第二十四話
今回も貴志達三年生は出番なしです。
一年二組の前に来た、まだ数人の生徒が居る様だ、この中にあの落書きを書いた者がいるか分からないが一言言わずにはいられなかった、里奈さんと夕奈さんの為、そして、俺みたいな悲劇を繰り返させない為に 『 秋野さんの下駄箱にあんな事を書いたのは誰だ。』 教室のドアを開けるなり俺は言った 『 うん、誰だよ。』 『 書いたって何? 』 教室に居た数人の生徒は冷めた感じで俺を見てる、この中にはいないのか、そう考えてたら茶髪の軽そうな男子が俺に話し掛ける 『 つーかさ、アンタ誰、秋野のダチ、あぁ〜、もしかしてアンタもホモって奴? もったいねーな、イケメンなのにさ。』 その男子と近くにいた二人の友人らしき奴らがニヤニヤと笑う 『 君が書いたのか。』 『 知らねーよ、つーかなんでお前にそんな事言わなきゃなんないんだよ。』 その茶髪男と睨み合ってたら教室に里奈さん達が来た、何故か鈴木さんも居る 『 蒲田君、やっぱりあんたが書いたの!! 謝れっ、夕奈ちゃんに謝れー。』 里奈さんが目に涙を貯めながらその蒲田という男に叫ぶ、すると教室の隅っこにいた女子が静かに言う 『 蒲田君、私、見たんだよ、あなたが秋野さんの下駄箱に何か書いてるのを・・・。』 『 クソがっ・・・。』 蒲田は観念したみたいに吐き捨てる、するといきなり鈴木さんが蒲田に近づき頬にビンタした 『 アンタっ、あんな事書かれたあの娘の気持ち考えてんの!! つまんない事してないで言いたい事があるなら本人にハッキリと言いなさいっ。』 『 何しやがる! 』 蒲田が怒りの表情で鈴木さんに近づく、俺はとっさに蒲田の手首を押さえた 『 女子に何しようとしてるんだ、なんで叩かれたのか考えてみろ、こんな事続けてたら周りに誰も居なくなるぞ、孤独な高校生活を送りたいのかよ、今ならまだ間にあうんだ。』 俺が過去の自分を思い出しながら言うと教室に居た他の生徒達から 『 やっぱりやだよ、こんなの、せっかく一緒のクラスになったのに、こんなの嫌ぁ。』 『 ごめんね、青山さん、秋野さん、今まで声かけてあげられなくて、私もあなた達と仲良くしたい、今更だけど、いいかな? 』 里奈さんも夕奈さんも笑顔でその生徒達に応えていた、あとはこの蒲田だけだ 『 君だって最初からこんな奴じゃないだろ、こんな高校生活を望んでない筈だ、行動さえ間違えなきゃもっと学校は楽しい場所なんだ。』 蒲田は黙って俯いてる、やがて小さい声で呟く 『 ごめんな・・・、秋野さん、青山さん、あんな事書いてしまって、謝っても済まない事だけど、許してください・・・。』 涙声で謝罪する蒲田、そんな彼に夕奈さんが近づき 『 ・・・蒲田くん・・・、これから・・・、よろしくね・・・。』 里奈さんも蒲田に 『 もういいよ、せっかく同じクラスになったんだし、これから三年間楽しくやろうよ。』 蒲田は人目もはばからずに泣き出した、きっともう大丈夫だろう、俺は目立たぬ様に教室を出る、すると鈴木さんがついてきた 『 四森くん、カッコ良かったじゃん、とても同い年とは思えなかったわ。』 『 鈴木さん、俺は友達の為に出来る事をやっただけです、いじめなんてされる側も、する側も深い傷が残るんだから・・・、よかったら、俺の懺悔、聞いてもらえますか。』 鈴木さんは真剣な顔で頷く、俺は彼女に話をしだした、忘れたくても忘れられない過去を・・・。
ちなみに茶髪の蒲田は第二十一話で里奈をカラオケに誘った男です。