第二百三話
今話は美鈴視点です、ちなみに健太は登場しません、主人公も出てきません。
『 えっ、お見合いですか? なんで急に・・・。』
私は昼休みに社長から呼ばれ社長室に入るとそんな事を言われた、今更お見合いとか言われたってもう四十で子持ちの私なんて相手の親御さんもいい顔なんてしないと思うのだけど
『 いやね、私の古くからの知り合いの息子なんだけど、そろそろ真剣に結婚を考えなきゃって話になってね、まだ三十四だけどあの○○銀行の重役だし将来は保証されてるよ、矢島さんにとっても悪い話じゃないと思うんだけどね。』
『 その様な人なら尚更私よりよっぽどふさわしい人がいると思うんですけど、その人だって子持ちの未亡人なんかと結婚しても嬉しくないでしょう。』
社長は善意で言ってくれるのだろうけど何とか穏便に断りたかった、今までいずみと2人でやってきたんだしこの生活が好きだしね
『 会ってもないのにそんなの分からないじゃないか、実は佐野さんに紹介しようかとも考えたんだけど彼女は派手なトコがあって少々慎ましさに欠けるからね・・・それに比べ矢島さんなら良妻賢母なタイプだし紹介した私の顔も立つ、お願いだ、会うだけ会ってくれ、本当に嫌なら断っても構わないから、なっ。』
社長は私に頭を下げる、社長ともあろう人にここまでされて断るのも悪いかしらね、嫌なら断ってもいいとも言ってるしそれなら
『 分かりました、社長。頭を上げて下さい、その話お受けします、先方によろしくお伝え下さい。』
私は了承した、その言葉を聞いた社長はパッと顔を上げては私の手を握りしめ
『 そうか矢島さん、本当にありがとう、また詳しい事が分かったら連絡するから、いやあ、よかったよかった、ハハハ・・・。』
自分の思い通りになったのが嬉しいのか笑い出す、このスーパーで働いてるパートの女性で独身なのが私と佐野さんの2人だけっていうのがこの結果なのね、なんだか面倒な事になったわね、私は心の中でふうっとため息をついた。
『 ・・・という訳で見合いする事になったんだけどね、あ〜も〜、なんで私なんだろうねー。』
パートが終わり帰る準備中、佐野さんに先ほどの見合いの事を話した、別に口止めとかされてないし
『 おいしい話じゃないですかあ! 羨ましいですよ、なんで私にはそんなおいしい・・・いや、素敵な見合い話が来ないんでしょうねー? 私、自分で言うのもアレですけどなかなかに優良物件なんですよ。』
・・・社長が言ってた事は黙ってた方がいいかも、佐野さんも決して悪い人じゃないんだけどね。
家に帰るバスでの道中、停留所から妊婦の人が乗ってきたんだけど夕方のラッシュなせいで座席は満杯、そんな中、真っ先に自分の座ってた座席を譲った大人びた美青年がいた、感心な青年よね、でもその青年、真司君と同じ学校の制服を着てたわね、あれっ? 確かいずみから凄いイケメンな後輩がいるって聞いた事がある様な・・・。
ちょうどその美青年と降りるバス停が同じだった、バスを降りた私は前を歩くその美青年に話しかける
『 ねえ、あなたってもしかして蒼太君かしら? 』
『 えっ・・・あの、あなたは一体・・・。』
いきなり見知らぬ熟女から声をかけられ戸惑う美青年、目の保養になるわね
『 娘からあなたの事は聞いてるわ、イケメンな後輩がいるってね、矢島いずみの母です、いずみがお世話になってます。』
私が自己紹介すると蒼太君は緊張が解けたのか優しい微笑を浮かべ
『 矢島先輩の・・・初めまして、四森蒼太です、僕こそ矢島先輩には大変お世話になってます。』
美青年スマイル全開で挨拶を返す、いずみから話を聞いた時は大げさと思ったけどこうして至近距離で蒼太君を見るといずみの話以上のイケメンと思う、でも蒼太君、どう見てもいずみどころか真司君よりも年上に見えちゃうのよね
『 そうだわ蒼太君、これから何か予定とかあるかしら? よかったらウチで夕食でも食べてかない? いずみや真司君も喜ぶわ。』
さっきの妊婦さんの件で私はすっかり蒼太君を気にいってた、いずみの話だと蒼太君には紗恵さんという恋人がいるけれど蒼太君がいずみや真司君の後輩というのは間違いないし
『 予定はないんですけど・・・いいんですか? 』
『 遠慮しないで、食事は多い方が楽しいからね、それじゃ行きましょ。』
こうして私は蒼太君と歩き出した、この短い時間だけでも美形高校生の隣を独占して歩ける喜びを私は年甲斐もなく噛みしめていた。
第十三話を改訂しました。