第百五十三話
暑いです、仕事場は冷房はあるのですが今のご時世、できる限り節電しなければ・・・。
市原くんから風間先輩の事を聞き出した私は言葉がなかった、風間先輩は家の経済力をバックに女の子を口説いては手込めにしてたとか、とんでもない人ね
『 それって本当なの市原くん? だとしたらとことん最低な奴だね!! でもなんで市原くんがそんな事知ってんの? 』
鈴の疑問ももっともだった、そしてさっきの森川さんの事もどうして分かったんだろうか? 気になった私はその辺も聞いてみた
『 風間先輩の事は男子の間では結構有名な噂だったんだ、どこから流れたのかは知らないけど、あくまでも噂だからね、真実じゃないかもしれない、森川さんの事は哲也と聞き込みをしてたら森川さんが橘さんの靴箱の周りをうろついてたってのを聞いたのさ、それで彼女を問い詰めたら白状したって訳。』
『 まあ森川もお父さんをクビにするって言われたら逆らえないよな・・・風間先輩の家は幾つもの子会社を抱える資産家だしな。』
青山くんも呆れたみたいに話す、それにしてもこの2人・・・私の為にそこまでしてくれたんだ、思ってた以上にいい人達なのね
『 あっ! 静香、来たよ、風間先輩が!! 』
鈴の示す先に風間先輩が歩いてる、都合よく1人だった、向こうも私達に気づく
『 ああ、橘さん、どうしたんだい、うん? その人達は一体・・・。』
私は1人じゃなく鈴や市原くん、青山くんと一緒なのだ、風間先輩が不思議に思うのも当然よね
『 風間先輩!! どうして森川さんに静香の靴を切り裂けなんて命令したんですか! しかもお父さんの仕事をタテにして脅すなんて・・・最低ですね!! 』
鈴はいきなり風間先輩に叫ぶ、私が言いたい事はほとんど鈴が言ってくれた、そんな鈴を前にしても風間先輩は悪びれる事なく
『 なんだ・・・森川さんはあっさりバラしたのか、ホント使えない女だな、まあいいや、ここじゃなんだからさ、近くの公園にでも行こうか? 』
なんなのこの人・・・あっさり認めた事もだけど下らない行為に無理やり巻き込んだ森川さんに対してあの言いぐさは何なんだろうか、凄く腹が立ったけど確かに校門では目立ってしまう、私達は風間先輩について行く事にした。
近くの公園に着いた私達、一番最初に話し出したのは青山くんだった
『 なあ、なんで森川にあんな事させたんだよ! あんたの気まぐれで橘や森川がどれだけ傷ついたと思ってんだ!! 悪いと思ってんなら橘に謝れよ! 』
青山くんは熱血ドラマの主人公みたいに話す、まだ中学二年生の青山くんだけど熱血ぶりは大人顔負けね
『 そうか、君達は橘さんの友達なんだね、でも僕を責めるのはお門違いだな、悪いのは僕の告白を断った橘さんなんだから、せっかく僕の彼女になったら学校でそれなりの地位になれるのに・・・。』
『 こぉの野郎っ!! 』
青山くんが風間先輩に殴りかかろうとしたけどそれを止めたのは市原くんだった
『 やめときなよ哲也、こんな人殴っても何にもならない、僕達の役目はこの人が二度と橘さんに関わらないようにする事だろ。』
『 でも直樹、こいつが引き下がるような奴か! 』
青山くんと市原くんが言い合うのを横目に今度は風間先輩が口を開く
『 森川さんに言って橘さんの靴を切り裂かせたのは単なるお遊びさ、僕の告白を断ったのは橘さんだけだったからね、それがどんなに愚かな事か思い知らせてやりたかっただけだよ。』
それだけ? 風間先輩のあまりに低レベルな動機に私は怒る気も失せた、だけど鈴は収まらなかった
『 バッカじゃないの! アンタみたいな男を一時でもいいなと思ってた自分が恥ずかしいわ、お金は持ってても人間としての中身はカラッポなんだね!! 』
鈴から蔑まれても風間先輩は一向に動じない、ある意味いい根性してるなと思った、そしてまた話し始める
『 でも安心していい、もう橘さんに関わる気はない、僕も進路の事を考えなきゃいけないからね、まあウチは他者よりも裕福だからいざとなればどうとでもなるし、話はこれだけだけどもう帰っていいかな? 』
『 おいっ! 帰る前に橘に謝れよ!! 』
立ち去ろうとする風間先輩に青山くんがそう言ってくれたのは嬉しかったけど私は心底どうでもよくなった
『 もういいよ青山くん、風間先輩、約束ですよ、二度と私に話しかけないで下さい、もしまたこんな事したら学校に全部話しますからね、今回の事も。』
風間先輩は何も言わずに去っていった、でも多分もう大丈夫だろう、私は振り返り鈴や市原くん達に
『 これで解決ね、みんなありがとう、よかったら何か食べに行かない? 私がおごるからさ、あっ! あんまり高いのはナシね。』
鈴と青山くんは勢いよく手を挙げた、市原くんはいいのかと聞いてきたけど私は大丈夫と言ったらじゃあ僕もと結局一緒についてきた、こうして私と鈴は市原くんや青山くんと友達関係になった、これが将来、私の人生に大きな影響を及ぼす事にこの時の私は気づくはずもなかった・・・。
次話は静香達の高校時代、出来たら大学時代までいけたらなと考えてます。