第百四十話
今話から青山兄妹の母親のお話です、最後の方にしか出ませんが・・・。
本格的に秋の気配漂う10月某日、俺と里奈は奈津美さんの家に呼ばれ夕食をご馳走させてもらう事になってた、最近の奈津美さんは夕奈ちゃんみたいによくウチに来ては里奈と共に夕食を作ってくれる事が多くなってた、しばしば夕奈ちゃんも加わって3人で作る事もある、彩花はというと受験勉強の影響でごくたまにしか来れずこの話をしたらかなり悔しがってた
『 ねえお兄ちゃん、奈津美さん今日は何を作ってくれるのかな? 』
『 電話じゃ確かしゃぶしゃぶとか言ってたな、しかし奈津美さんもお父さんに会わせたいとか、なんか結婚の挨拶に行くみたいで緊張してきたよ・・・。』
実は奈津美さんの家に行くのはこれが初めてじゃない、以前に何度か友成達と遊びに行った事があるが父親に会うのが今回が初めてだ
『 お兄ちゃんったらぁ、いきなり話進展させすぎだよ! けどもしそんな話だったら・・・里奈、全力で妨害しちゃうからね♪ 』
『 お願いだから奈津美さんの両親の前で変な事口走るなよっ! もし何か言おうものなら明日から昼の弁当は夕奈ちゃんに作ってもらうからな、それが嫌なら大人しくしとくんだな。』
こうして弁当の事を持ち出せば里奈は俺に従わざるをえなくなる、あの手作り弁当対決以来、里奈の愛情表現は更にエスカレートしてきて一週間に一回だけ一緒のベッドで寝る時とか何の冗談か下着が透けて見えるネグリジェ姿に着替え俺に抱きついたり耳元では
『 愛してるよぉ・・・お兄ちゃあん・・・。』
『 好きなコトしていいんだよ・・・里奈の体は・・・ふふっ、お兄ちゃんだけのモノだからねっ♪ 』
悩ましくこんな台詞を言うもんだからこっちは恥ずかしくてしゃあない、まあこんな里奈でも無理やり既成事実を作ろうとしてこないのでそれだけが救いだ
『 でも普通に考えて奈津美さんのお父さんがそんな話するとは思えないもんね、よーし、今日はいっぱい食べるぞー、ダイエットがなんだー、里奈は食べたい時に食べるのだーっ。』
右手を高々と挙げてそう宣言する里奈はとても高校生には見えないよな・・・良く言えば天真爛漫、悪く言えばアホの子ってトコか、胸もあまり成長の気配がないし実は里奈って同世代の男子にはあまりモテないのかもな、ロリ好きには需要がありそうだが・・・。
『 お待ちいたしておりましたわ、貴志くん、里奈さん、さあ、どうぞ上がって下さいな、ちょうど準備もできた所ですのよ。』
奈津美さんの家に着くと姉の香澄さん、そして御両親も揃ってて既にしゃぶしゃぶの用意も出来ていた
『 初めまして、君が青山君か、奈津美からいつも話は聞いてるよ、奈津美が世話になってる様だね。』
柔らかい笑顔でそう話す奈津美さんのお父さんは奈津美さん同様人を見た目で判断する様な事はなかった、この親にしてこの娘ありってか、お母さんも
『 少、中学の時は友達もあまりいなくて物静かな娘だった奈津美が今じゃ毎日学校での事を楽しく話すんですよ、青山君や友成君、四森さん達のお陰なんですね、本当に感謝いたします。』
そう言って深く頭を下げられては俺も慌てる
『 いやっ! お母さん! 頭を上げて下さいよ、自分の方が奈津美さんには本当に良くしてもらってるんですから、お礼を言うのは自分の方です。』
この様子を見てた香澄さんが笑いながら俺達に一言
『 もうっ、貴志くんもお母さんもいいから早く食べましょ、お肉が無くなっちゃっても知らないよ? 』
ふとテーブルを見たら里奈がパクパク食べてた、いくら遠慮しなくていいからって言われてもそりゃ食いすぎってモンだろ・・・。
――――
『 へぇ〜、青山君って三国志とか好きなんだ、奇遇だね、実は僕もなんだよ、誰が好きなんだい? 』
『 軍師系ばかりですけど田豊とか徐庶とか法正なんか好きですね。』
共通の好みを知りお父さんとの会話も盛り上がる、その中に何故か奈津美さんや里奈も参入してきた
『 私は曹叡や陸抗、夏候覇とかに興味がありますわね。』
『 里奈は陳宮や郭嘉、呂蒙あたりがタイプだなあ、特に郭嘉がお気に入りなんです〜。』
奈津美さんはお父さんの影響だろうが里奈は俺の持ってた三国志小説を俺の部屋で勝手に読んでたからだ、その際に健全な男子高校生ならほぼ100%持ってるであろう類の本まで見つけ
『 お兄ちゃんにはこんな本は必要ありませーん。』
その里奈の一声でご丁寧にゴミとして捨てられたというのは笑い話だ
――――
『 皆さん、今日は本当にご馳走様でした。』
『 私、あんな美味しいお肉食べたの初めてです、ありがとうございました。』
帰りに際して俺と里奈は奈津美さんの家族に頭を下げる、するとお父さんは
『 青山君、里奈さん、そんな堅苦しいのはいいから、奈津美の事、これからもよろしく頼むよ、よかったらまたウチにも来なさい、いつでも歓迎するよ。』
ありがたい言葉をかけてくれた、お母さんも香澄さんも同じ気持ちなのはその笑顔を見れば分かる、本当に温かい家族だ、俺達の両親とはえらい違いだな
『 はい、それじゃあ失礼します。』
俺と里奈は奈津美さんの家を後にした、帰り道に他愛のない話をしてウチに差しかかる頃、ウチの前に1人の女性が居た
『 こんな時間に誰だろ・・・新聞の集金かな? 』
とりあえず声をかけようと近づいたらその女性が俺達に気づいた、振り返ったその女性は俺達を見るとつぶやく様に言った
『 あんたってもしかして・・・貴志なの?・・・それじゃああんたが・・・里奈なんだ・・・。』
『 あの〜、いったいどちら様でしょうか・・・。』
『 分からないのもしょうがないか、10年以上も経ってるしね・・・私は・・・あんた達のお母さんだよ・・・2人共大きくなったね・・・。』
はい!? 何を今更出てきてんだ? 俺には意味が分からなかった・・・。
七十六話の後書きにも書きましたが貴志や真司の好みは自分の反映です、あまり気にしないで下さい。