第百三十九話
明日から三連休なので(?)いつもより長いです。
今日はいずみと共に真沙美ちゃんを連れて近所のショッピングモールに来ていた、今日ここで人気アニメのキャラクターのショーがあるのでそのアニメのファンである真沙美ちゃんにおねだりされてきた訳だ
『 ほらほらー、真司兄ちゃ〜ん、いずみお姉ちゃ〜ん、早く行かないとショーが始まっちゃうよ〜。』
相変わらず真沙美ちゃんは元気いっぱいだ、両親と離れて暮らしてる寂しさなんて微塵も感じさせない
『 真沙美ちゃ〜ん、そんなに慌てなくても時間には間に合うから大丈夫よー、ふふふっ、ホント無邪気な子だよねー、真兄♪ 』
『 そーだな、あんな笑顔見せられちゃなあ・・・やっぱ子供の笑顔は癒されるよ、俺達もあんな子供が欲しいよな、いずみ。』
『 なっ!!・・・真兄ったらあ、いきなり何言い出すのよー、真兄のバカバカバカーーーっ!! 』
俺の背中をポカポカ叩くいずみ、しかしその表情は終始ニヤニヤしっぱなしだった、分かりやすい娘だな。
アニメキャラクターのショーも終わり真沙美ちゃんも大満足だったみたいだ、どこかで昼飯を食べようかとその辺を3人でぶらぶらしてたら1人でボンヤリと立ち尽くしてる5、6歳くらいの少女を見かけた
『 ねえキミ、1人なのかい? お父さんやお母さんは一緒じゃないの。』
無視できずにその子に話しかける、すると泣きそうな声で返事が返ってきた
『 トイレに行って帰ってきたらお母さんが居なくなってたの・・・。』
『 ねえねえ、携帯電話とか持ってないのかな? 』
いずみが努めて明るい笑顔でその女の子に聞くがどうやら携帯を持ってない様だ、10分くらいその場で一緒に待ってたが親と思わしき人が来る気配はなかった、こうなったら迷子預かり所に連れて行くか。
迷子の預かり所に少女を連れて行き係員に説明する、少女の話じゃ俺達と会う前から30分以上1人で待ってた様だ、親は何をしてるんだろうか? 30分以上もこんな小さな子を1人にするなんて感心できないな
『 ああ、君たちはもういいよ、親御さんもそろそろ来るだろうしね。』
預かり所に来てから10分くらいして係員がそう言ってくる、少女とお話していた真沙美ちゃんに帰る旨を言おうとしたらドアが開き派手な格好の女の人が預かり所に入ってきた
『 あっ! 居た居た、も〜、戻ってきたら居なくなってるんだから焦ったじゃなーい、心配させるんじゃないわよこの子は! 』
・・・なんだこの態度は、結構カチンときたが黙っとこう、いずみや真沙美ちゃんもいるしな
『 あなたが母親ですか、今までどこに居たんですか? この子もう一時間近く待ってたんですよ。』
係員が聞くと少女の母親から出た答えはおよそ母親とは思えないものだった
『 それがさ〜、この子がトイレに行ってる間に偶然元カレと会っちゃってねー、そんで一緒に喫茶店に行ってついつい話し込んじゃった訳よー、1時間くらいしてついこの子の事忘れてたのに気づいて元の場所に戻ったらこの子居なくなってたじゃない、だから多分ここに居るかな〜と思って来てみたら案の定だったって訳よ。』
なんで自分の子供を1時間も気づかないでいられるんだ、そう思ったら一言言わずにはいられなかった
『 失礼ですがそれはあんまりなんじゃないですか、もしこの子に万が一の事があったらどうするんですか? 親ならもう少し責任を持った行動をするべきだと思いますけど。』
俺がそう言うとその母親はキッと俺を睨みつけイラついた口調で言い返してきた
