第二十九話
今回も真司視点です。
あと二十分、あと二十分で昼飯の時間になる、今日の昼飯は朝の登校時にいずみから渡された美鈴さんの手作り弁当だ、いつも学食のパンとかだったからこれは素直に嬉しい。 いつも里奈ちゃんが作る青山の弁当を羨ましく思ったものだが今日は俺も女性の手作り弁当だ、少々年上の女性だけどな キ〜ンコ〜ン 午前の授業を終える鐘が鳴り響く、いつものメンバーが集まり昼食を食べようとすると青山が俺の持つ弁当を見てニヤリと言う 『 おっ、友、そりゃいずみちゃんの手作り弁当か、いい奥さんだな。』 『 違うな、これはいずみのお母さんが作ってくれたんだよ。』 『 へー、いずみのお母さんが作ったんだ、でもなんでいずみじゃないの。』 当然の疑問を彩花が聞いてくる、別に隠す事じゃないし正直に話そう 『 いずみの料理はちょっと残念なレベルでな、今はお母さんに習ってるんだよ、いつかは俺に美味しい料理を食べさせてあげたいと言ってな、俺は絶対にいずみが美味しい料理を作るって信じてるよ。』 ・・・かなり照れるな、でも高野さんは聖母のような笑みを浮かべ俺に言った 『 そうだよ、好きな人の為に努力するいずみさんならきっと作れるわ、そんないずみさんの事を誰よりも分かってる真司君がそう信じてるんだもの。』 いい娘だよ、本当に、さて、ご開帳といきますか、俺は弁当箱のフタを開けて 『 あーーー、俺ってば用事があったの忘れてたっス、先に食べてていいからっ、グッドラック。』 怪訝そうな顔をしてる青山、高野さん、彩花を尻目に俺は弁当箱を持ち一目散に教室を飛び出した。 校舎裏に駆け込み一息つく、美鈴さんの弁当を改めて見るとそぼろで作った目立つハートマークがあった、あんな話の後でこんな弁当は見せられないよな、しかし美鈴さん、これは冗談が過ぎるよ、一度言っておいた方がいいかな、とにかくここで食べるか、味は旨い弁当を食べてると少し離れた所から聞き覚えのある声の男女の話し声が聞こえてきた 『 いいか、理子、今赤ちゃんとか産んでも皆が不幸になるだけだ、堕ろすしかないんだよ。』 『 嫌ぁ、恭介の赤ちゃん産みたいよ、堕ろせなんて酷い事言わないでぇ。』 工藤と前田だった、やはり前田は工藤の子を妊娠したみたいだな、馬鹿な奴らだ、まあ、俺達には一切関係ないけどな、どうするつもりだろ 『 とにかく絶対駄目だからな、どうしても産みたいなら俺と別れろ。』 あら〜、最低ですな、泣きじゃくる前田を無視して工藤は立ち去って行った。 まあ、可哀想といえば可哀想だけどこの女は自業自得の色が強いんだよな、いい社会勉強になっただろ、うん、今日も空は蒼かった 『 友・・・、君。』 げっ、見つかってしまった、こういうの苦手だよな、無視してこの場を去るか、俺には関係ないし 『 ・・・見てたんだ、いい気味でしょう、笑っていいのよ。』 開き直ったのか、笑ってやってもいいが俺はそこまで鬼じゃない 『 これも恋愛だよ、いい人生勉強になったと思うんだな、赤ん坊の事はちゃんと親と話し合った方がいいよ。』 それだけ言って立ち去ろうとしたがまた前田は話しかけてくる 『 青ちゃんに・・・、話すの。』 『 話さねーよ、もう青はアンタとは関係ないしな、今の青は毎日がすっげえ楽しそうだし、きっとアンタと付き合ってた頃よりもな。』 『 そっか・・・。』 あのハーレム男に言う必要はないし知る必要もない、今のアイツの日常にこの女はもう邪魔なだけだ 『 今の青ちゃんの目には私なんか入らないんだね・・・。』 それだけ言い残して前田は立ち去った、もう遅いんだよと思いつつ俺は残りの弁当を食べていった・・・。
見てくれてありがとうございます、また次回。