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大切な人達  作者: 曹叡
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第十五話

第十五話です。

春休みも半ばが過ぎたある土曜日の朝、俺は奈津美さんと一緒に近所の幼稚園に来ていた、この春に卒園した園児達が最後の思い出作りに行うという演劇の発表会に俺も出る為だ。


何故俺がその演劇に出るかというと奈津美さんから頼まれたからだ、なんでも奈津美さんのお姉さんがその幼稚園に勤めており演劇に参加してくれる大人が欲しいというのである。


小さい幼稚園で園児は20人にも満たず先生も奈津美さんの姉と園長先生を入れても3人しかいない、園児達にいい思い出を作らせてあげたいという奈津美さんの想いに応える為に手伝う、という訳なのだが・・・


『 どうしてお前がここにいるんだっ!? 』


『 細かい事は気にすんなアオ、俺って実は子供好きなんだぞ、一緒に手伝ってやるからさ。』


幼稚園には友成夫婦・・・もとい、友成といずみちゃんも来ていたのだ、俺が前日の電話でこの演劇の事を話したのだがまさかここまで来るとは・・・


『 すいません青山さん、真兄も絶対行くって聞かなくて・・・。』


『 いやっ、いずみちゃんが謝る事はないよ、まあ手伝ってくれるって言ってんだし・・・いいかな? 奈津美さん。』


奈津美さんに聞いてみる、ちなみにこの春休みから彼女の事は名前で呼び始めた、彼女自身がそう呼んでほしいと言ってきたのだ、いきなりで驚いたが断る理由もないので俺は了承した


『 もちろんよろしいですわ貴志君、人数は多いほうが楽しくなりますもの、本当にありがとうございます、真司君、いずみさん。』


奈津美さんも俺や友成の事は名前で呼ぶ様になった、これも彼女がそう呼びたいんだそうだ


『 私は裏方でお手伝いをしますね、皆さん頑張って下さい。』


いずみちゃんが俺達を励ます、主役は園児達ですからと進んで裏方に回った彼女、ホント友成にはもったいない娘だよ、友成もそれを知ってるからいいけど、やがて俺達4人は準備の為に幼稚園内に入った。





『 本当に今日は有難うございます、子供たちの為にわざわざ来てもらって、子供達も喜んでました。』


奈津美さんの姉、香澄(かすみ) さんから今日のお礼を言われたが友成は


『 そんな、頭をあげて下さいお姉さん! 美女のお願いを聞くのは男として当然の義務ですよ!! 』


いずみちゃんを前に堂々と言い放つ、コイツ美女なら誰にでもそう言うのか・・・いつも通りいずみちゃんに耳を掴まれ耳元で


『 真兄、仏の顔も三度までって言葉知ってる♪ 今回は真兄お仕置き百選、DXバージョンを考えてるんだけどどうしよっか? 』


『 いずみ様! 今日も相変わらずお美しいですよっ!! 世のどんな女性でもいずみ様の女神級の美貌には到底及びません、ワタシウソツカナイアルヨ! 』・・・全く、奈津美さんだけでなく香澄さんにも笑われてるぞ、ちなみに香澄さんも奈津美さんの姉だけあって美しいとしか言いようのない美人、確かにこんな美人の頼み事ならなんでも聞いてあげたくなるよな。


さて、俺たちのやる劇は新・桃太郎伝説という桃太郎といつものお供たちに金太郎や浦島太郎、かぐや姫などが加わって一緒に悪い鬼を退治するお話だそうだ、何でも発案した園長先生が昔やったテレビゲームを参考に考えたらしい。


配役は主人公の桃太郎達は当然園児達、俺と奈津美さんは桃太郎を拾う祖父母役、友成は鬼役、いずみちゃんはナレーションをするそうだ、やがて園児達も来て開演時間が迫る


『 みんな、今日はこの幼稚園のみんなでやる最後の演劇よ、今日という日を忘れない日にする為に楽しんでやりましょう。』


香澄さんが園児達を励ます、奈津美さんはお姉さんに憧れて保育士を目指してるんだったな、今の香澄さんを見てたら奈津美さんが憧れるというのも納得だな。


とうとう開演の時間が来た、客席には既に園児の親御さん達が我が子の晴れ舞台を見ようと目を輝かせてる、その光景を見たらなんだか緊張してきた。


劇が始まると俺と奈津美さんはメイクやカツラで老人に扮し舞台に出る


『 おじいさんや、私はおじいさんと一緒に暮らせて本当に幸せですじゃ♪ そうじゃそうじゃ、お耳を掃除しないとね、ささ、私の膝に頭を乗せてくださいなおじいさん。』


・・・そのくだりはいるのだろうか? まあ奈津美さんに膝枕してもらったのでよしとしとこう、これを学校の男子どもに見られたらその嫉妬を一身に受けるけど、その後は劇も滞りなく進みいよいよ桃太郎達が鬼と闘うシーンとなった


『 さあっ、桃太郎達は鬼ヶ島にたどり着きました、そしてついに怖ーい鬼が桃太郎達を待ち構えて・・・いたのです・・・。』


ナレーションを務めるいずみちゃんが声を詰まらせる、舞台に出てきた鬼役の友成は奇怪なヘルメットをかぶりむき出しになった胸には北斗七星を模した落書きが書かれていた、そんな友成は園児達に向け一言


