第二十五話
蒼太の過去話です。
五年前、ある小学校に二人の少年がいた。 1人は160近い身長に美男子といっていい顔の造形を持つ四森 蒼太という少年、あと1人はお世辞でも2枚目とはいえず、身長も低いひ弱な感じの須藤 智 ( すどう さとし ) という少年だった。 二人は特に仲が良くも悪くもなく、蒼太はいつも誰か友人に囲まれる人気者、智はだいたい1人だった。 ある日の体育の授業中、バスケの試合中に智が転んで怪我をした、体育委員の蒼太が智を保健室に運んだのだが智は嫌がる 『 いい、1人で歩けるから、離せよ。』 『 そうはいかないだろ、一応体育委員だから。』 『 いいから離せよ、歩けるって言ってるだろ。』 智は強引に蒼太から離れ一人で保健室に向かった。 蒼太は1人で授業に戻るがその後、智は教室に戻ってこなかった、特に気にもしてなかったがその日の放課後、蒼太は担任から呼び出しを受けた、職員室に行き担任の元に行くと担任から怒られた 『 四森、お前何で須藤を保健室に送って行かなかったんだ、須藤は足を捻挫してたんだぞ。』 『 はあっ、須藤が1人で歩けるって言ったんですよ、そんな捻挫とか知らなかったんですから。』 『 お前、体育委員だろ、須藤が言ったからって簡単に1人で行かせるな、もう少し責任感を持て。』 そう言われた蒼太は職員室を出てからも納得できていなかった、この一件が蒼太の心に闇を灯したのだ。 翌日、学校に来た智に蒼太は詰め寄る 『 須藤、お前捻挫してたのなら何で1人で保健室行ったんだっ、お陰で俺が怒られたんだぞ!! 』 しかし智は特に悪びれる様子もなく言い放つ 『 えっ、そうなの、そりゃ悪いことしたなあ。』 この時の智の軽い態度が当時まだ十歳だった蒼太をいじめという行為へと誘ったのだった。 暴力こそはしなかったが言葉でいじめ続けた、臭い、気持ち悪い、喋るな、といった感じで、しかも文武両道で人気者の蒼太と正反対の智ではクラスメートは皆、蒼太側についた。 担任に気付かれない様に智をいじめだして2ヶ月くらいしたある日、蒼太は智の着ていた服を臭いから脱げと言った、するといきなり智が自分の椅子を振り上げて蒼太を殴る、まわりの悲鳴が聞こえる中、蒼太は意識を失った。 椅子で頭部を強打され頭から血を流した蒼太は病院に運ばれた、しかし病院で蒼太は姉の彩花から衝撃な事を言われた 『 須藤くん、自殺未遂を図ったそうよ。』 蒼太は姉が何を言ってるのか分からなかった、ぼう然とした顔で姉を見る事しか出来なかったのだ。 彩花の話では智は蒼太を殴った後、すぐに教室を出て自分の家に戻り、手首を切った、幸い発見が早く命は取り留めたが蒼太は自分はどうしていいか分からなかった。 その日は検査入院して、次の日、病院を退院した後にすぐ智の家に行ったが門前払いだった。 そして数日後、智は転校していった、だが今度は蒼太がクラス中から相手にされなくなった、小学卒業まで蒼太はクラスの誰とも一言も話す事はなかった。 中学でも蒼太は1人行動が多かった、楽しくない中学生活だったが二年の終わりに転校する事になった、彩花が同級生を大怪我させたのだ、彩花には辛いだろうが蒼太はどこか安心していた、誰も自分の事を知らない所に行けるからだ、そして今に至る・・・。 『 ・・・どうして私にその話をしたの、誰も知らないんでしょう。』 紗恵は怪訝な表情で蒼太に聞く、蒼太は微笑んで 『 懺悔を誰かに聞いてもらいたかったんです、俺のした事が一人の少年を深く傷付けた、俺はどうしたら償う事が出来るのか今もわからないんです。』 『 私だってわからないよ、でもどうしたって過去は変わらない、四森君はずっと償いをさがす人生を生きるの? 青山さんや秋野さんの為にあんな一生懸命だった四森君なら違う答えを見つけれると思うよ。』 紗恵の言葉を蒼太は黙って聞いていた、里奈と夕奈の為に出来る事をしただけと自分で思ってたがそれが答えなのかは分からない 『 決めたわ、四森君、これから二人で答えを見つけましょ、うんっ、決めたんだから。』 いきなり紗恵は宣言した、ここから二人の関係が始まった。
次回から貴志たち三年生がでます、蒼太と紗恵の話はまた今度という事で。