『 ハア、誰よアンタ、ワケ分かんない奴から偉そうに言われたくないんだけど! つーかなんでここに居るのよ! 』
『 この人達は親切にこの子をここに連れてきてくれたんですよ、ちゃんとお礼を言って・・・。』
係員がどうにかとりなそうとするも少女の母親は更に不機嫌になった
『 何? 人の子を勝手にここに連れてきたの、アンタみたいなのが誘拐犯になったりするのよね、ほら由樹、帰るわよ。』
誘拐犯呼ばわりかよ・・・まあ気にしないのだがいずみが黙ってなかった
『 何ですかその言いぐさは!! 子供をほったらかしにする様な人に言われたくありません! 今言った事取り消して下さいっ!! 』
いずみの目は本気だ、気持ちは嬉しいが真沙美ちゃんや由樹ちゃんが脅えてしまってる、俺はいずみに落ち着くよう諭した
『 もういいよいずみ、ありがと、真沙美ちゃん、そろそろお昼ご飯食べに行こうか、好きなの食べさせてやるからさ。』
渋々引き下がるいずみと真沙美ちゃんを連れ3人で預かり所から出ようとする、すると由樹ちゃんが俺達に
『 お兄ちゃんお姉ちゃん・・・ありがとう。』
小さい声ながらもハッキリとそう言ってくれた、いい子だ・・・由樹ちゃんはきっと他人に優しく出来る子に育つ、そう確信した俺は由樹ちゃんに笑顔を向け預かり所から出た。
――――
ファミレスでお昼を取る事になり3人でそれぞれ好きなメニューを頼む、真沙美ちゃんは嬉しそうに
『 ボクチーズハンバーグにするね♪ 真司兄ちゃんは何頼むのー。』
『 俺はミートスパゲティに焼き肉丼だな・・・いずみは何にする? 』
『 私はサラダとポテトフライにするよ、でも真兄っていっぱい食べる割にはまったく太らないわよねー、羨ましいなあ。』
いずみはため息ついて俺を見る、あまり考えてないが俺ってそーゆー体質なんだろうな、まあそれなりに体も動かしてるし。
頼んだメニューを食べながら真沙美ちゃんは今日のキャラクターショーを楽しく話す、いずみも俺も楽しく聞いていた、こーゆーのって何かいいな、幸せいっぱいな家族って感じで
『 ねえ真兄、いつか聞いてみたかったんだけどどうして刑事になりたいと思ったの? 真兄ならスポーツ推薦の大学とか簡単に狙えると思うんだけど・・・。』
急にいずみがそんな事を聞いてくる、そういやいずみに詳しく話した事はないな、真沙美ちゃんもいるけど話してやるか
『 スポーツには本気で打ち込んでる訳じゃないからな、刑事になりたいと思ったのは昔親父と見た再放送ドラマの影響さ、香取刑事みたいな刑事になるのが俺の目標なんだよ。』
『 真司兄ちゃん刑事になるんだ、カッコいいねー、ボクも刑事になるー。』
真沙美ちゃんは無邪気に話す、女刑事も相当に大変だぞ、俺は話を続ける
『 でももう一つ理由もあるんだ、ニュースとかで子供が虐待されたり罪無き子供が理不尽に巻き込まれたりする事件とか見てさ・・・どうして子供にそんな事ができるんだよって思うんだ、子供は未来を担う希望だってのに・・・。』
『 真兄・・・。』
『 だからそんな子供達の安全と笑顔を守れる様な刑事になりたいなとも思うんだ、俺1人の力なんてちっぽけだけどそれでも・・・俺が頑張って誰かを守れたり助ける事ができたら本望だなって・・・まあそんなトコだ、可笑しいだろ。』
ずいぶん照れくさい話だがすべて正直な気持ちだ、いずみも優しい笑顔で微笑み俺を応援してくれる
『 あははっ、やっぱり真兄はそうじゃなきゃ♪ 頑張ってね真兄、私もそんな真兄をずーーっと傍で支えてあげるからね。』
