第二十七話
今、俺は奈津美さんと共にとある喫茶店に居る、前日に奈津美さんから恋人になってと頼まれたのだが実は恋人のフリをしてもらいたいだけだった。 落胆と安心が半々だったが奈津美さんの話では彼女の幼なじみがしつこく交際を迫ってくるとか、あまりにしつこいので奈津美さんは今付き合ってる恋人がいるからとその幼なじみに言った、そしたらその幼なじみが会わせてくれと言うのでこの状況となった訳だ 『 ゴメンね、貴志くん、こんな事頼んじゃって、貴志くんしか頼める人いなくて・・・。』 『 気にしないでよ、とにかくその幼なじみ君にハッキリと俺が彼氏と言えばいいんだろ、しかしこの頭じゃ変な誤解されるかもしれないな。』 その時、店のドアが開いた、そこには真面目そうな風貌の青年がいた、奈津美さんはその人を見て声を掛ける 『 あの人がそうなの、って年上なの? 』 奈津美さんは黙って頷く、彼は何も言わずに俺たちが座ってるテーブルに来た 『 奈津美、その人がお前と付き合ってるのか。』 随分と高圧的な人だな、俺は取りあえず挨拶だけはしておく 『 初めまして、奈津美さんとお付き合いをさせてもらってる青山貴志と申します。』 『 へえ、そんな頭の割に真面目な言葉遣いなんだ、見た目と大違いだな。』 『 孝介さん、私はこの人と付き合ってるの、だから、孝介さんとはお付き合いできません。』 奈津美さんは毅然とその幼なじみ、孝介さんに言った、しかし彼は動じずに言葉を返す 『 なあ、青山くんだっけ、君はどこの大学に行くつもりなんだい。』 『 僕は大学にはいきません、就職するつもりですけど。』 そう言うと孝介さんは小バカにした感じで言い放つ 『 ははっ、そんなに頭良くないの、それとも家にお金がないってやつか、奈津美、やっぱりお前には僕が相応しいよ、考え直すなら今の内だぞ。』 その言い方にカチンときたが奈津美さんがいきなり目の前にあったコップに入ったコーヒーを孝介さんに投げつけた 『 なっ、何するんだ奈津美、この服高かったんだぞ。』 うろたえる孝介さんに奈津美さんは満面の笑みを浮かべて言った 『 相変わらず学歴でしかその人を見ないんですね、あなたがいつも自慢する医大も父親が行けと言ったから行ってるだけでしょう、私はあなたみたいに人の言った事しかできず、それを自分の力として誇示する人間なんて絶対に好きになれませんわ。』 奈津美さんの言葉に孝介さんは顔を赤くして怒る 『 なっ、何だと、じゃあお前は医大生の僕より大学も行けないこんなヤンキーの方がいいって言うのか、お前はそんなに馬鹿じゃないだろ。』 孝介さんは今にも奈津美さんにつかみかかりそうな勢いだ、ここは俺の出番だ 『 孝介さん、あなたがどう言おうが俺と奈津美さんは付き合ってるんだ、俺の進路がどうだろうとあなたに関係ないよ、これ以上奈津美さんに付きまとうなら俺も容赦しない、いこうか、奈津美さん。』 ちょっと凄む感じで孝介さんに言う、戸惑う彼をそのままにして俺は奈津美さんと共に店を出た、自分たちの支払いだけ済まして。 街中を奈津美さんと歩く、傍目にはカップルに見えるだろ、今日は日曜日だし 『 貴志くん、ごめんなさい、嫌な思いさせちゃったね。』 奈津美さんは謝ってくる 『 いいよ、気にしてないから、それよりあの人、これで諦めてくれるといいけどな。』 『 あらっ、その時は貴志くんが守ってくれるんでしょう。』 嬉しそうに笑う彼女に見惚れてしまってつい言ってしまう 『 ああ、いつでも言ってよ、奈津美さんは必ず俺が守るから。』 奈津美さんは笑顔で頷く、そして彼女から思いもよらない一言を発する 『 それじゃあ、デートに行きましょうか♪ 』 『 えっ、奈津美さん? どうして・・・。』 『 今日の私は貴志くんの彼女なのよ、休みの日に貴志くんは彼女に淋しい思いをさせたいの! 』 それからは奈津美さんに引っ張られる感じでデートを楽しんだ、つい楽しみすぎて夜の7時過ぎまで遊んでしまい帰ったら里奈に問い詰められたのはまた別のお話である。