第百八十六話
『 皆さん、心配おかけました、お陰様ですっかり風邪も良くなりました。』
いずみちゃんが元気よく宣言する、ちなみに場所は俺の家、里奈が今日はすき焼きにするから皆で食べようと招待したのだ
『 安心しました・・・元気そうで・・・。』
『 そうですわね、お母様の手厚い看護や私達の祈りが通じたのですわ。』
家には既に夕奈ちゃんと奈津美さん、そして友成夫妻がいた、彩花は一度家に帰ってから、蒼太と紗恵ちゃんは用事があるらしく少し遅くなるとか
『 やっぱり鍋物は大人数で食べるのが楽しいもんな、くぅ〜、すき焼きなんて久々だぜ、食って食って食いまくるぞ〜。』
『 真兄ったら! 少しは遠慮しなきゃ駄目よ、親しき仲にも礼儀ありなんだから、青山さん、すみません、真兄ったらはしゃいじゃって・・・。』
俺に小さく頭を下げるいずみちゃん、そんなの今更気にしないのに、いずみちゃんの言う事にも一理あるが
『 いいってばいずみちゃん、トモらしく豪快に食ってくれた方がこっちも招待したかいがあるからさ、いずみちゃんもたっぷり栄養とってまた風邪とかひかない様にしないとな。』
『 そうですよいずみさん、こんなにお肉も野菜もたくさんあるんですから遠慮なんていりませんよー、今日はじゃんじゃん食べて体力つけて下さい。』
俺と里奈は遠慮は無用といずみちゃんを諭す、食べ物に関して遠慮なんて友成らしくないしな、つーか友成がいっぱい食べないと女性ばかりなのでせっかくの肉が残ってしまうかもしれない、もちろん俺も食うけど
『 貴志君、里奈さん、やはり私もお手伝い致しますわ、このままジッと座って後は食べるだけなんて私には出来ません。』
『 私も手伝います・・・2人だけじゃ・・・大変でしょ・・・。』
奈津美さんと夕奈ちゃんが手伝いを申し出てくれた、気持ちはありがたいが
『 大丈夫ですから2人共座ってて下さいよ、皆さんはお客さんなんですから、準備はお兄ちゃんと私に任せといて下さい。』
『 里奈の言う通りだよ、準備ったって後は肉と野菜を用意するだけだからもう終わるよ、しかし彩花や蒼太達遅いな、もうそろそろ来てもいい頃なのに。』
そう、まだ四森姉弟と紗恵ちゃんが来てない、もし何かあったのなら連絡とかありそうなんだけどな
『 あっ、誰か来たよ、彩花さん達かな? 』
ちょうどそんな事を思ってたらインターホンが鳴る、里奈が玄関に行くと
『 蒼太君、紗恵ちゃん、いらっしゃい、さあどうぞどうぞ、あれっ、彩花さんは一緒じゃないの? 』
『 姉さんは先に来てたと思ったんだけど・・・俺と紗恵は外せない用事があったから姉さんとは別行動だったんですよ。』
里奈と蒼太の話し声が聞こえる、そして蒼太と紗恵ちゃんが里奈に連れられリビングに入ってきた
『 皆さ〜ん、お待たせしましたー、わぁ〜、お肉も野菜もたくさんありますねー、全部食べきれるかな〜。』
大量の肉を見るなり紗恵ちゃんが目を輝かせる、10月最後の金曜日、寒くなりだすこの時期のすき焼きは食欲を旺盛にさせる
『 とりあえず姉さんに電話してみます、もしかしたら急用が入ったかもしれませんしね。』
蒼太が電話を取り出し彩花にかけてみる、しかし
『 おかしいな、電話にも出ないなんて姉さんらしくない・・・あっ、出た出た、姉さん、何してるんだよ、もうみんな待ってる・・・って、姉さん? 』
なんだ、蒼太の様子がおかしい、彩花に何かあったのか・・・すると蒼太が血相を変えて声を荒げる
『 おいあんた!! 姉さんに何をしたんだ!! いいから姉さんに代われ!!! 』
どういう事だ、電話の相手は彩花じゃないのか? 蒼太の素振りからしてこれは非常事態かもしれない
『 おいっ!!・・・くそ、切りやがった! 姉さん・・・あの野郎!! 』
『 なあ蒼太、彩花に何かあったのか? その様子はただ事じゃないぞ。』
俺が聞くと蒼太は一瞬戸惑ったみたいだがすぐに事情を話してくれた、嫉妬に狂った男が起こした卑劣な犯罪を・・・。