第百六十話
特に話の進展はありません、あしからず。
『 ねえねえお兄ちゃん、里奈が作ったバタークッキーは美味しいかな? 里奈、お兄ちゃんの為に一生懸命作ったんだよ♪ 』
そう言って俺の右隣にしっかり陣取り自慢の手作りクッキーを食べさせてくれる我が妹は可愛らしかった、そして俺の左隣には
『 お兄さん・・・私の作ったココアとバナナのタルト・・・どうです?・・・私だって・・・お兄さんを喜ばせたくて・・・真剣に作りましたから・・・。』
しおらしい事を言ってくれる夕奈ちゃんがいた、俺は今、美少女2人に囲まれそれぞれが腕を振るって作ってくれたお菓子を食べながら母さんの帰りを待つという極上のひとときを過ごしていた、そして俺と同じく母さんを待つ敦士も2人の作ったお菓子を食べていた、食べ終えると敦士は一言
『 まあまあかな・・・2品とも一応はうまいけどクッキーは少し甘さが強いしタルトは味が濃いよ。』
素直に美味しいと言えないのかこの坊主は! しかし里奈も夕奈ちゃんも敦士に何か言うでもなく
『 そういえばお兄ちゃん、今日は帰りが遅かったけど何してたの? まさか里奈に隠れて奈津美さんか彩花さんとデートとかしてたんじゃないでしょーね! もしそうだったんならお兄ちゃんにはお仕置きしちゃうからねっ! 』
『 里奈・・・お兄さんにお仕置きなら・・・私も手伝うから・・・。』
やけにお仕置きの部分を強調して言う2人の乙女、まあいつもの事だ、俺は2人に今日の真沙美ちゃんへのサッカー指導の事を説明した、すると2人は
『 そーだったんだ、彩花さんとデートしてた訳じゃないんだね、よかったー、だけど女の子がサッカーとかあんまりないよね。』
『 里奈・・・今はサッカーする女子も少しずつ増えてるらしいよ・・・女子サッカー部のある学校だってあるんだから・・・。』
それぞれに思った感想を話してる、そんな中、俺達の話を黙って聞いてた敦士が
『 さっき公園でお兄さん達がサッカー教えてたあの女の子の事? あの子、女の子にしちゃ運動出来る方だよね、男子と授業でサッカーの試合をするみたいだけど勝てるといいね。』
真沙美ちゃんにエールを送る、同い年くらいの真沙美ちゃんには素直なんだな
『 何なのそれ? 君もお兄ちゃん達と居たの、それはいいんだけどあの人に何の用なのかな? まあ私には関係ないけどね。』
里奈は嫌ってる母さんがらみの事なので不快そうに敦士に噛みつく、今のところはまだ里奈の言い方も穏やかだけどいつ悪い方に変化するか・・・いざとなったら俺がなんとかしなきゃな、この2人の兄として
『 ・・・確かにお姉さんには関係ないよ、分かってるじゃないか。』
敦士もなんというか・・・目上の人間には生意気な奴だな、今はまだ小学生だからいいけど大きくなってもその性格が変わらないのならきっと苦労するだろうな
『 お兄さん・・・この子・・・あの叔母さんに用があるんですよね・・・叔母さんの携帯に連絡してこの子が家に来てるって言えば・・・早く帰ってくるんじゃないですか・・・。』
なんと! そんな簡単な事になぜ気づかなかったんだろうか!? さすが夕奈ちゃん、俺は早速母さんの携帯に電話してみた、すると
『 うーん、話し中みたいだな、もう少ししてまた掛けるか、しかし誰と話してるんだろうな・・・。』
『 だいたいどこに行ったんだろうね? あの人、この街に知り合いなんていないのに・・・。』
里奈の疑問ももっともだ、この街に母さんの知り合いはいないはず、敦士も母さんが帰ってこない事に不安そうな表情をしてる
『 敦士、また後で電話してみるから、静香さんも今日中には絶対ここに帰ってくるよ、だから一緒に待とう、なっ。』
敦士を励ましそんなこんなで待つ事一時間、時刻は8時になり夕奈ちゃんも帰っていった、それでもまだ母さんは帰ってこない、俺の携帯にも電話はこない、一体どうなってんだ?
次話で静香と敦士の再会を、そして次々話で直樹を出そうかと・・・。