第百六十七話
こんな時間に投稿します、仕事が昼夜交代になったので、今話は貴志視点です。
『 貴志! もうこれ以上話すことはないわ、とにかく明日には出ていきなさい、もう決まった事なんだから! いいわねっ!! 』
まーだこんな事言ってるよこの人、ここまでくると清々しさすら感じるな
『 しつこいわねあんたも、お兄ちゃんも私も出ていくわけないでしょ、あんた達こそ早く帰りなよ、借金取りに見つからない場所なら他にもあるでしょ。』
里奈も母さんに一歩も譲らない、というか親父の友人だったあの直樹さんがもっとしっかりしてればこんな事態にならなかったろうに、人の、敦士の父親なら父親らしくしてもらいたいな
『 うるさい里奈!! 親に生意気な口聞くなんて十年早いのよ! 大好きな貴志と一緒に出ていけるんだからアンタも幸せでしょう! 2人でどこでも好きな所に行きなさいっ!! 』
『 お母さん・・・もうやめようよ、お父さんと3人でおうちに帰ろう? 僕学校に行ってマサルくんやチカちゃんに会いたいよ。』
この期に及んでもまだ醜くわめく母さんに敦士がしがみつく、直樹さんも
『 もういいんだ静香、僕がもっとしっかりしてればこんな事もしなくて済んだ、貴志くんや里奈さんも傷つける事もなかったんだ・・・だから帰ろう静香、僕達の家に、親子3人で。』
自分達の家に戻る旨の話をしだした、半泣きで母親にすがる息子を見て心動かされたのだろうか?
『 直樹っ!! 今更何言ってるの! あの家に戻ったらまた借金取りが来るじゃない!! だから私達にはこの家が必要なのよ! 』
もうこんな事を言ってるのは母さんだけだ、そんな母さんを浮気相手( というか夫か? )である直樹さんが優しくなだめる
『 静香、この敦士を見てもまだそんな事言えるかい? 君も僕も人の親としてとても恥ずかしく情けない、何故もっと早く気づかなかったんだろうな・・・今日この家に来て哲也の子供の貴志くんと里奈さんを見てやっと気づいた、彼らをこの家から追い出すなんて出来ないとね。』
『 直樹! 哲也の子供だからじゃない、私達を騙して仲を裂いたあの男の子よ!! 憎くないの!? 』
おいおい、この人、自分の子でもあるとは考えないのか? 俺も里奈も今更母親の愛情とか欲しくはないがせめて敦士には俺達みたいな思いはさせないでほしい
『 確かに哲也を恨んだ事もあった、つまらない嘘をつき僕と静香をだましあげくには静香を妊娠させて・・・でも哲也は高校・・・いや、中学の頃から君を想ってた、その想いは本物だ、それに、貴志くんと里奈さんに罪はない、そんなのは君を分かってただろ? だから僕と一緒に十年前、哲也の家から出る時にせめて置き手紙だけでもと言ったんじゃないのか? 』
そういやそんな手紙があったな、どこにいても俺達の幸せを願ってるとかなんとか・・・それを聞いた母さんは目を伏せすすり泣き出した・・・
『 私だって・・・私だって、貴志と里奈を連れて行きたかった・・・憎い男の子である前に私が産んだ子だもの、でも当時の私や直樹に2人を養う事は出来なかった、それでも私は直樹と行きたかった・・・。』
母さんは想い人と我が子をはかりにかけ想い人を選んだ訳だ、母親にあるまじき酷い行為なのは間違いない、友成が知ったら怒るだろうな、しかし母さんも女、親父と結婚したはいいがそれが親父の罠と知ったらそりゃ傷つくよ、でも
『 母さん、直樹さんや敦士と帰るべきだと思う、直樹さんと母さんが本気で頑張る気があるなら借金も返せるんじゃないかな? 親父がした事は俺から謝るよ、親父の息子だからね、母さんに苦しく辛い思いをさせてすまなかった、だから母さん、これからは自分の家族の本当の幸せの為に生きてくれ、俺と里奈の事なら大丈夫だから。』
『 貴志・・・私、私・・・うううっ・・・。』
俺の謝罪を聞くと母さんは泣き崩れた、直樹さんも敦士も母さんに近寄り慰めてる、とりあえず今日はこの3人はこのままにしておき俺は里奈と外に夕食を食べに行く事にした・・・。
やっと次話で静香達の話は完結します。