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大切な人達  作者: 曹叡
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第五十八話

真司視点で進む過去話です。

 高校生になって一月あまり経ったある日、ウチのクラスに転校生がやってきた、そいつは頭を金髪に染めてはいるが服装は普通のなんかアンバランスな奴だった、その男の名は青山貴志、挨拶も普通とますますわからん奴だ、休み時間にはクラスの女子達が青山に              『 ねえねえっ、青山くんたらハーフだったりしちゃうの? 』                    『 もしかして青山くんって懐かしのヤンキー君だったりする? 』                  といろいろ聞いている、苦笑しながら青山は答える              『 別に俺は不良でもハーフでもないよ、転校をきっかけに以前の自分を変えたくなっただけだから。』              よく分からん答えだな、でも不良とかじゃないんだろ、それでもまだ青山に質問責めを続けている女子達にクラスの問題児である相良美奈子 ( さがらみなこ ) がうっとおしそうに               『 うるさいわねー、たかが転校生一人にさー、ここは中学校じゃないんだよっ、恥ずかしい!! 』                またいつもの如くクラスメートに噛みつく、彼女はいつもこうだ、誰とも仲良くしようとせず常に一人、当然友達なんていやしない、割と可愛いのにもったいないな、美奈子から言われた女子達は美奈子に悪態をつきながらも青山から離れていきすぐに休み時間も終わった。                     青山が転入して五日後にある事件が起きた、体育の授業が終わり学生服に着替えたら俺の財布が無くなっていた!! 二万も入ってたのに、男子は皆一緒に体育をしてたから犯人の訳がない、体育の授業の前には財布はあったのだから、だが女子に話すと意外な事実が分かった、美奈子が体育の授業時間にいなかったのだ、体調が悪いと言って休んだらしい、俺はすぐに美奈子を問い詰める                  『 美奈子! お前体育の時間どこにいたんだよ? 俺の財布がその時間に無くなったんだけど、お前、何か知らないか? 』                 なんか美奈子を犯人と思ってる様に聞こえる俺の詰問に美奈子は反論する               『 知らないわよ、私が教室に来た時は財布なんて無かったし、それに大体学校にそんな大金持ってくる方が悪いんじゃない。』              そのあまりな言い方につい美奈子を怒鳴ってしまう              『 逆ギレかよっ、この犯罪者が!! 人の財布盗っといてとぼけるなよ。』              自分で言っといて酷い事言ったなと思ったがもう遅い、だがそんな睨み合う俺達に青山が間に入ってきた              『 友成くん、言い過ぎじゃないのか、もし相良さんが犯人じゃなかったらどうするんだ。』              確かにそうなんだが今の俺にはそんな青山の言葉も耳に入らなかった                 『 なんだよお前、関係ねーだろうが、それとも美奈子が盗ってない証拠でもあんのかよ。』                  つい青山にもきつく当たるが青山は意に介さず               『 証拠なんてない、でも相良さんがあんたの財布を盗った証拠もないだろ、体育の時間にいなかっただけだ、それだけで相良さんを犯人だなんて決められないんじゃないのか。』               耳が痛くなってきた、ばつの悪くなった俺は逃げるように学校を早退した。              そして3日後、放課後に青山から誘われて俺は青山と共に体育館裏へ行く、そこで青山から                   『 友成くん、これ、相良さんから・・・。』               青山が俺に渡したのはなんと無くなった俺の財布だった、思わず青山の胸ぐらを掴みかかるが青山は俺の手を離そうとせずに悲痛な表情で話を続ける                 『 ・・・相良さんが昨日の夜に俺の家に来てね、その時に渡されたんだ、友成くんには本当に悪い事をしたって悔いてたよ。』              そういえば美奈子は俺が財布を無くした次の日から学校を休んでたな、けどやっぱり美奈子だったんじゃねーか、しかも俺にじゃなく青山に渡すとか何なんだよ、それを青山に問うと              『 どうしてもあんたに会う勇気が出なかったって言ってたよ、それに彼女はもう学校を辞めたんだ、これからは家族の為に働くらしい、まだ15なのにな。』              