・、サメって結構スベスベしてるんだねー。』 さっきまでのビビり様はどこへやら、すっかりサメに触りまくってる紗恵ちゃんに蒼太は呆れ顔だった。 他のみんなもエイとかアザラシとかセイウチなどいろんな生き物に触れていきそれぞれ楽しんでいる、そんな中、いつの間にか友成はいずみちゃんと、蒼太は紗恵ちゃんとそれぞれ2人っきりになって少し離れた所にいた、俺の周りにはもちろんいつもの4人が離れる事なく引っ付いている 『 お兄ちゃん、里奈達も行こうよ、まだ見てないトコもあるんでしょー。』 『 ・・・そうね・・・、せっかく来たんだし・・・、私もまだいろんなお魚さんを・・・、お兄さん達と一緒に・・・、見てみたいです・・・。』 『 そうそう、この水族館って予想以上に面白いわよ、あんなセイウチとか見たことなかったんだから、貴志はどれか見てみたい魚とかいないの? 』 『 私達は貴志くんの行く所ならどこでもお供しますわ、今日は貴志くんから離れませんからね。』 4人の美少女は ( 実妹含む ) 揃って俺を見つめてくる、ここで気づいたのだが周囲の視線が変だな・・・、そりゃ男1人に女が4人、目立って当然か 『 それじゃあっちの熱帯魚コーナーに行ってみるか? あっちはまだ見てないだろ。』 本当は早くこの場から離れたかっただけだ、特にアベックの男性の視線に並々ならぬ敵意を感じたのでアベックがあまりいなさそうな所に行きたかったのだ。 少し歩くと熱帯魚等の小さい魚が見れる水槽が所狭しと並べられてる部屋に来た、魚を見るなり里奈は可愛らしい声をあげる 『 可愛いー、ねえねえお兄ちゃん、この魚可愛いわよね、なんて魚かな? 』 水槽の近くにあるネームプレートを見るとエンゼルフィッシュという熱帯魚らしい、他にもグッピーやらネオンテトラなどの熱帯魚に夕奈ちゃんや彩花も目を奪われてる、俺も熱帯魚を鑑賞してたら先程の小学生男女二人組を偶然にも発見した、泣いている女の子を男の子が慰めてたので近づいて声を掛けてみる 『 どうしたんだボーズ、何かあったのか。』 いきなり近づいて声を掛けてきた金髪男に男の子は思いっきり警戒していた、考えたら当たり前だよな、どうしていいか分からずにあたふたしてたら里奈が俺達の所にやってきた 『 お兄ちゃーん、何してるのよー・・・って、誰なのこの子達? 』 里奈の後ろには奈津美さん達も揃ってた、面白い事に男の子の態度が奈津美さん達を見たら露骨に柔らかくなったのだ、このボーズ案外女好きだな 『 この娘はどうして泣いてるのです? まさかキミが泣かせたのですか!』 奈津美さんがキッと睨みつけると少年はあわてて否定した、そして少年は意外な事実を語り出したのだ 『 俺が泣かしたんじゃないよ、本当は父さん達と来るはずだったけど急な仕事で来れなくなったから俺と弥生の2人で来たんだ、俺達は兄妹だよ。』 兄妹だったのかこの2人、あまり似てないけどな、でもなんで妹の弥生ちゃんは泣いてるんだろ、そこを聞いてみると可哀相な事情があった。
見てくださって感謝します。