第六話
今回は夕奈視点です。
私は今、里奈の家にお邪魔させてもらっている、この家は里奈とお兄さんの2人暮らし、何故そうなのか事情も知っている。
およそ2年前、中学2年生になって1ヶ月ほど経った頃、里奈は転入してきた。
私は自分から他人に話しかけるのが少し苦手だったけど家が歩いて5分の距離にあるご近所同士で明るく人懐っこい性格の里奈とは登下校を一緒にしてる内にいつしか親友になっていた。
里奈はどんな事でも明るく話してくれたし、私の話もいつも聞いてくれた。
そして、初めて里奈の家に遊びに行った時に里奈の兄、貴志さんに出会った。
『 おかえり里奈、おっ、今日は友達と一緒か? いらっしゃい。』
私はそこにいた髪の毛を金色に染めた男性を見て明らかに動揺していた
『 うん、里奈の友達で秋野夕奈ちゃん、かわいいでしょー、それに家もすごく近所なんだよ。』
私の動揺も気にせずにいきなりそんな紹介されて私の顔が赤く染まっていく
『 ああ、可愛い可愛い、そのポニーテールも良く似合ってるよ、やっぱもう彼氏とか居たりすんの? 夕奈ちゃんくらい可愛かったらクラスメートとかほっとかないだろう。』
貴志さんが興味深そうにそう言うと里奈が
『 お兄ちゃん、年頃の女の子にそんな事聞いたりしないの! それより今日は帰るの早いんだね。』
『 ああ、今日までテスト期間だったからな。』
『 そうなんだ、それでテストはどうだったの? お兄ちゃんってあんまり勉強得意じゃないもんね。』
『 うーん、まあ赤点がなけりゃ御の字だろ。』
『 もうっ、そんなんで大丈夫なの、そうだ、夕奈ちゃんに勉強教えてもらったらいーよ、夕奈ちゃんって頭も良いんだよ。』
『 ははっ、高校生の俺が中学生に勉強教えてもらうのかよ、でも間違いなく俺より夕奈ちゃんの方が頭イイだろーな。』
貴志さんは私を見て微笑んでいる、見た目は金髪だけど笑顔は優しそうだった
『 うふふっ、だけどお兄ちゃん運動は凄いじゃない、学校でも友さんと1、2を争うくらいなんでしょ、それも立派な事だよ、自信もちなよ、お兄ちゃん。』
『 ありがとな里奈、あっ、今からちょっと出かけるけど何かあるか。』
『 どこ行くの? 』
『 今日発売の雑誌買いに行くだけだけどついでに何か買ってきてやろうか。』
『 じゃあ明日からのおかず買ってきてもらおーかな、それじゃちょっと待ってて、メモするから。』
『 おう、夕奈ちゃんも何か欲しいのあるかな? 』
貴志さんって思ったよりずっといい人みたいだ、里奈との仲も好いし、初対面の私も気遣ってくれている
『 いえ・・・、特にないですから・・・。』
『 遠慮しなくてもいいよ、例えば今ちょっと食べたい物とかさ、読みたい本とか何でもいいから。』
貴志さんに言われ私はふと考える、すると里奈がはっと思いついた様に
『 それじゃあね、○○堂のチーズケーキにしようよ、夕奈ちゃんも好きなんだよね、3人で食べよ♪ 』
里奈の言う通り○○堂のチーズケーキは確かに私も好きだけど頼んでいいのかなと迷ってたら貴志さんが私に聞いてきた
『 夕奈ちゃんはそれでいいのかな? よかったらそれを買ってくるけど。』
私も正直久しぶりに食べたかったし多分私が遠慮しても貴志さんはいいからって引かなさそうだから
『 はい・・・じゃあ・・・お願いします・・・。』
『 よし、じゃあちょっと待ってて、なるべく早めに帰ってくるからさ。』
里奈からメモを受け取り貴志さんは出かけていった
『 いってらっしゃーい、忘れ物しちゃダメよー。』
それから里奈と雑談したりして待ってると1時間ほどで貴志さんが帰ってきた。
忘れ物も無く貴志さんは買ってきた物を冷蔵庫に入れたりして整理してた
『 ねえお兄ちゃん、片付け終わったら里奈達と一緒に遊ぼうよ。』
『 おいおい、中学生の女の子が高校生男子と一緒に遊んだりしていいのか? 俺は構わないけど夕奈ちゃんはいいのかい? 』
『 私なら・・・別にいいですよ・・・。』
『 ほらっ、夕奈ちゃんもいいって言ってるじゃん、いこうよ、お兄ちゃん。』
それから私達は里奈の部屋で3人でトランプしたり、貴志さんが持ってきたTVゲームとか、里奈と貴志さんの小学卒業アルバムを見せてもらったり、夕暮れくらいまで楽しい時間を過ごした。
帰りに貴志さんが家まで送ろうかと言ってくれたのがなんだか嬉しかった。
私は貴志さんとも交流を重ねるにつれ見た目への怯えもなくなりいつしか貴志さんをお兄さんと呼ぶようになった、両親のいない青山兄妹だけど2人で支え合って明るく生きてるのが分かる、親に恵まれなかった里奈だけど素敵な兄には恵まれた、そして今に至る。
私はもうすぐ高校生になる、もちろん里奈と同じくお兄さんのいる東明高校に受験した、教師が言うにはもっとレベルの高い高校に行けるのだがそんなのに興味はない、私は里奈やお兄さんと一緒の高校がいいのだ、両親だって無理やり納得させた、お兄さんと同じ高校生活、たった1年しかないけどそれでも私は・・・、好きな人と同じ学校に行きたかった。
見てくださってありがとうございます、次話は奈津美の話です。