学校を辞めた? その事実に驚くもとりあえず青山から手を離し財布の中を確かめる、金も無くなった時のままで全く手をつけた様子はなかった、俺はふと気になった事を青山に聞く              『 そもそもお前と美奈子はどんな関係なんだよ、お前って一週間前に転入してきたばかりだろ。』               青山が理由を話してくれたがそれはあまり聞きたくない内容だった                  『 俺が転入した日の帰りにウチの近くでたまたま怪我をしていた相良さんに会ったんだ、バイト中に怪我してね、強引にウチに誘って手当てをしている時に彼女と話をしたんだよ、相良さんの家は早くに父親を亡くし母親は今重い病で入院してて相良さんがなんとか生活費を稼いでるんだそうだ、まだ小さい弟や妹がいるし他に頼れる身内もいないってね・・・。』               それだけでおおよその見当はついた、多分日頃から金銭に苦労してるであろう美奈子はあの日、誰もいない教室でたまたま見つけた俺の財布を見てつい魔が差したんだろうな、確かに美奈子も可哀想だけどさ、だからって人の財布を盗むのは・・・                 『 友成くん、相良さんは本当に後悔してたんだ、あんたの財布を盗った事を、許せとは言わないけどせめて追いつめられてた彼女の苦しみだけは分かってやってくれないかな、この通りだ、頼む。』                  そう言って青山は俺に土下座をする、なんで美奈子の為にここまでするんだよ              『 ちょ、青山、頭を上げろって、なんでだよ、なんで美奈子の為にお前がここまで・・・。』                 無理やりに青山を起き上がらせる、俺には青山がここまでする理由が分からなかった、やがて青山は目を伏せて話し出す                  『 ・・・泣いてたんだ、彼女・・・、俺には里奈って妹がいるんだけど、怪我の手当てをしてた時にその里奈が作ったおにぎりを食べて、ポロポロと涙を流して泣いてたんだ・・・、そんな彼女を見てたら少しでも救ってやりたいと思った、それだけだよ。』               そういう事だったのか、青山はそんな美奈子を信じてやりたかったんだな、青山の想いに触れた俺は               『 青山、もう分かったから、財布の事は誰にも言わない、美奈子もきっと辛かっただろうしさ、それよりお前って凄いよ、そんな派手な頭してるってのに一週間前に知り合ったばかりの美奈子の為にそこまでできるもんな、俺にはとても真似できない・・・、けどお前とはなんか上手くやれそうだ、これからは仲良くしようぜ、なっ。』                こうして青山とは友達になった、元々俺と青山は性格の相性も良くすぐに親友と言える仲になった、その仲は今も続いている・・・                ――――――                『 ・・・とまあこーゆー事があったんだよ、青とはその時からの親友なんだ、なあ、青。』                  話を聞いてたいずみや奈津美さん、四森姉弟達は皆、何か複雑な表情をしていた、里奈ちゃんや紗恵ちゃんなんて今にも泣き出しそうだ、そんな重い空気の中、一番最初に口を開いたのは奈津美さんだった                『 真司くん、その後相良さんはどうなったのかしら? 私達はただの転校だと思ってたけど・・・。』              その質問には俺の代わりに青山が答えてくれた               『 相良さんが退学したすぐ後に彼女のお母さんが亡くなったそうだ・・・、それからは遠くの親族が引き取ったらしい、その後はもう俺達も分からないよ。』            青山が話し終えると紗恵ちゃんが泣き出してしまった、泣きながら彼女は               『 ううっ・・・、美奈子さんが可哀想すぎますぅ、グスっ、確かに友成先輩の財布を盗ったのは悪い事だけど・・・、でも誰か美奈子さんを助けてあげられなかったんですか!! 』               紗恵ちゃんの悲痛な叫びを聞いた俺は彼女をなだめる様に優しく話す                 『 確かに当時の美奈子は不幸だったかもしれない、でもだからって未来まで不幸になるとは限らないだろ、大丈夫、きっと美奈子なら幸せになるよ、俺はそう信じたいんだ。』                『 真兄・・・。』                俺がそう言うといずみ達の表情が少し明るくなった、それを見てこの話を皆にしたのは間違いじゃなかったと確信した、美奈子の幸せを願いながら俺達は日付が変わるまで笑いながらいろんな話をしていった。

やっと1日目が終わった・・・。

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