第百四十七話
貴志達の母、静香視点です。
『 もう少し待ってよ! 必ずあの2人は追い出すから、そしたらあの家でまた3人で暮らしましょう。』
私は直樹にそう告げる、直樹は私の中学時代からの想い人、中学から高校までの六年間、ずっと一緒だった、しかし大学時代に色々あり大学卒業後、直樹の親友だった哲也と結婚した、しかしそれでも直樹の事を忘れる事は出来なかった・・・そして私は哲也や貴志達を捨ててでも直樹と一緒に生きる事を選んだ
『 また電話するから、あっ! 敦士は元気にしてるの? 』
敦士は直樹との子供、貴志達とは種違いの兄弟、借金取りから逃げる為には私といるよりも直樹といた方が安全だろうという事で今は直樹と2人で直樹の知人の所に居る、でもやっぱり親子3人で暮らしたい、この街なら借金取りも来ないと思うし直樹も心機一転やり直せるはず、私の大切な家族は今は直樹と敦士なのだ、貴志と里奈は十年前に捨てたのだから・・・
『 そう・・・元気ならよかった、じゃあ直樹も元気でね、近いうちに必ず貴志達はお義父さんの家にでも追いやるから、そしたらまた連絡するわ。』
そう言って携帯を切ると私を見つめる視線に気づいた、そこにいた女性は確か貴志のクラスメートで高野奈津美さんという人だった
『 こんにちは、ここを通ったら偶然貴女をお見かけしたものですから、ここで何をしておられたのでしょうか? 貴志くんはもう家に帰られましたが。』
『 えっ・・・ちょっと友達に電話をね・・・それより貴志、もう帰ってるんだ、じゃあ私もそろそろ帰らなきゃね。』
彼女の質問に適当な返事を返し私はこの場を離れようとする、しかし彼女はまだ話を続けてくる
『 ・・・ところで、先ほど誰かを追い出すとか話されてたみたいですが・・・誰を追い出すつもりなのでしょうか・・・。』
さっきの直樹との会話を聞かれてたのだろうか? うまく誤魔化さないと
『 ああ、今私の家に妹夫婦が居座ってるの、迷惑だから早く追い出したいんだけど実際行動にするのもなかなか難しいのよ、あんなでも一応妹だからね。』
『 そうだったのですか、それは大変ですね、でもその後3人で暮らすと話されてたようですけどどういう事なんでしょうか・・・よろしければ教えて頂きたいのですが。』
意外としつこい女ね、もっと大人しい子かと思ってたのに、それにどうも私を見る目に敵意が込められてるというか・・・
『 あなたにそこまで言わなきゃならない理由なんてないでしょう、第一あなたは青山家とは関係ないのだから余計な詮索はしないでほしいわね。』
少し強めに言うも高野さんは怯む様子はなかった
『 関係ないとかそんな事ありませんわ、そう遠くない将来、私は青山奈津美になるのですから、一生貴志くんと共に生きていくと心に誓ったのですから。』
高野さんは高らかに宣言した、何なのこの女・・・よく分からないけど貴志と結婚するつもりなの? 別に貴志が誰と結婚しようがどうでもいいけど高野さんレベルの女性なら貴志よりいい男が選び放題だと思う、そんな子にここまで言わせる程に貴志っていい男なのかしら・・・
『 へえ〜、もうそんな事決めてるんだ、そう言えば女友達も多いみたいだし、貴志って結構モテるのかしら? あんまりそんな感じに見えないから意外だわ、でもなんか怖そうじゃないあの子? 』
『 そんな事ありませんわ、確かに貴志くんは見た目は怖そうに見えますけど中身は誰よりも優しく自分以外の人の為に一生懸命になれる素晴らしい人です、貴女は母親なのにそんな事も分からないのですか? 』
『 そんなの分かる訳ないわよ! 十年前に捨てた息子の事を全て知ってる母親がどこに居るってのよ!? だいたい・・・あっ!! 』
しまった、確か里奈に言われて私は高野さん達には貴志達の母親ではなく叔母という事になってるんだった、高野さんの挑発につい口が滑ってしまった、語るに落ちたって訳ね
『 やはり貴女は貴志くん達の母親だったのですね、電話の内容からもしやと思ったのですが・・・まさか貴志くん達をあの家から追い出そうとするなんてとんでもない母親です貴女は!! こんな女が母親だなんて貴志くんや里奈さんが可哀相で仕方ありません! 』
高野さんは先ほどまでとは態度を一変させた、私を見る瞳は隠す事なく敵意剥き出しだ、そんなに貴志達を捨てた私が憎いのかしら? 何も分からない小娘の分際で・・・。
仕事も私生活もめちゃ忙しいです・・・最低でも4日に一回は更新したいです。