いずみの笑顔を見てたら急に恥ずかしさがこみ上げてきた、俺はつい焦りながら
『 あっ・・・あくまで俺の目標は香取刑事だからな、毎年5月14日には一分間の黙とうも忘れてないし! あとアオ達には言うなよ! こんなのアオ達に知られた日には・・・。』
『 知られたらなんだって、トーモく〜ん。』
不意に聞き慣れた男の声が聞こえてくる、まさか・・・振り返ると青山と何故か奈津美さんもいた
『 格好いいじゃねーかトモ、俺も応援するよ。』
『 私も応援しますわ、真司くんならきっとその香取刑事って人みたいな・・・いや、その上を目指せると思います、頑張って下さいね、うふふっ。』
今のすべて聞かれてたのか・・・いやっ、それよりも
『 なんでアオがここにいるんだ、それに奈津美さんまで・・・里奈ちゃんは知ってるのか? 』
『 今日は奈津美さんが晩飯を作ってくれるんだよ、当然里奈も知ってるし、晩飯用の食材を買いに来たのさ、それでここで昼飯を食べてたらお前の声が聞こえてきたからちょっと聞かせてもらったのさ、ところでその子は? 』
青山が真沙美ちゃんを見てると真沙美ちゃんは青山の金髪を気に入ったのか笑いながら俺に話す
『 真司兄ちゃーん、誰この黄色頭のお兄ちゃん? 真司兄ちゃんの友達? ちょっとカッコいいね。』
『 あらまあ、可愛らしいのに油断できませんわね、私は高野奈津美です、あなたのお名前はなんていうのですか。』
奈津美さんが丁寧に自己紹介すると何を思ったか真沙美ちゃんはとんでもない自己紹介をしだした
『 ボクは佐久間真沙美、8歳ですー、将来は刑事になって真司兄ちゃんのお嫁さんになるんだー♪ 』
『 なっ!? 真沙美ちゃん! いきなり何言い出すのっ! そんなの駄目なんだからねっ!! 』
真沙美ちゃんの仰天発言にいずみはテンパってる、女子高生が小学生相手にテンパるなよ・・・
『 そうなのかー、真沙美ちゃんは真司兄ちゃんのお嫁さんになりたいのかー、いやー、羨ましいじゃないかトモくん♪ 頑張って幸せにしてやれよー。』
そう言う青山の顔は笑い出す寸前だった、よりによって青山にこんな弱みを握られるとは・・・この友成真司一生の不覚だ!
『 ちょっとっ!! 真兄からも何とか言ってよ! 本当に真沙美ちゃんと結婚する気なのっ!! 』
『 いやっ、そんなのあり得ないし・・・。』
『 えーーーっ、ボク絶対に真司兄ちゃんと結婚するんだもーん、あと十年したら結婚しよーね♪ 』
なんか気まずい・・・背に腹は代えられず青山達に助けを求めようとしたら
『 じゃあなトモ、また学校でなー、お前が生きてたらな・・・。』
『 それじゃあ御機嫌よう、真司くん、いずみさん、真沙美さん、デートの邪魔をしてすみませんでしたわ、うふふっ♪ 』
2人は足早に去っていた、逃げやがったな、あの真性シスコン大王が!!
『 真兄っ! まだ話は終わってないんだからね!! 』
『 真司兄ちゃーん、ボク今度はお洋服見に行きたいな♪ 真司兄ちゃんとお揃いの服買うんだからー。』
その後は2人の機嫌を取りながら買い物に付き合わされるはゲーセンで人形取らされたりプリクラを撮らされるはとムチャクチャ疲れた、小学生といえどなかなか侮れないな、つーか真沙美ちゃんも本気じゃないよな? 3人で仲良く帰りながらも俺は青山から張られたであろうロリコンのレッテルをどうやって晴らそうかと真剣(?)に考えていた・・・。
次話から青山兄妹の実母のお話になります、少し暗い話になるかと・・・。