第百八十二話
『 友さんってすごい優しい刑事になるんですね、今の世の中信じられない事件が多いですもんね、里奈もお兄ちゃんと応援しますから頑張ってください。』
友成の夢を聞いた里奈はいたく感激したらしくエールを送る、普段は冗談言ったりおちゃらけてる感のある友成だが根は正義感と男気にあふれた奴だというのは俺達の仲間はみな知ってる
『 香取刑事みたいに優しさだけじゃなく厳しさや冷静さも持った刑事になりたいんだよね真兄は、子供の頃からよく言ってたもん、まっ、心の師だからね。』
『 おいおいいずみ、確かに香取刑事は俺の生涯の憧れだが香取刑事だけじゃない、高杉警部や山さんや桜田、西園寺や風子に河原、それに兵吾君と西崎、安さんや川辺課長、右京さんに特命係の亀山、俺は皆好きだったぜ。』
要するにこいつは水曜夜9時の刑事ファンなんだな、その中でも特にさらい刑事が好きなんだろう
『 そういや真兄、小学の卒業文集にも一番好きなテレビ番組はさらい刑事旅情編って書いてたよね、二番がミニカポリスで三番が小宏ショーだったっけ? 幅が広いというか何というか・・・っていうか小宏って誰なの? 』
『 なにおうっ、あの小宏さんの軽快かつ絶妙なトークのキレを知らんのかあ! だいたい今のコメンテーター達はなあ・・・。』
やっぱり友成は友成だったか・・・大体なんでそんな昔の番組を知ってるんだよ・・・まあいいけど
『 ねえ貴志、ちょっとしたクッキー焼いたんだけど皆で食べない? 』
友成の作り出した意味不明な空気を破るかのように彩花が手に持ってた袋からクッキーを取り出した、可愛らしい一口サイズで星の形やハートの形をしてる
『 俺や紗恵も一緒に手伝ったんですよ、姉さん、青山先輩に美味しいって気に入ってもらえる様に一生懸命でしたよ。』
『 もうっ、蒼太ったら! でもおかげで上手く焼けてるはずよ、ほらっ、みんなも食べてみてよ。』
仲のいい姉弟だな、とにかく蒼太も彩花も元気そうでよかった、蒼太同様に彩花も辛い過去がある、確か当時に付き合ってた彼氏を友達だった女性に奪われたとか・・・だからなのか彩花は基本的には男嫌いなのだ、初めて会った頃の彩花はツンツンばかりしててデレがなかったけど今やすっかりツンデレ予備軍だ
『 彩花さん、このクッキー美味しいですわ、甘さも控えめで食べやすいですわね、是非とも私にも作り方を教えてほしいです。』
『 ありがと奈津美、じゃあ今度一緒に作ろうよ。』
奈津美さんも絶賛だ、確かに食べやすい、皆もパクパクと口に入れていった。
列車から降りた俺達は山を目指して歩く、奈津美さんオススメの紅葉スポットがあるというのでそこで女性陣の作った弁当を食べるのだ、秋の紅葉を見ながら美少女達とお弁当・・・友成じゃないが確かに嬉しいイベントだ、別にいやらしい意味じゃなくて
『 奈津美先輩・・・その公園は・・・あとどのくらいですか・・・。』
『 あと10分くらいで着きますわ、そこは本当に紅葉が綺麗で空気もおいしいんですよ、私も小さな頃からよく両親に連れて行ってもらってたんです。』
両親に連れて行ってもらってたか・・・奈津美さんの両親は一度お会いした事があったけど本当に立派な人達だった、人の外見よりも中身を見る人達で俺みたいな金髪男にでも平等に接してくれる、その分け隔てなき性格は奈津美さんにも確実に継がれている
『 そうなんですねー、それじゃあ皆さん、あと一踏ん張りです〜、張り切っていきましょ〜。』
紗恵ちゃんの無邪気な励ましが山道にこだまする、それを聞いた女性陣の作った弁当を持つ俺と友成と蒼太は顔を見合わせ微笑んだ、思ったよりも楽しいイベントになりそうだな・・・。
彩花の過去については第十四話に載ってます、いずれ修正はしますが本筋の内容は変えませんので。