第六十五話
途中から真司といずみの馴れ初め話です。
あれから卓球は誰も名乗り出なかったので自然にお開きになった、その後、部屋に戻った私は里奈ちゃんや夕奈ちゃんと恋愛トークで盛り上がっていた 『 じゃあ里奈ちゃんの好きなタイプの男性は? 』 『 そんなの決まってるじゃないですか! お兄ちゃん以外ありえません!! 』 はっきりとそんな事が言える里奈ちゃんはある意味凄い、この子には道徳観を超えた何かが感じられる、同じ質問を夕奈ちゃんにしてみるも彼女の答えは里奈ちゃんと一緒だった 『 ・・・私だって・・・、お兄さんじゃない男の人なんて・・・、考えられません・・・。』 この子も青山さん一筋か、分かっちゃいたケドね、この2人と奈津美さんに彩花さんかー、青山さんを巡る乙女の真剣勝負はどんな結末になるのかしらね、興味が尽きないわ 『 いずみさんの好きなタイプはどんな人ですかって・・・、そんなのもう決まってますよね♪ 』 今度は里奈ちゃんが私に話を振ってきた、確かに彼女の言う通りなんだけどね 『 ・・・いずみ先輩はどうして・・・、友成先輩の事を・・・、好きになったんですか・・・。』 夕奈ちゃんも唐突すぎるでしょ、私が答えられずにいると興味津々といった里奈ちゃんが更に押してくる 『 あ〜、私も聞きたいですぅ、確か2人は幼なじみなんですよね、何がキッカケで恋仲になったんですか? 知りたいな〜。』 里奈ちゃんと夕奈ちゃんはジッと強い目で私を見てる、これは逃げようがないわね、観念した私は真兄を好きになったキッカケ話を2人に話し始めた・・・。 ―――――― 私は小学四年生の時、結構なポッチャリ体系だった、融通の効かない頑固な性格もあって同じクラスの男子には嫌われてたと思う、それでも一つ年上の真兄は私と仲良くしてくれた 『 いっずみ〜、どしたんだよー、あんまり元気ないじゃねーか。』 学校からの帰り道、真兄の言う通りに元気のなかった私に近づいてきた真兄は陽気な声で話しかける 『 ・・・なんでもないよ、真司兄ちゃんには関係ないから、ほっといてよ。』 『 関係なくはねーだろ、俺はお前の友達なんだぞ、なんかあったのか、あるなら俺に話してくれねーかな。』 いつも真兄はこうだ、私の心配ばかりしてくれる、私のクラスにはこんな友達なんていないのに・・・ 『 ヒューヒュー、熱いねお二人さん、あんまり熱くて溶けちゃいそうだぜ。』 声のする方には私と同じクラスの男の子が三人いた、彼らは私達を小馬鹿にしたような目で見てる 『 なんだよお前ら、別にお前らに用なんてないぞ、どっか行けよ。』 真兄も彼らの小馬鹿にした視線を感じたのか不機嫌そうに言い返す、でもそれは更に彼らをつけあがらせるだけだった 『 おおっ、照れてやがる〜、やっぱりそんなデブ女でも好きなんだなー、へへ〜、デブ専男〜、そんなデブ女の事が好きな奴なんてお前だけだぜー。』 彼らの幼稚な悪口には慣れてる、こんな奴らに何を言われても私は気にしない、私はそうだったんだけど真兄は違ってた 『 なんだとコラぁ! 今度いずみにそんな事言ったらぶん殴るぞお前ら!! 』 真兄がそう言っても向こうは三人いる、だからだろう全く怯まない、それどころか真兄を挑発してきた 『 おっ、怒った、デブにデブって言って怒ってやんのー、やるのかよ、いくらお前が五年生でも俺達は三人居るんだぞ、逆にボコボコにしてやるぜ。』 『 もういいよっ、行こう真司兄ちゃん、こんなのほっといて早く帰ろう。』 私は真兄の腕を無理やり引っ張りその場を離れる、後ろからは彼らの笑い声が聞こえたけど相手にしない、真兄にケンカなんてしてほしくなかったから 『 なあいずみ、お前っていつもあいつらからあんな事言われてんのか? だったらなんで俺に言わないんだよ、友達だろ俺達は! 』 あの連中からだいぶ離れた所で真兄は私に詰め寄ってくる、その表情は私が侮辱された事への怒りとその事を相談されなかった悔しさが入り交じっていた 『 ごめん・・・、真司兄ちゃんに心配かけさせたくなかったから・・・。』 『 なんでそんなふうに考えるんだよ! 友達を心配するのは当たり前だろ!! 』 『 ・・・うん、ごめん・・・、ごめんね真司兄ちゃん、こんな私でっ。』 私は真兄の顔を見る事が出来なくなりたまらず走り出した、こんな私を本気で心配してくれる優しい真兄、私はもう何をどうしたらいいか分からなかった。
この過去話は次回も続きます。