『 おいお前、俺の名をいってみろ。』


・・・確か友成は鬼の役だよな? いや、深く考えるのはよそう、頭が痛くなる


『 知らないよー。』


『 変なカッコだねー。』


『 おめぇら、この胸の傷を見ても俺が誰だか分からねーのか!! 』


『 分からないよー、だったらお名前教えてよ。』


『 だったら教えてやる、俺の名は北○神拳の伝承者、拳四郎様だあっ!! 』


『 拳四郎だって、変な名前ー、お前なんかボクらがやっつけてやる! 』


『 お前らごときがこの北○神拳の伝承者、拳四郎様に勝てるとでも思ってるのかあ! 兄より優れた弟など存在しねえっ!! それを思い知らせてやる! 』園児達は友成に立ち向かっていく、すると友成は両手を体の前でクロスさせ


『 見せてやろう、銀河の星が砕ける様を・・・ギャラク○アンエクスプロージョン!! 』


園児達を瞬く間になぎ倒す、もちろんかなり手加減をしてるのは見れば分かるが


『 くそー、この鬼変なカッコのクセに強いぞ! 』


『 ふふふ、お前らが俺に勝たないと俺はどんどん村のみんなに意地悪してやるぞ、それが嫌なら俺をやっつけるんだな、お前らは村のみんなの為に俺をやっつけに来たんだろう? 』


『 そうだよ!! ボク達は村のみんなと約束したんだ、絶対にお前をやっつけてくるからって! だからボク達は絶対に負けちゃダメなんだっ!! 』


なんかよくあるバトル物漫画っぽくなってるな、確かに劇中に桃太郎達が立ち寄った村で村人達が鬼に苦しめられ桃太郎が絶対に鬼をやっつけてやるって約束したシーンはあったけど


『 さ〜て、鬼・・・じゃなかった、拳四郎はとっても強いです、桃太郎達はこのとっても強い拳四郎をやっつける事が出来るのでしょうか!? 』


いずみちゃんのナレーションにも力が入る、友成に倒された園児達もまた友成に立ち向かう、だけど


『 その程度では俺には勝てないぞ!! 喰らえっ! 不死鳥の羽ばたき!! 鳳○天翔ーーっ!! 』


また園児達はまとめて倒される、だけど園児達は諦めない、まあ諦めたら劇が成り立たないけどな


『 みんな、絶対にあきらめたらダメだよ、村のみんなと約束したんだから、くそー、今度こそっ! 』


桃太郎役の園児が再度立ち上がる、そして1人で友成に立ち向かっていく


『 桃太郎、1人じゃダメだよっ、みんなで力を合わせなきゃ! 』


他の園児も立ち上がり友成に向かっていく、園児達もかなり気合いが入ってる、すると今度は


『 なっ、なんだこいつらの小宇宙はっ!! この俺をはるかに上回るとはっ! うわあああーーっ!! 』


どう見てもワザとだが友成は倒れた、すると桃太郎役の園児が友成に


『 ねえ拳四郎、もう悪い事はしないって約束する? 村のみんなに謝ってこれからは村のみんなと仲良く出来る? ねえ? 』


『 ふふふ・・・負けた、完全に俺の負けだ、分かった桃太郎、約束しよう、もう悪い事はしないしこれからは村のみんなと仲良くしていこう。』


『 ホントだね、じゃあ許してあげるよ、さあて、みんな帰ろうか! 』


『 こうして桃太郎達は見事拳四郎をこらしめ村に帰りました、そして桃太郎はおじいさんやおばあさんといつまでも元気に、そして幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたしー♪ 』


いずみちゃんのナレーションで劇は幕を閉じた、親御さん達も拍手してくれてる、舞台裏に戻ると待ってた香澄さんが俺達に頭を下げ


『 皆さん、本当に今日はありがとうございました、子供達もきっといい思い出になったと思います。』


感謝の言葉を伝える、すると友成が


『 いいや、感謝するのは俺達ですよ、みんなホントにいい子達です、やがてあの子達が成長して大きくなっても今日みたいに困難に立ち向かう強い心、そして他人を思いやる優しい心があればきっとあの子達の未来は明るいですよ。』


さっきまでの馬鹿さがウソみたいに真面目に返す、そんな友成の言葉を聞いたいずみちゃんは


『 やっぱ真兄は真兄だねっ♪ あの子達の為にワザとあんなキャラになってたんだね、大丈夫、私はちゃんと分かってるから。』


独特な解釈をして1人で満足している、結局この2人はなんだかんだで似合いのカップルなんだな。





幼稚園からの帰り道、俺の隣には奈津美さんがいる


『 貴志君、今日は楽しかったですわね、お姉さんや園長先生、それに子供達も喜んでましたわ、本当に貴志君に頼んで正解でした、もちろん真司君やいずみさんにもですけどね。』


『 そう言ってもらえると俺も来てよかったよ、奈津美さん、これからも何か困った事があったら何でも言ってよ、俺に出来る事ならぜひ手伝うから。』


『 貴志君・・・そのお言葉ありがたくお受けしますわ、そのかわり貴志君も何かあったらいつでも私に申しつけ下さい、私、貴志君の為でしたら犬馬の労も厭いませんわ。』


・・・可愛すぎるじゃねーかこんちくしょー! 奈津美さんの笑顔の為ならどんな事でもやってみせる、俺は心の中で1人、奈津美さんに約束していた。

アホみたいな話ですいません。

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