第二百一話
作中の季節はまだ1月です、季節感なしです。
『 いいじゃないママ、たまには遊んできたら、私の事とか気にしなくてもいいし、ねっ、真兄。』
『 そうですよ美鈴さん、今日は俺も泊まっていきますからいずみの事は心配いりませんよ、パーッと羽を伸ばしてきて下さい。』
あれから迷った末、今日の夜に行われるという伊藤君の歓迎会に私は出席する事にした、私や香奈子さんは4時に仕事が終わるけど伊藤君達男性社員は6時過ぎまで仕事を続けてる、だからひとまず家に帰りいずみや真司君にこの事を告げた
『 それでママ、その歓迎会は8時からなんだよね、でも明日も仕事なんでしょ? 大丈夫なの? 』
『 歓迎会といっても居酒屋で飲み食いするだけって言ってたからそんな遅い時間にはならないわよ、それにあんまり遅くなるなら先に帰るつもりだし。』
とりあえず顔だけ出せば義理も果たせるしね、それより問題なのは・・・
『 真司君、泊まるのは歓迎するけど私がいないからっていずみとイヤらしい事しちゃダメよ、まだ孫の顔を見るには早いもんね♪ せめていずみが高校卒業するまで待ちなさい。』
真司君にやんわり釘をさしとく、娘と息子同然の2人とはいえ高校生同士のカップルなんだし親のいない二人きりでの夜の家であんな事やこんな事しようとするのはしょうがないのかもね、私もそうだったし・・・
『 ちょっとママっ!! 変な事言わないでよねっ! ちょっと、真兄も何か言ってやってよっ!! 』
『 そ・・・そうっスよ美鈴さん・・・俺がそんな事する訳ないでしょ・・・アハ・・・ハハ・・・。』
真司君・・・目が泳いでるけど、しちゃうつもりだったのかしら? どうして男ってすぐそっち方面の事を考えるのかしらね。
午後8時少し前、歓迎会の行われる居酒屋に入ると既に伊藤君と男女合わせて十人程度の社員がビール片手につまみを食べながら歓談していた、香奈子さんはまだ来てないのかな?
『 あっ、矢島さーん、こっちこっち、もう始めちゃってまーす。』
女性社員が店に入ってきた私に気づき声をかける、ちょっと恥ずかしいな
『 お疲れ様です矢島さん、先に頂いてます。』
伊藤君の横を通ろうとした時、彼が声をかける
『 お疲れ様伊藤君、今日は伊藤君が主役なんだから気にしなくていいわよ、でも明日も仕事なんだから飲みすぎない様にね。』
とは言ったけど彼も三十代、それなりに世間に揉まれてるはずだしそのくらい言うまでもないかもね、伊藤君に限らず年下の男性はどうにも真司君みたいに息子っぽく扱ってしまう
『 大丈夫っすよ矢島さん、これで後は佐野さんだけだな・・・。』
『 お疲れ様ー、あっ、もう始まってたんですね。』
伊藤君とやりとりしてたら香奈子さんがやってきた、香奈子さんは私の隣に座りこれで今日の歓迎会に出席するメンバーが全員揃った、そこで今回の歓迎会の言い出しっぺである今井主任が乾杯の音頭をとる
『 えーっと・・・それでは新たに僕達と一緒に働く事になった伊藤君を歓迎するのと今年一年、怪我や病気もなく健やかに仕事を頑張ろうという意味合いをこめまして・・・皆さん、カンパーイ。』
乾杯の後は皆、飲んだり食べたり話したりとそれぞれに楽しんでる、私も隣の香奈子さんとビールを片手に他愛のない話をする
『 それでね、いずみったらママじゃないんだからって言うのよ〜、失礼しちゃうわよねー♪ 』
『 まあまあ、いずみちゃんも悪気があった訳じゃないでしょうし〜、でも美鈴さんも相当な美人ですよー、私が男だったら絶対放っとかないけどなあ。』
『 そうですよ矢島さん、だから今度俺と2人で遊びに行きましょうよ〜。』
私と香奈子さんの会話に男性社員の1人、末永君が割って入ってくる、この末永君、よく私を遊びに行こうと誘ってくるけどあまり乗り気になれない、何故なら彼は妻子持ちだし
『 私を誘うくらいなら家族を誘いなさい、その方が楽しいと思うわよ。』
『 いいじゃないですか〜、矢島さんもたまには男と遊ぶのも必要ですって、娘にかまうだけが人生じゃないですよー。』
結構酔ってるみたいで正直煩わしい、どうにかしなきゃと思ってたら伊藤君が
『 そうだ末永さん、今日聞いたんですけど末永さんってあの漫画の限定版プラモ持ってるんですよね? 自分あの漫画めっちゃ好きなんですよ、ぜひ今度見せてくれませんか? 』
助け舟を出してくれた、漫画の話を出された末永君は上機嫌になって
『 そうかそうか、んじゃ今度見せてやるよ、ってか伊藤もあの漫画好きだったのか、伊藤はどのキャラが好きなんだよ。』
伊藤君の隣に移動した、ホッとした私に香奈子さんが
『 よかったですね、伊藤君、ちょっとカッコいいじゃないですか、なんか惚れちゃいそうだなー。』
そっと耳打ちしてくる、助けようとしてくれたのかたまたまの偶然だったのかは分からないけど何にしろ伊藤君は困ってる私を助けてくれた、今井主任らと笑いながらビールを飲むそんな伊藤君の横顔を私はつい見ていた・・・。
第九話と第十話を手直ししました。